ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。   作:夢泉

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4話:毎朝必ず起こしに来てくれる幼馴染、リアルでは存在しない。

 

 

★★★

 

 

 “ゲーム”とやらは初めて触れたが、成程、人間は相変わらず興味深いものを考える。

 最初はヒゲのオジサンを車に乗せて走らせることの何が面白いのかと思ったが、やってみると中々奥が深い。

 特に、骨の亀が気に入った。これで星空貫く虹の道を爆走する爽快感は素晴らしい。

 ……それと。

 

「貴様、レクシィイイイイイイ!!!」

「油断大敵じゃぞ、兄上!」

 

 首位で浮かれていた兄上を、空飛ぶ青い甲羅で爆発四散させるのが最高に楽しい。これは癖になる。

 ふむ。これは中々良い娯楽を見つけた。今は兄上の観察で十分に足りているが、人間の一生は短い。いずれ、そう遠くない内に必ず別れの時は来る。

 この男が天に召された後の暇つぶし候補の1つとしておこう。

 そんなことを考えながら夜遅くまで遊び、いつのまにか眠っていた。

 そして、朝になってみると――

 

「さぁ、一緒に朝食と弁当を作るぞ! 共にメシウマ正妻系ヒロインを目指そうではないか!」

 

 兄上が意味不明な事を言い始めた。

 

「なぜじゃ。なぜ、ワシが料理なぞせねばならんのじゃ」

「昔っから言うだろ。胃袋を掴んだ奴が勝者だって」

 

 ……? 何を当たり前のことを?

 内臓を鷲掴みにすれば勝利は確定だろう。腹を穿って胃袋を引きずり出せば、流石の星群少女も無事では済まない。

 しかし、それが料理を作る事と何の関係が?

 

「他にも、戦の前の腹ごしらえ。腹が減っては戦は出来ぬ……」

「戦? ……戦があるのか?」

「……? 何を当たり前のことを。これからは毎日が戦争みたいなモンだろ。少なくとも、そういう心持でいなきゃ敗北は確定だろうが」

 

 ……ほう。確かに、北天の情勢は一触即発。風雲急を告げるという言葉が相応しい有様。

 いつ何時、どんな死闘が始まるかも分からない。それ故、常在戦場の心構えでいろ、と。そういうことか。流石はこのワシの兄、分かっているではないか。

 

「全く、しっかりしてくれよ。これから始まるのは、誰が選ばれるかって仁義なき修羅場の日々なんだからな」

 

 “選ばれる”というのは……勝利の女神に、ということか。

 そして、その為にも万全の準備を整えよ、と。成程、筋が通っている。

 しかし――

 

「兄上はワシを勝たせたいのか? 既に勝たせたい者がいるのではないのか?」

「おいおい、誰を勝たせるとか野暮すぎるって。今の時点で入れ込んでたら面白くも何ともないだろ。俺は全員の味方で、最後に輝くのが誰かを見届けたいだけさ」

 

 なるほど、中々に上手い言葉を選ぶ。最終的な勝者を、最も輝く存在と例えるとはな。ワシら星群少女にとって、これ以上ないほど相応しい言葉ではないか。

 しかし……全員の味方、か。

 もしや、偽十字 来栖は個人の勢力? 或いは、まさかワシのような戦闘狂がバックにいるのか?

 ――どちらにせよ、その価値観は実にワシ好み。

 誰が勝つと分かった出来レースほど退屈なモノもない。最後の最後まで勝敗の分からぬ戦い……正しく死闘とは斯く在るべきだ。気に入った。

 

「相分かったのじゃ。ならば兄上の言う通りにしよう。して、兄上は料理が達者なのか?」

「いや全く。基本的にインスタント生活だし」

「……なんじゃと?」

 

 

★★★

 

 

 足が重い。

 何度も何度も通った来栖の家へ向かう道。それが今日はいつもと違って見える。

 朝のスッキリした空気を吸っても、ちっとも気分が明るくならない。それは決して寝不足だけが原因じゃなくて、これから為そうとしている事が重く重く心を縛っているからだ。

 右手に持った鍵を――来栖の家の合鍵を見る。

 昔。ボクの家に入り浸っていた来栖に、極が合鍵を渡した。その時に交換だと来栖が差し出してきたカギだ。

 来栖曰く、「俺がいない時も勝手に入って良いぞ。我が家と思って寛げ」とのこと。極もだが、来栖も大概だ。そう容易く合鍵を預けちゃ駄目だろうに。

 ただ、この鍵には随分と世話になった。来栖は食生活が壊滅的に破綻していて、放っておくとインスタントしか食べない。だから、しょっちゅうボクがご飯を作りに行っている。

 ……でも。今日の来栖の答え次第では、この鍵ともお別れになるかもしれない。

 

「……着いちゃった」

 

 来栖の家は歩いて5分程度。いくら重い足取りであろうと、そう時間がかかる所ではない。

 

「すぅー………はー………っよし!」

 

 深く深呼吸を1度。頬を叩いて覚悟を決めた。

 そのまま、鍵穴に鍵を差し込もうとして――

 

「この塩“少々”って何じゃ! どれくらいじゃ!」

「1つまみなら1つまみって書けば良いんだし……多分、10粒くらいじゃないか?」

 

 ――え? 中から、来栖と……女の子の声?

 

「ならば“適量”とは一体どれくらいなのじゃ!」

「うーん? ……多分だけど、お好みと同じ意味では?」

 

 あれ? これって昨日戦ったレクシィさんの声じゃない?

 聴こえてくる会話内容から察するに……2人で料理してる?

 一体全体どういうこと?

 

「成程じゃな! ならば、どばーっと行くのじゃ!」

「おう行ったれ!行ったれ!」

 

 ――マズイ。

 こんな朝から男女が一つ屋根の下とか、なんで一緒に料理してるのとか、ボクが入っちゃ駄目なのではとか。そういう疑問とか躊躇は一瞬で吹き飛んだ。

 この典型的な料理下手の会話の先に待つ、約束された惨状を回避しなければならない。そんな使命感が全てに勝った。

 

「その料理、ちょぉおおおおおっと待ったああああああ!!!!」

 

 結論だけ述べるならば。

 食材が無駄になる事は回避できた。

 

 

 

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