ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。 作:夢泉
脳が回転する。
このタイミング、訪れた者は何者か?
噂をすれば影ではないが、まさかの“偽十字 九栖狸”? ……否。それはないだろう。数年間一度も姿を見せなかった男だ。このタイミングで現れるとは考えにくい。
それに、父親ならば好都合でもある。いっそ親公認の“彼女”ポジに収まるのも悪くは無い。
父親でないとすれば、誰だ? 近所の人間? 宅配? ……ならば何の問題もない。レクシィが対応して終わり。部屋まで押し入ってくるわけがないし。仮に見られても、精々が近所で噂になるくらいだ。
問題があるとすれば……“女”。
来栖クンに好意を寄せる女が、こんな場面――想い人が全裸白衣の女と抱き合っている――を目撃したら? うん、間違いなく終わる。愚生は死ぬ。
神話の時代より、女の嫉妬の恐ろしさは誰もが知るところ。わざわざヘラの例を持ち出すまでもない。
だが、落ち着け。
調べた限り、来栖クンには妻も恋人も愛人も許嫁もいなかった。それなら安心……。
……いやいや。
いやいやいやいや。
考えてもみろ。出逢って2日のレクシィがあの有り様なのだ。十数年も生きていれば、女の100や200惚れさせている可能性だってあるだろう。
だとすれば、まずい。本当にまずい。
事前調査が甘かったのは事実。この町は時金と極星機関、2つの勢力の目が隅々まで張り巡らされていて。そのせいで好き勝手に動く事が出来なかったのだ。だから……
……ふぅー。違うな。
ビークール。今は悔いている時ではない。後悔など後で十分。この瞬間は窮地を生きて乗り切る事、それだけを考えねばなるまい。
よし。こうなれば腹を括ろう。
まず、来栖クンに好意を寄せる女が侵入してくる場合を想定する。
これが普通の……星群少女に関係の無い一般人であれば問題はない。フィールドを展開して逃げればいいだけ。
空間内の存在からは、それまでの世界と何ら変わらない景色で見える。――今回の場合、レクシィ視点では愚生と来栖クンが抱き合ったままで見える。
しかし。空間外の
これを利用すれば、愚生は来栖クンのホールドから逃れる事も可能だし、訪問者に目撃されることもない。
だが。この作戦には致命的な欠陥がある。
訪問者が彼と親交のある星群少女だった場合は――詰む。
フィールドは展開と同時、周囲の星群少女を強制的に集めてしまう。それは即ち、この姿がバッチリ目撃されてしまうことを意味している。
…………こうなれば賭け、か。
2つに1つ。一般人か、それ以外か。
前者ならセーフ、後者ならアウト。
そして。何れにせよ、このまま何もしなければアウトなのは明白で。
ならば――。
「アストロラーベ・フィールド、展開」
呟きと同時、愚生を中心として球刑の空間が形成され広がっていく。
賭けの結果は――
「やっぱり、星群少女……!」
「何さらしてんだ、テメェは!」
そこには、白髪の少女と桃色髪の少女。
「あーあ。だから賭けって嫌いなのさ」
敵意剥き出しの“こと座”と“はくちょう座”が、いた。
★★★
展開されたフィールド内。招かれたのは4人。
まず展開者たる愚生。“へびつかい座”の星群少女、ヒューカス・アスクレピオス。
次に、至近距離で会話していた“りゅうこつ座”、偽十字 レクシィ。
そして。招かれざる客2名。
“こと座”、鷹刈 麻琴。
“はくちょう座”、白鳥 星。
…………何故だろうか。この顔ぶれを見ていると不可思議な寒気が止まらない。
愚生の直感が凄まじい警鐘を鳴らしている。あるいは、この二千年の生でも1、2を争うかもしれない程に。この先に“死”があると吠えたてている。
一体、このメンツに何があるのだ……?
……いや。今はそんなこと関係ない。考えるべきは、生き残る手段。それだけ。
愚生は絶対に死にたくないのだ。生きていたいのだ。
ここは磨き上げたペテンと芝居の技術で――
「何だい、君たちは。男と女の仲にズケズケ踏み入ってくるなんて、非常識にも程が――」
「嘘じゃぞ。ただのデマカセじゃ」
「ぬぁ!?」
おのれレクシィーーーー!!!!
さては先程までの意趣返しか……! そんなに嫉妬してたのか、君は!
フィールドの融通の利かなさが恨めしい。招待客を選べるのなら良かったものを!
「…………なんか良く分かんねぇが。とりま一発ぶん殴って無力化すりゃ良いよな?」
「えぇ!? まずは話し合いをしようじゃないか! きっと愚生たちの間には大きな誤解が……」
「良いぞ、ワシが許可する。一発お見舞いしてやるのじゃ、今代の織姫よ」
「ファ!?」
火に油を注ぐのは止めるのさ、レクシィ!
愚生、最弱ぞ? 一発食らったら死亡確定だって分かってる?
「……ふ」
あ! レクシィの奴、笑いやがったのさ!
勝ち誇ったようにニヤリと! 100パーセント確信犯なのさ!
ならば! まだ話の通じそうなノーザンクロスに……!
「はくちょうクン! 話し合いは素晴らしいものさ! 文化的で建設的、平和的にして理性的! 対話とは愛だ! そうだろ!?」
「……。無力化してからでも対話は出来ると思うな、ボクは」
「これだから血生臭い戦いを続けてる奴はぁああああああああ!!」
何その蛮族思考!
確かに、普通の星群少女なら無力化で済むかもだけど! 愚生は違うの!
でも、それを理解してもらえるとは思えない! 今まで隠し続けて来たのが裏目に出た!
てか、言ってもレクシィが「嘘だ」と断ずれば終わりじゃん! 完全に詰んだ……!
「必殺! コンドル――」
桃色髪の少女が、両の手に羽衣を巻き付けて跳躍した。
さながらグローブの如き形となった羽衣。それが深紅の輝きを放っている。
……その光景を見ながら、思う。
愚生の短……くもないけれど。ともかく、愚生の生涯もここで終わりらしい。
しくじった。心の底から口惜しい。
でも、こうなったら何も出来ないしな。諦めて死を受け入れよう。
さようなら世界。こんにちは冥府。
………………なんて、ね。
時間は十分過ぎる程にあった。
そう。優秀極まりない、愚生の
「そこまでですよ~」
紅き流星の如き一撃は、愚生に届くことなく
突如として出現した、着ぐるみの幼女によって。
――“へび座”の星群少女サペアちゃんが、
【後書き】
チャートガバ常習犯が生き残れたのには理由(チート仲間の力押し)があったわけです。
現時点での、大まかな戦闘力(当社比)
白鳥 ……2000
竜骨 ……12000
蛇 ……11000
蛇使い……2
来栖 ……1
以下、オマケ。
サペアの挿絵。
※一部AI使用。見たくない人は下へスクロールしないでください。
↑苦手な人
↓見たい人
サペア(へび座)
【挿絵表示】