ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。   作:夢泉

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5話:どんな大義名分があろうとも、犯罪行為(覗き)を正当化してはいけない。

 

 

 偽十字 来栖を問い詰める。彼の目的および勢力を明らかとする。

 その為に来栖サマの家に行った星サマは、そこで昨日戦った『竜骨座(レクシィさん)』と――彼女と来栖サマが共に料理をする場面に遭遇。

 謎の状況ながら、とりあえず大惨事になる直前だった食材を間一髪でレスキューし。その後、星サマが教えながら3人で料理。一緒に朝食を食べて、作ったお弁当を持って登校して来たとのこと。

 なお、その過程でレクシィさんは来栖サマの「腹違いの妹」と名乗ったらしいのです。

 数千年も生きる星群少女が「妹」。100%嘘であることは明白であるのに、来栖サマは平然と受け入れていた。

 そんな、理解不能のイレギュラーだらけな状況で、星サマは遂に来栖サマを問い詰める事は出来ず。結局、今までと同じように“何となく”“流されるように”“なあなあ”で済ませてしまった。そういうことのようでした。

 てう達は、その顛末を星サマから聞いていました。この星雲高校の部室棟4階、『天文部』の部室である部屋で。

 

「ふざけんじゃねぇよ」

 

 その話を聞いて最初に言葉を発したのは麻琴サマ。

 ただ端的に不満を述べる彼女は、苦虫を噛み潰したような表情をしています。

 最後まで反対していた麻琴サマだからこそ、この顛末には思う所があるのかもしれません。

 どうせ有耶無耶のまま済ませてしまうならば、来栖サマを……友人を疑う必要なんて無かったのではないか。そのように考えているのかもしれないです。

 

「…………ごめん」

 

 そして。星サマ自身、来栖サマを疑うという所に思う所があったのでしょう。一切の弁明もなく、麻琴サマの批判を受け止めています。

 なんだか、嫌な感じです。

 てう達の……長く一緒に戦ってきた仲間たちの絆に亀裂が入り始めている。そんな気がします。

 ……そこまで考えて、ふと思う。

 かつて、その“絆”や“友情”を利用してまで罠に嵌めて――星サマ達を抹殺しようとしていた自分が、こんなことを考えるようになるなんて、と。

 

 

★★★

 

 

 そもそも、自分は正規の星群少女ではないのです。88星座の『こぎつね座』の星群少女――その座を一時的に借りているだけの紛い物。

 「狐咲てう」が宿す力の名は『テウメッサ』。星座(こぎつね)ではなく、怪物(ばけぎつね)

 人の世に災いを為すべく生み出された存在。人為的に作られた、星群少女モドキ。遊園地で暴れていた男性と根っこは一緒。違いがあるとすれば、肉体に流し込まれたAEへ適応できたか否か、それだけ。

 そう。謎に包まれた組織『Typhon(テューポーン)』が生み出した生体兵器――それが自分です。

 自分は組織の計画通りに星サマたちを殺そうとして、無様にも敗北。暴走した怪物の力に飲み込まれ、黒い泥と化す運命でした。

 それを、死にゆく寸前で救われたのです。来栖サマの助言を受けた、星サマ達の機転によって。

 以来、「数少ない貴重な戦力」兼「謎に包まれた組織の内情を知る情報源」として生かされています。

 自分は、“狐咲てう”は今、「友達」と共に笑って泣いて日々を生きているのです。

 他ならぬ、彼女たちのおかげで。

 だから――

 

 

★★★

 

 

 贖罪、なんて思わないですけれど。

 それでも。

 

「麻琴サマ、麻琴サマの怒りは正しい…です。でも、結果的に星サマの行動も正しかった。てうはそう思う…です」

 

 それでも、今は。てうの恩人たちの為に言葉を紡ごう。

 この恩人達の……友達の仲を取り持とう。命令ではない己の意思で、今の自分は動くのです。

 

「てうテメェ、それは一体どういう意味だ?」

「え、えっと……そ、そのですね……えっと、その場にはレクシィさんが居たわけ、です。だから、つまり、その……」

「あぁ?」

「ひぃ……」

 

