とある神谷の幻想創造 神の右席編   作:nozomu7

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襲撃と敗北

 その後、駿斗からOHANASHI(物理)を受けた天草式男一同は一旦『五和応援大作戦』を中断せざるを得ず、先ほどまでのように周囲に溶け込んで護衛を行っていた。

 

 結局、五和の泊まり込み先は当麻の部屋に決まった(五和は何かと理由をつけて、駿斗の部屋にしたがっていたが)。駿斗は最悪自分1人でもある程度までは対処できるものの、当麻は『聖人』の脅威的な身体能力には対抗できないからだ。

 

 その後、駿斗は五和が護衛をしやすいという理由で、制服から着替えると当麻の家に入った。それに、彼女が当麻の家に入ることには1つ問題があるからだ。

 

「……で、とうま。何で天草式のいつわが隣にいるの?」

 

 本日最大のデンジャラスチェックポイント。

 

 学生寮の一角にある当麻の部屋の扉を開けるなり、インデックスが放った一言に当麻の全身から脂汗が滲み出た。彼女の口が、かみつき準備完了と言わんばかりにその端からうっすらと白い歯がのぞかせているのがすごく怖い。

 

 ちなみに、スフィンクスは『誰この人。だれー?』と五和の周囲をぐるぐる歩き回り、鼻をひくつかせている。

 

「い、いや、それは、ええとですね。何から説明した方がいいのかなー……?」

 

 当麻が噴き出る汗をぬぐいながらそう言うと、五和がキョトンとした顔で口を動かした。

 

「つまりですね。『神の右席』の――」

「「でぇやあ!」」

 

 当麻と駿斗は息ピッタリに五和の首筋にチョップを喰らわせて言葉を遮ると、駿斗が後ろから彼女の首に腕を巻き付かせ、彼女の肩を押す当麻と共にインデックスから急速に離れて内緒話を実行した。

 

「(……いっつーわサン! あのええと、インデックスには黙っておいてはいただけないでしょうか!?)」

「わっわっ」

「(アックアの狙いはどうやら俺たちだけみたいだからな。インデックスに変な矛先が向かないのだったら、その方が絶対にいい。だから、余計な情報は与えずにインデックスには今回も『神の右席』には関わらないでもらいましょうそうしよう!)」

「わわわわわわわわわわわわわわわわっ!?」

「……五和、人の話聞いてる?」

「き、聞いていますですよ!? ばばばば、バッチリでぇす!」

 

 彼女は顔を真っ赤にして首を縦にぶんぶんと勢いよく振る。それを見た駿斗は、息が苦しかったか? と彼女の肩から首にかけて回していた腕を取った。すると、なぜか彼女が残念そうな表情になる。

 

「……、」

 

 すると、いつの間にかインデックスが完全に無感情になっていた。大きく爆発するどころか、それを通り越して「……いいもん」と呟いてテレビの方を向いてしまった。

 

 当麻と駿斗にとっては、これが一番気まずい状態なのだ。

 

 せめていつも通りに当麻の頭に噛みつこうとするインデックスを駿斗が慌てて止める……というほうが、まだ精神的には楽である気がする。肉体的に楽であるかどうかは保証しかねるが。

 

 当麻は土下座をしながら彼女に頭を差し出して「いっそのこと、完璧に爆発する前に一度噛んでくれ」なんて言っているのであるが、一向にインデックスは機嫌を直さない。

 

 結局、最終的には五和が食材持参で作ってくれた夕食でインデックスの機嫌は直った。その過程で隣の部屋にいた土御門舞夏が乱入した挙句、土御門家の今日の夕食がスープから味噌汁に変わるという珍事があったが、駿斗たち4人は、比較的平和に過ごすことができたことを記しておく。

 

 そして、今日は当麻の一存でインデックスが初めての風呂掃除係に任命されたりしたわけであるが。

 

「――何でスポンジと洗剤で掃除しただけでお風呂が壊れるんだよ、インデックス!」

「そ、そんなこと言ったって、私はとうまに言われた通りにゴシゴシやっただけなんだよ!」

 

 夜の街に当麻とインデックスの声が響き、五和と駿斗はその隣で苦笑いを浮かべていた。インデックスが当麻の家の給湯機を破壊したため、「せっかくの機会だから」と近所の銭湯まで足を運ぶことになったからだ。

 

