ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。   作:夢泉

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3話:帰宅して“おかえり”言ってくる美少女、夢シチュ過ぎて通報とか出来るわけない。

 

「……盗む。そっか、そういうことか」

「何か、分かった、キュクノス? ……キュクノス?」

 

 確かに、本当の星群少女からすれば、ボクらは88の席を卑怯非道で奪った敵に見えるのかもしれない。いや、もしかしたら先ほど暴走していた男の人と大差なく捉えられている可能性すらある。

 まして、()()と交流があった存在からすれば尚の事。たとえそれが北天と南天という敵同士の関係性であろうとも、それでも好敵手として認めていた者がいても何も不思議じゃない。

 だって初代は、あんなに素晴らしい人だったから。

 

「星サマ、何をしているです!?」

 

 変身を解除。

 そのまま、両手を広げて竜の前へ仁王立つ。

 

「おい、キュクノス! この馬鹿……!」

「皆さん。ここは彼女に任せてみましょう」

「ですけど…!」

「彼女のことを信頼していないんですか?」

「っ…!」

「……くそっ。卑怯だろ。その言い方は」

「申し訳ありませんわ。ですが今は、私たちの北十字を信じましょう」

 

 皆を止めてくれてありがとう、タイム(貨月)

 思えば、君にはいつも助けられてばかりだ。

 その信頼に応えられるかは分からないけれど。でも、ボクはボクの全力を尽くすよ。

 それに。来栖が“悪い子じゃない”と言ったから。それなら、きっと大丈夫。

 

「聞いてください! ボクたちのAE結晶は譲り受けたモノです! 先代の星群少女から!」

『…………ほう? それが事実だとして、奴らは何処じゃ。何故、貴様ら脆弱な人間如きに力を託した』

 

 ほら、ちゃんと止まって聞いてくれる。

 ボクの親友の言った通りだ。

 

「初代ノーザンクロスは死にました」

『死んだ、じゃと? ……戯言を。奴が容易く死ぬわけがあるまい』

 

 その通りだ。

 それでも。それでも死んだ。殺された。

 あの誰より強くて優しい戦士たちは、もう何処にもいない。

 それが事実。まごうこと無き、ただの真実。

 そして――

 

「ヘルクレスたちが狂気に堕ちた日、北天が闇に染まった日。白鳥、鷲、琴は最後まで気高く戦い、そして――ボクを庇って死にました」

 

 そんな悪夢を生み出したのは、他ならぬボクだ。

 

『……畢竟、貴様のせいで奴らは死んだのじゃな?』

「はい」

 

 その通りだ。

 初代はボクを護って死に、その後ずっと修行をつけてくれた母親代わりの2代目も死んだ。

 全てはボクの弱さ故。ボクが無力だった故に、彼女たちは死んだ。

 

『人間とは斯くも愚かであったのか。それを告げて如何な末路を迎えるかも分からぬとはな』

 

 金剛の顎が迫る。

 でも逃げない。目を閉じない、逸らさない。

 あの人(初代)がそうだったように。あの人(2代目)が教えてくれたように。

 

「ボクは3代目ノーザンクロス、キュクノス・リグリア! この受け継いだ名に誓って、貴女に嘘偽りを述べるわけにはいかない! あの十字の輝きに恥じぬ為に!」

 

 そう言いきれば、彼女は。

 

『…………。…………くっ。くく、くははははははは!!』

 

 笑った。

 

『くくく。何とも奴ららしいのぅ。奴ららしく愚かで、滑稽で、間抜けで――何より美しい最期じゃ』

 

 空洞の、涙流れぬ瞳で。

 肉のない、歪まぬ口で。

 どこか悲しそうに、寂しそうに哄笑した。

 

『そして主もまた、実にノーザンクロスらしい。奴は実に良き後継を持った』

 

 そして彼女は。

 変身を、金剛の鎧を解いていく。

 巨大な骨が微細な粒子となって散っていく。ダイヤモンドダストのように輝きながら。

 

「よかろう。3代目ノーザンクロス、キュクノス・リグリア。こちらの名乗りがまだじゃったな。非礼を許せ」

 

 そのまま、銀髪の少女の姿となった彼女は告げた。

 

「ワシは竜骨とダイヤモンドクロスを司る者、レクシィ・X・ディアマンテじゃ」

 

 

★★★

 

 

「――なるほどのぅ。ヘルクレス共が。確かに、奴らが相手であれば流石のノーザンクロスといえども苦戦は当然じゃが……しかし、まさか北天が斯様な惨状になっていようとは」

 

