ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。   作:夢泉

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【警報】
シリアス(?)かも。温度差注意。




13話:おちゃらけた奴のシリアス回想、温度差にグッピーは死ぬしかない。

 

☆☆☆

 

 

「正直な話。語ると言っても、俺は奴の事を良く知らない。小学生の頃から家には帰らない事がほとんどで、年に10日も居ればマシだったと思うよ。中学に上がったくらいからは顔も合わせていないしな。だから、それほど語れることは多く無いんだ」

 

 兄上は静かに語り始めた。

 自らの“父”のことを。

 

「ただ1つだけ分かっているのが、アイツが正真正銘のド畜生であること――それだけだ」

 

 燃え盛るマグマのような、或いは纏わりつく汚泥のような……そんな、内にあるドロドロとした感情を必死に抑え込もうとしている。彼の姿はそのように映った。

 

「物心ついた時、クソ親父は俺に言葉を教えていた。毎日毎日ワンツーマン。懇切丁寧に、熱心に教えていたよ」

 

 そして、彼は語っていく。

 自らの“父”との過去を。あたかも、“親の仇”について語るように。

 

「恐らく、生まれた直後から継続してたんだろうな。俺は随分と早く言葉をマスターしていた。きっと、他の子供達とは比較にならないほど早く」

 

 だが――。

 

「ある日、奴は言った。その言葉で色んな人と会話して来い、とな」

 

 ……?

 おかしい。ここまで、どう聞いても憎悪に繋がりそうな点が見当たらない。

 一体全体、兄上は何を話そうとしているのだろう?

 

「俺は嬉々として外へ繰り出した。初めての外出だった。たくさんの友達を作りたいと思っていた。けど――」

 

 しかし。

 そこから話の流れが変わっていく。

 

「――けど、そうはならなかった。誰一人として俺の言葉を理解してくれる奴がいなかったからだ」

「……? どういうことじゃ?」

 

 思わず、疑問の言葉が飛び出した。今から説明していく事など明白なのに。それでも尋ねずにはいられなかった。 

 

「随分と昔の事だけど、今でも鮮明に思い出せる。不思議で奇妙で、そして怖かった。不気味だった。声を上げてワンワン泣いたよ」

 

 兄上はワシの言葉に目線だけを返し、そのまま話を続けていく。

 そして、その答えを明かした。

 

「奴が俺に教えていたのは()()()()()()()()()()()。――()()()()()()()()()()

「ちょっと待つのさ。確認だけれど、君は日本生まれ日本育ちなんだよね?」

「あぁ。その通りだぜ、ヒューカスさん」

「……それで“ギリシャ語”、か。それは何とも」

 

 ギリシャ。その地は、ワシら星群少女にとって縁深い場所。

 全ての始まりの地であり、ほとんどの星群少女が彼の地で生まれる。“聖地”と呼ぶ者さえいる土地。

 そのような国の……この極東の国から遥かに離れた異郷の地の言語。

 ワシらにとっては生まれついて修得している言語に過ぎない。しかし、この国で生まれ育った兄上にとっては――

 

「ギリシャ語を馬鹿にする訳では無いけど、あえて言う。よりにもよって、だ。英語なら、日本であっても会話できる者はいただろうさ。同年代の子供は無理でも、その親には話せる人だっていたはずだ」

 

 ――ただの無用の長物だったことだろう。

 

 

☆☆☆

 

 

「実に巧妙だよ。児相とかに通報が行っても“英才教育の一環”とでも言えば良いしな。そう言われちまえば、周囲の奴はとやかく言えないし」

 

 泣きわめく俺の姿を見て、クソ親父は爆笑していた気がする。

 正直その辺りはあんまり覚えていないけれど。まぁ、多分笑ってたんだろう。アイツはそういう奴だ。何も疑問は無い。

 

「奴は俺を……多分、()()だとでも思っていたんじゃないか」

 