「ちなみにインデックスは実は上条さんの言う通りにゴシゴシやっていないに賭ける! っていうか、バスタブの給湯口からプラスチックの溶けたみたいな臭いがしたのはなぜか。それはインデックスが給湯口に思いっきり洗剤の原液を注ぎ込んだからですどうだこの推理!」

 

 当麻はそう言って、インデックスにビシィ! と人差指を突きつける。

 

「え? 洗剤入れたら綺麗になるんじゃないの?」

「おっしゃー! ここで驚異の天然キョトンが出ました! っつかおかげで給湯機内部が焦げ付いて火災寸前ですハイ!」

「あ、あはは。ま、まあ、たまにはお外のお風呂を使うのも気分転換になって良いじゃないですか」

 

 五和がカミワザなフォローをすべり込ませ、2人の騒ぎが少し静かになった。すると、彼女は小さな手帳を見ながら公衆浴場やスパリゾートの情報をチェックしている。……明らかに彼女の手書きであろうものなのだが、どうして護衛に関係なさそうなそんな情報までチェックしているか謎である。

 

 そのことを駿斗が漏らすと、インデックスには聞かれないような声で五和が言った。

 

「(……え、ええと、周辺の地理情報を把握しておくことは、対象を護衛する際にも必要なことですし)」

 

 しかし、あまりにも調べすぎると、『外』の人間である彼女のところへ警備員(アンチスキル)が機密保護条例を守るために襲い掛かりはしないか、少々心配である。

 

 彼女の話によれば、そのレジャー施設があるのは第二十二学区であるらしい。

 

「あの学区って……確か、地下市街だったか。ほとんど行ったことがないけど」

 

 学園都市の学区の中では、およそ2キロ四方という面積が一番狭い学区だ。しかし、地下数百メートルまで開発が進められており、もともとSFのような雰囲気を持つ学園都市の中でも、より一層未来都市というイメージがする場所である。

 

 終電は過ぎていたが、彼らは2ドアのファミリーカーを借りると五和の運転するレンタカーで向かった。

 

「五和、バイクにも乗れるのか。ひょっとして、国際ライセンス?」

「まあ、それは、その。一応自動車と自動二輪、小型船舶と……飛行機は無理ですけど、ヘリコプターなら、なんとか……」

 

 駿斗が訊くと、何だか肩身が狭い調子で五和は言う。彼女曰く、仕事によっては延々と砂漠や草原が広がっている地域に行くこともあるらしく、そのような時にはヘリコプターを使うこともあるそうだ。

 

 駿斗たちが住んでいる学生寮は第七学区の中でも、隣の第二十二学区に近い、端の方にある。はっきり言って、レジャー施設までは歩こうとすれば歩いて行ける距離であるのだが、彼女が車を借りたのは、単に湯冷めするかもしれないから早めに帰れるように、という配慮であろう。

 

 第七学区から第二十二学区に入ったところで、車の窓から外を見たインデックスが声を上げた。

 

「わっわっ! とうま、はやと! ジャングルジムがあるよ、でっかいジャングルジム!」

 

 第二十二学区の地上部分は、他の学区とは大きく異なる。主要な施設が地下に集中しているため、地上には一般的な家屋やビルが存在せずに、風力発電のプロペラだけが並んでいるのだ。それらが普通の学区にあるような『電信柱の代わり』のように配置されているのではなく、ビルの鉄骨のように30階ぐらいの高さまで縦横に柱を並べたところに、大量のプロペラを立体的に配置している。だから、インデックスが表現したように巨大なジャングルジムのような風貌をしているのだ。

 

 地下市街で大量に消費される電力は、これらの発電で賄われるという訳である。

 

 五和の運転する車が、四角く切り抜かれた地下ゲートをくぐった。この場所は巨大な円筒形になっていて、直径2キロの筒の外周を這うようにらせん状の道路を形成している。反対側の上り車線と合わせると、理髪店の回転する看板のような配置になるらしい。

 

「地下市街って、日本とは合わないよなー。地震とかめちゃくちゃ怖いし。確か、どれだけ壁の強度を強くしても、地盤の断層ごとずれたら丸ごと引き裂かれちまうんだろ?」

 

 もちろん、学園都市の建設技術は地震対策も万全である。最も、「らせん状の道路がバネとなって衝撃を吸収・緩和する」……なんてものは、根も葉もないローカル都市伝説にすぎないのだが。

 

