ハーレム系ラノベ主人公を修羅場に突き落とすのが愉しくて止められない。 作:夢泉
今話で序章が終了です。
「今更だけど、せっかく作ってくれた料理が冷めちゃったかもしれないな。先に食えば良かった、すまん」
「安心せい。したのは下準備までじゃ。最後の仕上げは食べる直前にするのじゃ」
「ほほぅ。何かは分からないけど凄く楽しみだな」
「期待して構わんぞ。なにせワシが知る唯一にして最高の料理じゃからな」
うーん。
初めて会った時から思っていたが、この妹(自称)の根は凄まじく善良である。
“感謝する”“褒美を取らせる”などとヘンテコな口調でこそあったが、それでも“礼”という人として大切なモノがしっかり備わっている。
これから住む家の住人へ手土産も忘れず、部屋の準備でも懸命に働いていた。とてもじゃないが、あのクソ親父の血を引いているとは思えない。
……とはいえ、それは俺もか。俺だって父親とは似ても似つかない善なる人間だ。やはり人間は遺伝子なぞに縛られない自由な生き物なのだろう。
そんなことを考えながら、整えた2階の部屋から1階のダイニングまで移動する。
「其処ではない。外じゃ外」
「庭か? ……バーベキューか何かか?」
この時点で軽く嫌な予感はしていた。していたが、やけに自信満々な妹の姿を見て気のせいだと思うことにしたのだ。
そして、そのまま促されるまま庭へと向かい……。
「おい、マイシスター。これは何だ」
「夕飯じゃが?」
「この巨大な樽に詰まった大量の塩と、その中に埋もれた腐臭のする肉が?」
「そうじゃぞ。これを火で炙って食うんじゃ」
「お前は大航海時代の海賊か?」
以前、テレビか何かで聞きかじったことを思い出す。
当時の海賊たちは保存食として塩漬け肉を食べていたが、どんどん腐っていくから酷い臭いがした上に味もクソ不味かったと。確か、そんな内容だった。
栄養が足りなくて何かの病気になってしまうことも多かったらしい。……俺の目の前にあるコレは、そういう類の食べてはいけない料理ではないだろうか?
「ほれ、何をしておる。美味じゃぞ」
しかし、我が妹はバクバクと食べている。
我が家の庭で焚火をメラメラ燃やして、ジャンジャン焼いては口に運んでいる。
……これ。もしや俺が知らないだけで伝統料理の類か? 彼女の生まれ故郷に伝わる由緒正しい料理であり、食べてみれば意外と美味しいのかもしれない?
考えてみれば、腐った料理も臭い料理も世界中に溢れている。納豆然り、シュールストレミング然り。
それに、これは焼き肉の塩味のような物と考える事もできるのではないか?
……そもそも出された料理に口をつけないわけにもいかない。バイト終わりで空腹なのも事実だしな。
「…………いただきます」
「うむ。たんと食うが良いのじゃ」
なんやかんやと無理矢理に理由を付けて覚悟を決めた。
さぁ、いざ実食…………●※%★□▲◎∬♯◆☆ッ!!!???
「硬いッ! 臭いッ! 不味いッ!!!!!」
何っっっっだ、コレ!?
顎と歯が壊れると言っても過言ではない硬さ! 物理的に痛い程の尋常ならざる塩辛さ!
そして何より!
「普通に腐ってんじゃん! 発酵とかの次元じゃないじゃん!」
「そりゃそうじゃろ。ずっと運んで長旅をしておったからのぅ」
「そんなもん捨てろ!」
「何でじゃ! 多少腐ってても無問題じゃろ!」
「問題あるに決まってんだろ! アホか! はい没収! 全部捨てる!」
「ぬぁあああああ!!?? 何という事を!? 命が惜しく無いようじゃな!」
「うるせぇ、家主命令だ! 捨てなきゃ住むの禁止な!」
「何っ!? それは卑怯じゃぞ……! あーーーーっワシの肉ぅうううううう!!」
前言撤回。
この想像の斜め上を行く滅茶苦茶さ。方向性こそ異なるが、やはりクソ親父の血を引いている。
☆☆☆
さて、参ったぞ。
まさか、こんな欠陥を抱えていようとは思わなかった。
“メシマズ”は確かに創作物において魅力的な属性の1つかもしれない。大所帯ハーレムもののヒロインには必ずと言って良い程メシマズの女の子がいる。
だが、しかしである。実際問題、これは流石に駄目だろ。毎食が殺人未遂だ。幸せ一杯の結婚エンドではなく、保険金殺人狙いの偽装結婚エンドになってしまう。
まぁ、“女が食事を作る”なんて時代遅れな考えであるのも事実。男が……星が料理をつくれば何も問題はない……が、それはそれとして作れないよりは作れる方が良いに決まっている。
俺の楽しい日々の為、我が妹にはダークホースとして場を掻き乱して貰わねばならんのだ。それ故、早々にヒロインレースから脱落してもらっては困るわけで。
『お弁当作って来ちゃった』とか『チョコ受け取って』とか『あーん』とか、そういうのをガンガンしてもらいたいわけで。
とりあえず料理は追々しっかりと教え込むとして……
「ほれ、これ食ってみろ」
「なんじゃこれ?」
「カップ焼き蕎麦だ。これフォークな」
「……むむむ。初めて見るが、こんなモノが美味いとは思えんのじゃが」
「いいから、つべこべ言わず食ってみろ。」
……問題は彼女の味覚そのものが狂っている場合だ。“腐った肉でも無問題”と考えるほど過酷な環境に生きてきた結果、ストレスで味覚障害になっている可能性もある。
その場合は対応が変わってくる故、まずは味付けが濃い食べ物で反応を調べる事にした。
したのだが――
「なんじゃコレ美味すぎるぞ! これと比べたら先の肉はゴミじゃな!」
「だから言っただろうが」
「じゃな!」
――何も問題なかった。
なら、あんなクソ不味い物を食べれてたのは何故だ。
余計に謎が増えた気がするものの、正直もう疲れた。考えるのも面倒くさい。
今後、この妹関連の疑問は全て“クソ親父の娘だから”で納得してしまおう。そう決めた。
★★★
――そうして夜は更けていく。
「任務は覚えているな?」
「あァ。この写真の星群少女を殺せば良いンだロ。ソッチこそ約束は覚えてンだろうナ?」
「無論だとも。達成の暁には、必ず彼女の治療を成し遂げよう。精々その身体が朽ちる前に成し遂げる事だ」
「言わレ無くとも」
――煌めく星々が無数の悲劇と絶望を隠しながら。
「今更ですけど~。こんなトコにいても良いんですか~、先生~。怒られちゃいますよ~」
「ノープロノ―プロ! どうせ
「でも~、誉れ高き黄道じゃないですか~」
「いっつも仲間外れにする癖、非常時だけ黄道扱いしてくる……そんな奴らなんか知らないさ」
「ま~、ですよね~。それで~、この街には何を~?」
「すこし気になる存在がいるのさ。もしかしたら、凄く面白くなるかもしれないぜ?」
「お~、駄目元で期待しておきます~」
――日常は再び、何事もなく続いていく。
自分の未熟が原因とはいえ、やっぱり低評価は辛いですね。平均が流星群でガクッと下がってモチベがががががが(豆腐メンタル)
せめて少しでも評価が上がるように頑張ります。これからも応援お願いします。