 今でこそ俺のバイブルとなっているラノベ。あれも奴が買い与えたものだ。

 絵本を読む年齢のガキに漢字だらけの小説。断じて、まともな親がする事じゃない。間違いなく嫌がらせ目的だった。

 奴の思い通りになるのが嫌だったからこそ、あの手この手で解読したのだ。近所の人に読み方を教わり、読み仮名を振り、意味を書き込み――最後にはバイブルにしてやった。

 書かれていた“ハーレム”の面白さが最大の理由ではあったが、しかし最初の出発点は奴への反骨精神だったのだ。

 ともかく。奴にとって俺は、愛を注ぐべき“息子”ではなかった。それだけは確かな事実だ。

 だから俺は奴を敬わない。

 愛されなかった故に、憎む。

 “子”として扱われなかった故に、“クソ親父”と呼ぶ。

 これは、それだけの単純な話なのだ。

 

「奴からの嫌がらせを日常的に受けながらも俺はすくすく成長。小学校に入学して、そして初めての友人が出来た」

 

 友人との……()()()との一年間はかけがえのない日々だった。

 ギリシャ語から始めたせいで下手糞だった俺の日本語は、アイツとの会話を通して日常生活へ支障を来さない水準にまで至った。

 ……思えば。今の俺を形作るのは、アイツの影響が大きい。

 俺の黒歴史……小学生時代の俺が全力を注いだ“モテモテハーレム計画”。あの見果てぬ夢も、元を辿ればアイツとの交流の中で芽生えたものだった。

 アイツは俺の初めての友人であり、俺の世界を変えた救世主。クソ親父と俺だけで完結した、閉じた地獄に射した一筋の光だった。

 だが――

 

「ある日。クソ親父は唐突に引っ越しをすると言い出した。理由も語らず、有無も言わせずな。携帯なんて持っていなかったから、仲の良かった友達ともそれっきり」

 

 そういや、アイツは今頃どうしているだろうか。

 最後の最後で喧嘩別れのようになってしまった、あの子は。

 

「しかも、その後で奴は家に帰ってこなくなった。それなら引っ越しをした意味なんて無いじゃないか、と。一人っきりの家で恨みを募らせたものさ」

 

 冷凍食品やらカップ焼きそばやらに囲まれて。家に独りきりでいると、どうしようもない孤独に襲われたことを覚えている。

 友人との楽しい日々を知ってしまった後だからこそ、余計に辛かった。

 だからこそ俺は“ハーレム計画”などという無茶で愚かな夢に縋ったのだろう。

 全ては、女の子(誰か)からモテ(愛され)たかった故。

 星に簡単に家の合鍵を渡したのも、星の家に入り浸ったのも。誰かと一緒に居たかったから。

 思えば、ぼっち街道まっしぐらだった鷲平や鷹刈を放っておけなかったのも、どこかで自分と重ねていたから……なのかもしれない。誰とも言葉が通じず、一人ぼっちで泣いていた頃の自分と重ねていたから。

 ともかく。引っ越し以降、奴は家に居る事がほとんど無くなったわけだが。

 

「以降の奴の嫌がらせは少し趣向を変えた。度々姿を現しては俺を振り回し、周囲の人々を巻き込んで大惨事を引き起こした挙句、後始末もせずに去っていく……そんな感じになった」

 

 このころの騒動においては、警察の手を煩わせたことも一度や二度ではない。

 まぁ、警察が動く段階には既に奴は行方をくらませていたので、俺が対応する羽目になっていたのだが。

 というか、奴は(育児放棄を除けば)法を犯す事がない。決して犯罪にならないギリギリを見極めている。ただの傍迷惑なクソ野郎でしかないのだ。

 そんな奴も、中学生になってからは一切顔を見せなくなった。その理由は、おそらく――

 

「俺以外の玩具を見つけたんじゃないかな、とは推測していたんだが。それがヒューカスさんへ迷惑をかけていたとは。本当にすまなかっ……」

 