 過去10年で起きたことを掻い摘んで話終えると、骨だけで出来た椅子に座りながら黙って聞いていたレクシィさんは難しそうな顔で唸り始めた。

 でも、それも当然か。当事者として関わってきたボクたちも分からない事の方が圧倒的に多い。なぜヘルクレスたちが反旗を翻したのかも、何も分からないままだ。

 

「そもそも、黄道(こうどう)どもは何をしておるのじゃ。普段から散々威張り散らしておるのは、こういう時の為じゃろうに」

「十二星座は静観を決め込んでいます。この10年間、解決に動く事は一度もありませんでした」

 

 それどころか不可思議な動きをし続けている。

 2か月前まで10年間ずっと。南天と北天を完全に分断して交流を絶っていたのは、他ならぬ黄道たちだったのだから。

 

「どうやら知らねばならぬ事が山積みのようじゃな。……よっと」

 

 そして。そこまで聞くと、レクシィさんが椅子から立ち上がる。

 椅子は彼女が離れると同時にバラバラと崩れ、キラキラと光る粒子になって消えていった。

 

「有益な情報、感謝するのじゃ」

 

 そして彼女は一度にこやかに感謝を述べると、直後に表情を一変させて告げた。

 

「此度は情報提供への感謝と、誤解したまま名乗りもせず戦ったワシの非礼に関する詫び、それらを合わせて貴様らを見逃す。じゃが、次は別じゃ」

 

 それは正に獰猛な肉食獣の笑み。獲物を見つけた竜の顔。

 

「確かに、貴様らは未熟極まりなく、ワシの足元にも及ばぬかもしれぬ。されど、ノーザンクロスと認めた以上ワシの宿敵。次に相争う時は容赦せぬぞ」

 

 それは恐怖の宣告だった。間違いなく、そのはずだった。

 今のボクたちでは逆立ちしたって勝てない相手から敵として認識されたのだから、当然。

 だけど、不思議と恐怖よりも高揚感が勝った。初代の宿敵であり続けたダイヤモンドクロスから、ノーザンクロスを継ぐ者と認められたことへの。

 

「――あぁ、そうじゃった。最後に1つ、主らのバックにいる者らに話がある。ここで待っていれば会えるんじゃったな」

 

 バックにいる? 極星機関のことだろうか?

 確かに、後処理の為に機関の専門部隊がやってくることになっている。いるけれど……。

 

「会えるはずです。ですが、一体どんな話を?」

「なに、実に簡単な頼み事じゃよ。ワシが北天で好き勝手に暴れ回るよりは遥かにマシな、のぅ」

 

 

☆☆☆

 

 

 少し時給の上がる日曜のバイトを終えた俺は、最高の気分で帰路についていた。

 それというのも、修羅場突き落とし計画がオマケまでついて順風満帆に進んだからに他ならない。

 正直、明日学校に行くのが楽しみ過ぎる。

 一体全体どんなふうに拗れてるのだろう? それとも一夜で覚悟を決めてハーレムルートに突き進んでいたりするのだろうか?

 もし仮に、一人に決めて将来的には結婚まで行ったとしたら、その時は何気ない顔で友人としてスピーチがしたい。修羅場製造に青春を捧げていたことなど決して悟られること無く、厚顔無恥にもライスシャワーを撒いて結婚を祝したい。

 

「しゅらばらら~しゅしゅらばらばら~ばらしゅららら~♪」

 

 上機嫌に即興の鼻歌を歌いながら、誰もいない家の扉に鍵を差し込――む?

 開いている。閉め忘れたのか?

 ………………。

 ………………………………………………………………ええい、ままよ!

 

「おお、おかえりじゃな」

 

 ――バタン。家に入らず扉を閉める。

 んんんんんんんんんんんん????????

 おかしいな。バイトで疲れているのかな。昼間のダークホース(予定)のじゃロリ少女がいたんだけど??????????

 家は――間違えてないな。じゃあ、俺は間違えていないな。

 いやでも、それならそれでどういうこと? 遊園地で星たちと遊んで、その後で何があったら俺の家に来るんだ?

 うーーーーーーん。分からん。これあれだな、考えても絶対に分からんやつだな。

 それなら、もう俺の選択肢は決まっている。やることなんて1つだけだ。

 

「なんじゃ開けたり閉めたり忙しない奴じゃな。ほれ、さっさと家に入れ」

 

 ガチャリと扉を開けて。

 すぅーっと息を吸って、全力全開で一言。

 

「ただいま!」

「うむ、おかえり」

 

 この全男子高校生の夢のシチュを楽しむしかあるまい。

 

 

 






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