ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。 作:夢泉
ちょっとホラー(無果汁)かも?
夏だし良いかな。
★★★
うーむ。
「暇じゃな」
ワシは機関の奴らを脅して、キュクノスらと同じ高校の1年生の身分を手に入れた。
が。流石に昨日の今日では通うことは出来ないらしい。制服も用意できていない有り様なのだから当然ではあるが。
そんなわけで、今日は兄上がキュクノスと一緒に登校していくのを見送り、あとは家でゴロゴロとゲームをしていたのだが。
「暇じゃー暇じゃー暇なのじゃー」
確かにゲームは面白い。が、独りきりでは面白さも半減する。
兄上を攻撃したり、その逆に兄上に攻撃されたり……それが愉快だったのだ。あの面白さを知ってしまったあとでは、一人でピコピコやっていても盛り上がりに欠ける。
なので。
「もはや漁るしかないのじゃ」
レッツ家宅捜索。
恥ずかしいモノやら何やら、兄上の全てを白日の下に晒してやるとしよう。
名探偵ダイヤモンド・レクシィ始動――。
★★★
「むむむ。ベッドの下には何も無いのじゃ」
あてが外れた。てっきり欲望の捌け口でも隠してあるかと思ったのだが。
そういえば、今朝もくっついて寝るワシに……この絶世の美少女に触れようともしなかったな。
暫く狸寝入りで観察しておったが、何とも紳士的な振る舞いだった。
……さては兄上は不能なのだろうか?
まぁ、ワシは見目が幼すぎて、
暇を紛らわす娯楽の1つとして、そうした行為にも興味はあるのだが。如何せん、プレミアが付き過ぎた感がある。
3000年も売れ残った……もとい、3000年も守った故、そんじょそこらの男に捧げるのはプライドが許さないのだ。
……おっと。思考が逸れた。今は捜索だったな。
「むぅ。しかし、何とも奇妙な部屋じゃな」
ベッドの下だけでなく、この部屋そのものに物品が無さ過ぎる。
机と椅子、ベッドと布団、小さな洋服ダンス……それくらいしかない。あとは確か……パソコンといったか? それくらい。
「む?」
布団やらが詰まった押し入れの奥を探っていると、1つの箱が出てきた。
段ボール製の箱で、縦横高さ30cm程度の立方体。側面にはデカデカと『く』の文字……違う。ぐるりと他の側面に『る』『す』『の』の文字が書かれている。繋げれば『くるすの』……“来栖のモノ”という意味なのだろう。
つまり、間違いなく兄上のモノ。まるで隠すように奥の奥にあったのが実に怪しい。
さてさて、中身は……?
「……書物?」
出てきたのは、たくさんの書物。
大きさは比較的小さく、精々10cm×15cm程度だろうか。全て大した厚さではない。
それがギッシリと隙間なく詰まっている。
兄上は好き好んで勉学へ励むタイプには見えなかったが……。
「なんじゃコレ」
開いてみると、どの本も
時間による劣化……
一体何百、何千回読めばこうなるのか……皆目見当もつかない程の劣化具合である。
あちこちページは破れているし、無数の書き込みで元の文章もほとんど読めない有り様だ。
そして、その書き込みの文字が何とも酷い。尋常ではなく汚くて、何を書いているのか全く分からない。
下手糞な絵らしき落書きも無数にある。幼い頃の兄上が書き込んだのだろうか?
「ま、読めない物を読もうとしても無駄じゃな。次に行くとするのじゃ」
気にはなるが、考えて分かる類の物では無いだろう。直接兄上に聞いた方が手っ取り早い。
そう考えて、兄上の部屋の捜索を終了。
その後、家中を隈なく物色したのだが……
「なんじゃ、この
この家を見ていると、何かが引っ掛かる。在るべき物が存在しないような、そんな違和感を。
なんだ? 一体何が……?
む。
むむ。
むむむむむむむむ、ぐぅぅぅぅぅぅぅ。
「……腹が減ったのじゃ」
とりあえず、朝つくった弁当を食べてから考えるとしよう。
★★★
「さて、お待ちかねのシンキングタイムじゃ!」
いやー、しかし美味い弁当じゃったな。
全部素晴らしかったが、何より“タコさんウインナー”とやらが特に良かった。
パリッとした外側と柔らかな中身、その楽しい食感の違いもさることながら、噛めば溢れ出す肉汁が実にジューシー。まさに至高の一品。
それに、見た目がスキュラやらクラーケンに似てるのも良い。憎き奴らを一方的に噛み殺している気分に浸れる。
……おっと。また思考が逸れた。今は家の違和感を解明する時。
物が少なすぎるのは家中で共通。これも不思議ではあるが、こればかりは“そういうもの”と納得するしかないだろう。無駄な物を置かないのが兄上の方針なのかもしれんし、或いは単純に貧乏なだけかもしれない。
だが、先程から付き纏う違和感は異なる。決して安易に無視して良い類のソレではない。
これは明確な欠落。この家には、あるはずの“ナニカ”が存在しない。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そうか。
「
そう。この家には『鏡』と『写真』が何処にもない。虚像を映し出す物が無い。
風呂場にも洗面所にも鏡が無かった。想い出を残す写真の一枚すら見当たらなかった。
そう気づいて見れば様々な事に気付く。
例えば、テレビゲームをしたソファも、弁当を食べた食卓も、兄上の机も……それら全てが窓ガラスから不自然に距離を取って配置されている。
……まるで自分の姿が何かに映るのを恐れるかのように。
「なんじゃ? まさか兄上はゴルゴンの類じゃったのか?」
否、普通に考えてソレは無いだろう。あれは唯の人間に過ぎない。
しかし、鏡が無いのは揺るがぬ事実。何かしら大きな秘密が隠されているのは間違いなかろう。
流石は我が兄上。実にワシを飽きさせない男だ。ますます気に入ったぞ。
「さて、あとは兄上を問い詰めて答え合わせをすればよかろう。問題があるとすれば――」
目の前に広がる惨状。
物色に夢中になり過ぎて、家の中がグチャグチャである。
これはマズい。怒られて追い出されたら大変だ。さっさと片付けて――
「む? この音は?」
――呼び鈴の音。来客らしい。
そこで思い出す。
郵便物が来たらハンコを押して受け取っておいてくれ、と。そんなことを兄上は言っていた。
ふっふっふ。その程度のこと、このレクシィ様にかかれば朝飯前。
完ぺきに遂行して褒めてもらうとしよう。
★★★
「おや、これは意外で懐かしい顔が出てきたのさ! 覚えてるかい!? 愚生は“へびつかい座”の――んぎゃああああああ!!」
ドアを開けたら、ほぼ全裸の変態がいた……ので。
とりあえず、その右目にハンコを押しつけておいた。
多分、兄上の言いつけは守れたと思う。
一番のホラーは玄関開けて立ってる全裸白衣の女。
答え合わせは次回にでも。