 そこで、紡ごうとした謝罪の言葉は途切れた。

 ふわりと広がる何かの花の香りと、柔らかく温かな感触。

 そう。

 俺はヒューカスさんに抱きしめられていた。

 

 

 

★★★

 

 

「外れ、ですわね」

 

 星群少女『タイム・イズ・マネー』の能力は“物体の時間を加速または減速させる”というもの。

 非常に強力な能力であり、剣――もう1つの能力で出現させる、時計の針を模した二振りの剣――を加速・射出すれば凄まじい威力となります。

 ただし、当然ながら万能ではありません。

 この能力の対象となるのは、発動者が一定時間内に触れたモノ。加え、生物は発動対象となりません。

 それ故。タイム・イズ・マネーのコスチュームは、肢体にピッタリと張り付いた“金色のラバースーツ”なのですわ。

 このスーツを加速させることで包まれた肉体も加速。高速での移動を実現し、回避や攻撃に活用可能となるのです。

 

「この国にも手掛かりなし。(わたくし)は次の国へ移ります。皆様は引き続き、この国での情報収集に励んでくださいませ」

「はっ。貨月お嬢様の御武運をお祈りいたします」

 

 現在は、その能力を駆使して日本を飛び出し、へびつかい座の星群少女を捜索しています。

 世界中の時金グループを総動員して情報を収集しているのです。

 また、星さんは白鳥の翼で世界中を飛び回って捜索。韻子さん・麻琴さん・てうさんは、(わたくし)たちが不在の街を守りつつ、身近な場所を捜索してくれています。

 ――けれど。手掛かりは未だ1つも見つからない。

 本当に存在するのか。とっくの昔に死亡しているのでは。そんな疑問が拭え切れなくなってきた頃。

 

子夜(しや)さんから?」

 

 1つの電話が届いたのです。

 師走(しわす) 子夜(しや)。12ある時金の分家の1つ師走一族。その跡取り娘にして、(わたくし)にとっては姉のような存在。

 今は私の護衛をする傍ら、偽十字さんの動向を監視する任務に当たっています。

 その 子夜さんから連絡。偽十字さんを監視していた彼女から、このタイミングで。

 

「如何しましたか、子夜さん?」

 

 不思議に思う気持ちはあれど、それ故に躊躇なく電話に出ます。

 即断即決。時は金なりこそ我が家の家訓。

 

『その……実は先ほどの来訪者に関してなのですが……』

 

 来訪者。

 その人物についての報告は受けています。なんでも、偽十字さんが学校に行っている間に訪れたそうで。全裸の上に白衣という、なんとも奇抜極まる格好だったとのことでした。

 子夜さんには監視を続行させ、時金の傘下に素性調査をさせていたはずですが……。

 

「正体が判明したのですか?」

『いえ、それは目下調査中とのことで……ですが……』

 

 何でしょう? 随分と言葉に詰まって、子夜さんらしく在りませんわ。

 彼女もまた、時金の血を引く者。幼少より“時は金なり”の信条を叩き込まれてきています。

 特に彼女は仕事一筋。誰よりも真面目で、効率重視な人。

 そんな彼女です。このように時間を無駄にする訳が無いのですが……。

 

「要領を得ませんわね。ハッキリと結論だけ述べて下さいませ」

 

 余程の事態が起こっているのではないか。そんな不安を抱きつつも、努めて冷静に促す。

 さすれば。一瞬の沈黙の後、彼女は――

 

『現在、偽十字 来栖は全裸白衣の女性と抱き合っています!」

「どういうことですの!?」

 

 

 

 

 





【後書き】

皆様の考察を読むのが楽しい今日この頃。
いつも励みになっております。

なお、重要な伏線はあらかた設置し終えた感があります。
感想・考察等お待ちしております。



以下、オマケ。
カスさんの挿絵。

※一部AI使用。見たくない人は下へスクロールしないで下さい。
※全年齢バージョン。


↑苦手な人


↓見たい人






カスさん(ヒューカス・アスクレピオス)
全年齢Ver.


【挿絵表示】


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