 ……ぐすん。駄目でした。

 やっぱり、麻琴サマは怖いです。

 彼女が可愛い物好きの、誰より女の子らしい内面の人だとは知っています。

 知っていますが、それはそれとして、やっぱり目つきとか言葉とか……極道の家で培われた外面の怖さは本物なのです。狐にはちょっと刺激が強すぎるのです。

 

「麻琴、脅かしちゃ、駄目。てうが、怯えてる」

「…………ちっ。すまん、悪かった。……で?」

「ひぇっ」

「こら、麻琴。また威圧した」

「はぁ? 今のドコが威圧してんだよ、普通に会話してんだろうが」

「麻琴の普通は、普通じゃない。空気を、読んで」

 

 170㎝の長身と、桃色に染めたストレートの長髪、切れ長の瞳。そんな容姿の麻琴さんは、ただ立っているだけで威圧感が凄まじい。

 そんな方が怒りオーラ全開で話せば、それはもう威圧兵器なのです。

 ……多分、なのですけれど。

 最近、どうも麻琴サマは異性として来栖サマを意識している様なのです。

 だからこそ余計に彼女は不機嫌になっている。想い人を裏切り者と疑わねばならない状況に憤怒しているのです。

 

「まぁ、でも。麻琴のそういうところ、私は、大好きだけど」

「このっ! テメッ、淫子! どさくさ紛れに変なトコ触ってんじゃねぇ! テメェこそ空気を読みやがれ!」

 

 ……ありがとうございます、韻子サマ。

 いつも彼女が、こうやって場の空気を調整してくれているのです。……方法は彼女の趣味全開、ですが。

 それでも。方法はともかく、彼女が調停役として自然に振る舞ってくれているからこそ、このチームは保っているのでしょう。

 荒っぽくて不良みたいな見た目の織姫(麻琴)と、マイペースで優等生な見た目の彦星(韻子)。正反対でチグハグな二人は、しかし、それ故にパズルのピースの如く上手く嵌る。

 内心で韻子サマへ感謝しつつ、てうも心を落ち着けていく。

 

「今レクシィさんと明確に敵対してしまうのは避けるべき、です。彼女が来栖サマの家に、妹として……家族として居る。いつでも傍に控えている。これは一種の警告だと思う、です」

 

 そう。これは恐らく、これ以上“踏み込むな”“詮索するな”という警告。

 裏を返せば、手出しすれば容赦しないというメッセージ。全力を以て叩き潰すという宣言でもあるのです。

 そう考えれば多くの辻褄が合う。

 南天と来栖サマの繋がりが明確になり、こちらが動き出すタイミングだったことも。それも「腹違いの妹」などという、騙す気ゼロの建前を掲げた杜撰な計画であることも。

 

「そっか。現状、彼女は中立。見逃して、()()()()()。そして。私たち5人、束になっても、彼女には――勝てない。そういうことね?」

 

 良かった。てうの拙い言葉選びで伝わるかは不安でしたけれど。

 韻子サマは自分の言わんとすることを完全に理解してくれたようです。

 流石は、星雲高校一の秀才。神童と呼ばれる頭脳の持ち主。

 

「確かに。彼女の……レクシィの行動は、釘を刺す為だと、そう考えれば納得も、しやすい」

「おい、どういうことだよ韻子。勝手に納得してないで、オレにも分かりやすく説明してくれ」

「要するに、『此処はウチらの島』『来栖はウチの構成員』、手ぇ出したら、分かるよな? ってこと」

「……成程な。ドンパチする覚悟がねぇならスッこんでろってことかよ。腹立たしいが、納得だ」

 

 麻琴サマは相変わらず納得の仕方が怖いです。ヤクザ丸出しじゃないですか……。

 

「……すまなかった、星、てう。オレが暴走した。今回は完全にオレが悪ぃ」

「違うよ、麻琴ちゃん! 今回は誰が悪いとかじゃなくて……!」

「そうです! そうです! だから頭を上げて欲しいです!」

 

 命の恩人の一人である麻琴サマ。そんな方に頭を下げさせるとか、申し訳なさ過ぎて逃げ出したくなるので止めて欲しいのです。

 ……それはそれとして。

 仮に今回の話で悪い人がいるとしたら、それは思わせぶりな行動を続ける来栖サマではないでしょうか? と、てうは訝しむのです。

 