「そういや、レジャー風呂って第何階層にあるんだ?」

「ええと、第三階層だそうです」

「ねえ、かいそうって何? わかめ?」

「『かいそう』違いだよ。海の藻と書く『海藻』じゃなくて、建物に使う『階層』だ。第二十二学区は全部で10の階層に分かれていて、俺たちがこれから行くのは、その中で上から3番目の層なんだよ」

 

 第三階層、地下90メートルへの入り口のゲートをくぐった瞬間、インデックスは思わず「うわあ……」と感激するような声を出した。

 

 トンネル内をオレンジ色の照明が照らしていたのに対して、ここには薄い青の空間が広がっていた。直径2キロ、高さ20メートルほどの空間の天井が全てプラネタリウムになっているのだ。ここでは地上のカメラで撮影した『星空』をリアルタイムで映し出している。

 

 さらに、街の色が全て同じ色で統一されているため、まるで海の中にでも飛び込んで夜空を眺めているような印象が得られるのだ。

 

 ところどころには、プラネタリウムの天井をぶち抜く形でビルが建っている。もともとこの天井は、体育館のように鉄骨を張り巡らせて重量を分散させる形で支えているらしいが、いざというときのために、それらのビルは地下市街を支える柱としての役割も担っているのだ。

 

「こんなの、本当に地下にあるものなの? 川もあるし、森もあるみたいなんだよ!」

 

 インデックスがそう言うが、ここは正真正銘、地下市街である。

 

 森は農業ビルで見られるような水栽培を応用して作られており、空気浄化装置としてだけでなく、精神的な面から地下での生活を支えることにも一役買っている。水は木々を育てたり生活で使用されるだけではなく、地上から各階層に落とす過程で水力発電をしている。

 

 最も、これには莫大な電力がネックとなっているため、電気の大半を風力発電でまかなっている学園都市だからこそできる技だ。他の国では電力のほとんどを化石燃料に頼っている場合が多いため、環境問題が声高に叫ばれる今日日、このような地下市街をつくるのは現実的に難しい。

 

 もっとも、学園都市において地下市街が発達しているのは、東京の西部約3分の1という面積の狭さが1つの原因でもある。そのため、国土面積が十分にある他の国では、そこまでして大規模な地下開発に迫られていない。

 

 そんな話をしていると、遠くの方にビルの電飾が見えてきた。

 

 

 

 

 

 楽しいお風呂タイムが終わり、駿斗と当麻は外に出た。夜風を浴びたかったのだが、ここは地下市街であるため完全な無風状態であることに後から気が付く男2人。

 

 彼らは、数時間前に五和から伝えられた、『神の右席』後方のアックアからの宣戦布告について考える。

 

 駿斗をはじめ、様々な勢力がそれを大袈裟すぎるくらいに捉えていたが、しかし蓋を上げてみれば何も起こらない。

 

 彼が宣戦布告を送り付けてから、イギリス清教と学園都市が動き出してその結果、天草式による護衛が決まった。それまでの時間があれば、アックアもすでに学園都市に入り込んできていいはずだ。科学一辺倒である学園都市の監視網では、魔術師であるアックアの侵入を防ぐことができない。それは、今までに侵入してきた数々の魔術師が証明している。

 

 そこへ、風呂上がりでなんだかいい匂いのする五和が近づいてきた。

 

「そんな所にいると湯冷めしてしまいますよ」

「どのみち、帰るときには湯冷めするから」

 

 駿斗は笑ってそう言い返す。

 

「少し歩きませんか?」

 

 そう言った彼女の申し出に、彼らは賛同して一緒に歩き出した。インデックスは現在、ビルの中にある『食べ物空間』の試食コーナーにいるらしい。それなら、当分の間出てくることはないだろう、と2人は判断した。

 

 それに、アックアのことについて話すには、彼女がいない方が都合が良い。

 

 青一色に統一された夜景の中を、3人が歩く。

 

「そういえば、天草式は日本からイギリスに引っ越したんだっけ?」

 

 ふと思いついたように、当麻が言った。

 

「ええ、まあ」

「イギリスでの生活って、どんな感じなんだ?」

 

 うーん、と彼女は少し考えるようなそぶりを見せた。

 

「ロンドンへ移住したと言っても、私達が住んでいるのは日本人街のブロックですから。そんなに変わらないですよ。毎日3食、食べるものも変わらないですし」

「え、そんなもんなのか?」

 

