ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。   作:夢泉

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7話:人類全てを愛する博愛主義者になりたければ、あらゆる性癖を搭載した変態になるしかない。

 

 

☆☆☆

 

 

 かつて研究所から脱走した()()()を抹殺する。

 それがワタシに与えられた仕事。ソレさえ達成すれば、あの子は救われる。治療を受けられる。

 あの子が救われれるのなら自分はどうなっても構わない。他の誰がどうなっても構わない。

 だから、ワタシはここに居る。ターゲットの……「狐咲てう」を監視し、その隙を伺うために。

 だが。

 

「ナ、なんダ、おまエ…! どこかラ…!?」

「よっと」

 

 突如として、謎の男が樹の上から飛び降りてきたのだ。

 不覚だった。完全に背後を取られた。

 この身体は既に殆どが()と化している。

 声がカタコトになっているのは泥で喉がグチャグチャだから。そして実は、自慢の鼻も使い物にならなくなっていて――これが災いしてしまった。

 

「おいおい、動揺し過ぎだぜ、御同輩?」

 

 そんなことを言いながら、男はニヤニヤと笑う。“誰かを消す”と宣った口を楽し気に歪ませている。

 一目で分かる。まともな存在ではない。この世の不条理を煮詰めたような研究所にさえ、こんな雰囲気の男はいなかった。

 

「ははっ、さてはアンタ初心者だな。いけねぇよ、そんなド素人丸出しじゃあ」

 

 “ド素人”。確かに、男の言う通りだ。

 ワタシはずっと研究所にいて、今日が初めてで最後の任務。

 どこまでいっても使い捨ての駒であり、大した訓練が施されているわけではないのだ。

 隠密、変装、咄嗟の嘘でまかせ……全て素人に毛が生えた程度でしかない。

 対して、この男はどうだ。これほどまでに堂々として、まるで常日頃から偽りの中で生きてきたかのようでは無いか。

 ……いや、事実そうなのだろう。

 いつ何時も気を休めることなく仮面をかぶり続けて来た……そんな人間でなければ、これ程の境地には至れまい。

 この男は全てが偽りで出来ている。生まれた時の名前など誰も知らない程に、嘘を重ねて重ねて生きているに違いない。

 

「アナタの指摘は正しイ。コレがワタシの最初の任務ダ」

「何? 初めてだと? ……ったくよ。それじゃあ見捨てるのも後味悪ぃな」

 

 何より、これだけは忘れてはならない。

 彼が筋金入りの“プロ”で、ワタシが筋金入りの“素人”であるからこそ、現在の会話は成立している。

 彼はワタシ如き小物を始末しようとはせず、ワタシは無謀にも歯向かおうとは考えないから。

 もしも、ワタシが劣化版のパチモノとはいえ、星群少女モドキの力を有している……そのことを知られたらマズイ。きっとワタシはこの男に殺されてしまうだろう。

 そうなれば任務は失敗。あの子も治療をしてもらえずに死ぬ。それだけは絶対に避けなければならない。

 ――だから今は、素直に会話に応じよう。何も知らない“ド素人”で通そう。

 

「全く、こんな奴を送り込むたぁ、一体どこの組織だ。困るんだよ、足を引っ張られるとさ」

 

 やはり間違いない。この男は何らかの組織または国のエージェント。

 星群少女の力を軍事利用したいと考える者は多い。アストロラーベ・フィールドを展開して別位相へと移動すれば、核兵器すら無視できる存在なのだから当然だ。

 ただし、人間を遥かに超えた存在である星群少女は、下等な人間如きに力を貸すことはなく。それ故に、ずっと人間と星群少女の世界は別たれてきた。2つの世界は交わることなく、相互に不干渉を貫いて並立してきたのだ。

 だが、北天で10年続く内戦、及び、それに伴って誕生した人間の星群少女……この2つが均衡を崩してしまった。まともな統制を失った北天に、扱いやすい人間の星群少女がいる……そんな状況を黙って見過ごすバカはいない。

 この現状を受けて送り込まれた刺客の1人が、この男。高校の制服が似合うくらい若く見えるのも変装だろう。

 ……或いは、幼少期から特殊な訓練を施された少年兵の類かもしれないが、その違いは些細なもの。今のワタシにはどちらでも大差ない。

 

「……む? その視線、この格好が気になるのか? 俺からしちゃあ、アンタの格好の方が気になるがね」

 

 すると、制服をジロジロと見ていた視線を勘違いしたのだろう。男はワタシの恰好を……黒一色のパーカーを指差し、使い道の無いガラクタに向けるような呆れた眼を向けた。

 

「この稼業なら変装なんて基本のキ。だのに、アンタの恰好はどうだい。こんな真昼間から黒一色。不審者丸出し、どうぞ怪しんでくださいって言ってるようなモンじゃねぇか」

 

 ……そういうものか。

 流石はプロの視点。ワタシの恰好は悪目立ちし過ぎるし、対して男はどこからどう見ても一般学生にしか見えない。とても参考になる。

 ……ただ、これはどうしようもないのだ。

 ワタシはこの一着しか持っていないし、何よりフードの下の素顔を見られる訳にはいかない。

 何故ならワタシの顔は――

 

「特に駄目なのがコレだな。まさに怪しさの塊。取っちまえよ、こんなフード」

「……っ!」

 

 だが、パーカーは無情にも男によって払いのけられて。

 そして――

 

「オマエさん、その顔……」

「見ないでっ!!」

 

 ――ワタシは叫び、男を突き飛ばして逃げた。

 ただ一目散に逃げだした。

 

 

★★★

 

 

 見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。見られた。

 見られてしまった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

☆☆☆

 

 

 突き飛ばさて地面に尻もちを付いた体勢で、既に姿の見えなくなった少女の……あの黒髪と赤い瞳の少女のことを考える。

 否。考える等という表現では生温い。

 俺の内心は叫んでいた。()()()()()吠え立てていた。

 

 ――そう。

 

 スカーフェイス属性きたあああああああああああ!!!!

 

 と――。

 

 合格だ! 合格だよ、名も知らぬ少女!

 おめでとう! 今日をもって君はモブからヒロインに昇格した!

 最近の俺はなんて幸運なんだろうか!? 2日続けてニューヒロインを発見できるとはな!

 傷のある顔を恥じらう少女。容姿にコンプレックスを抱えた少女。間違いなく辛い過去を抱えた少女。

 ……完璧だ。最高すぎる。最上級のヒロインの原石じゃないか。

 正直、マイシスターが霞む程のダークホース。超級レアの逸材である。

 あの少女の傷付いた心を心優しきイケメン……星が時間をかけて癒やしていくのだ。シリアスな場面を挟みながらも、ゆっくりと日常が彼女の心を温めていく。聳え立つ心の壁が壊れていく――あぁ、やはり素晴らしい。

 起き上がるまでの間に少女は居なくなってしまっていたが……。

 まぁ、関係ない。俺の執念を舐めるな。俺は絶対に彼女をスカウトする。修羅場要因として、ハーレムメンバーとしてキャスティングする。そう決めた。

 となれば善は急げ。

 ……ふむ。授業開始まで後3分。流石に遅刻は確定だが、電話1本するくらいの余裕はある。

 ポケットから相棒(ガラケー)を取り出し、電話帳に記された1つの連絡先を選ぶ。

 コール音が鳴れば、目当ての人物は直ぐに出た。

 流石は「時は金なり」の体現者。時間を無駄にせずに済む。

 

『――何か御用でしょうか、偽十字さん?』

「時金、頼みが1つある」

 

 

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