「……今、調査結果が届きましたわ。『偽十字 レクシィ』の戸籍は正規の手続きを経ています」

 

 すると。貨月サマが通知音の鳴ったスマホを見て、言葉を発し始める。

 「時間」を何より大事に考える彼女は、いつだって議論へ率先して参加します。そんな彼女が、今回はずっと静観を続けているので不思議には思っていたのですが。まさか、情報の裏取りを行っていたとは。

 ……この短時間で調べ上げるあたり、やっぱり金の力は恐ろしいです。てうは麻琴サマとは別の意味で貨月サマが怖いです。

 

「じゃあ、極星機関が」

「間違いないですわね、韻子さん。あの戦闘の後、あの場に残って機関の者と交渉した結果ですわ」

「つまり、これは機関も黙認している。そういうことだね、貨月ちゃん?」

「えぇ。そうなりますわね、星さん」

 

 その情報だけで韻子サマと星サマは完全に理解したようですが……。

 正直、てうと麻琴サマは置いてけぼりです。

 ……えっと。つまり?

 自分たちの後ろ盾でもある極星機関。それが裏で手をまわした結果であり、ならば直ぐに危険な状況に陥るとは考えにくい。そういうことでしょうか?

 ふぅ……。頭脳明晰な3人の思考について行くのは大変なのです。

 

「つまり、どういうことだ?」

「ともかく、偽十字さんとはこれまで通りで構わないという事ですわ」

「特に、麻琴は何も、考えなくて良い。疑うなりは、私たちが担当する」

「……そうか! 分かったぜ!」

 

 こうして。貨月サマと韻子サマが麻琴サマを丸め込み、一先ずの議論(非日常)は終了。

 そのまま、それぞれが1時限の授業(  日常  )へと向かって行った。

 

 

★★★

 

 

 ――その様子を覗き見る、不届き者が居るとも知らずに。

 

 

☆☆☆

 

 

『あの女は誰なんだよ! どういう関係だよ!』

『知らないってば!』

『でも今朝は一緒に料理をして、朝食も食べて来たのですよね?』

『男女が、一つ屋根の下、不潔』

『まるで夫婦ですわね』

『それは来栖の妹だからで来栖も一緒だったよ!』

『家族、公認』

『違うって!』

 ――って感じか?」

 

 俺の双眼鏡の先に映るは、天文部の部室で何らかの言い争いをする5人組。

 俺なりの声真似でアテレコしてみたが、なかなかにクオリティの高い仕上がりな気がする。今度アイツらに披露してみようかな。

 

「いやー、良い感じに修羅場ってるようで重畳重畳」

 

 ここは半年前に見つけた俺の聖域。

 この校舎裏に生えた樹の、一際太い枝の上。生い茂る葉に身を隠しながら、天文部の部室を覗き見る事が可能な絶好の場所。

 難点を上げるとすれば。校舎から離れているせいで場合によっては1時限に遅刻してしまう事くらいだが。まぁ、構うまい。遅刻の10や100、修羅場を観察することに比べれば何てことはない。

 

「まぁ、声が聞けないのも難点の1つではあるが……」

 

 こちらは大して重要な問題では無い。

 会話内容も、先ほどのアテレコで概ね正しいだろう。この修羅場マイスターである俺に間違いはないのだ。

 一度は盗聴器でも仕掛けようかと思ったこともある。が、市販の盗聴器程度は時金のマネーパワーで呆気なく見つかりそうだし、そうなってしまえば警戒されて修羅場鑑賞が難しくなる。

 ならば、この形式が最も持続可能性がある修羅場鑑賞方法。SDGsの世だからね。限りある資源(修羅場)は大切に楽しまないと。

 ……おや?

 星たちが解散するらしい。なるほど、既にこんな時間。至福の時は一先ず終わりらしい。

 そろそろ1時限が始まる。俺も急がねば。

 そう思って、木から飛び降りようとした。その瞬間――

 

「見つけタ。アイツをヤれば、あの子は……」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 







序章1話の前にキャラクター紹介を2つ設置しました。
登場人物の事を更に詳しく知りたい場合にのみ、ご利用ください。
(※読まなくても、後々本編で触れる内容ばかりです)
また、残りの2人の紹介は明日投稿します。

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