 駿斗の言葉に、彼女は曖昧に笑った。

 

「そもそも天草式(わたしたち)はあらゆる環境を学習し、その環境に適した形で溶け込む集団ですから。『知らない場所』へ向かうときの反応は、普通の人とは違うかもしれません」

 

 つまり、彼女たちが日本人街にいる最たる理由は、そこが『日本人がたくさんいても不自然でない場所』だからであろう。

 

 しかし、イギリス清教が彼女たちを日本人街の担当にさせたのも、そして今回2人の護衛として派遣させたのも、いざというときはトカゲのしっぽ切りができるという理由かもしれない。

 

 しかし、彼女がそんな話をしているとき、駿斗の様子が変わった。

 

「……全員、用意しろ。奴が来た」

 

 その言葉に、3人だけでなく、周囲で護衛と観察のために散開していた天草式を含めた全員に、緊張が走る。

 

「――これに気が付くとは、確かに報告通りの実力はあるようであるな」

 

 そして、闇の奥から声が聞こえた。

 

 男の声で、流暢な日本語だった。

 

「――宣告は与えた。貴様らの前には、いくつかの選択肢があったはずである」

 

 足音が聞こえる。しかし、それはまっとうな人間の出すものではなかった。一歩ごとにズン……! と低い震動が地面を揺らしている。

 

 それが示すものは、圧倒的な力の片鱗だ。

 

「――私の宣告を受け止めた上で熟考し、自分の命を預けるに足ると判断した選択肢が『これ』だと言うのなら、私は真っ向から立ちふさがるのであるが」

 

 だが、と声は嗤った。

 

「――率直に言おう。もう少し、まともな選択肢はなかったのかね」

 

 闇が拭われ、そこから声の主が姿を現した。ただそれだけで、辺りの色が変わった気がした。ライトアップの内容などは変わらないはずだ。しかし、闇が男から遠ざかっていくような感覚がそこにあった。

 

 茶色い髪に、石を削り取ったような顔立ち。衣服は青系のゴルフウェアをほうふつとさせた。屈強な体つきは、スポーツマンのような健全さはなく、血にまみれた戦士のものだ。

 

 その後ろから3人の『十二使徒』が現れ、その中には駿斗と当麻も知っている『アドリア海の女王』事件の時に現れたレビもいるが、凄腕の魔術師である彼らすらその存在感が薄れていた。

 

「後方のアックア、か……宣言通り、来たわけか」

 

『神の右席』にして、『聖人』としての素質も兼ね備えた者。

 

「策を練る必要性は感じられない。私はただ、この世界で起きている騒乱の元凶を排除しに来ただけである」

 

 言ってくれる、と2人は心の中で毒づいた。

 

 前方のヴェントは学園都市の機能を麻痺させた。左方のテッラは世界中の混乱を起こした。彼らの事情がどうあれ、実際に多大な被害と混乱を起こした『神の右席』から、騒乱の現況などと呼ばれる筋合いはない。

 

「話し合いはなし。最初っから、殺すつもりか」

 

 当麻が鋭いまなざしで敵を睨みつけながら言う。

 

「ふん。確かに性急すぎたな。私の望みは騒乱の元凶を断ち切ることである」

「元凶があるならそっちだろ。テメエらが引き起こした『〇九三〇事件』に『アビニョン暴動』……忘れたとは言わせないぞ」

 

 駿斗もアックアを睨みつける。

 

「それすらも、『上条当麻と神谷駿斗及び学園都市という危険分子を攻略するため』という原因が存在するのだがな」

 

 話は平行線をたどっていた。

 

「全ての元凶は貴様たちの肉体の一部を起点とする特異体質にある。ならば、貴様については命まで奪わなくともよいであろう。――その右腕を差し出せ。そいつをここで切断するならば、貴様の命だけは助けてやる」

 

 答えるまでもない、断られることを前提とした言葉だった。

 

 駿斗は幻想核杖(イマジン・コアロッド)を構えた。その直後。

 

「行くぞ。わが標的」

 

 2人が激突した。

 

 彼らを中心に、莫大な衝撃波が発生する。その余波だけで当麻と五和が地面にひっくりかえり、周囲に展開していた天草式も防御に走った。

 

 駿斗は、既に背中から4色・4枚の翼を生やしていた。権天使(アルヒャイ)。自分を狙ってくる敵に対し、初めから全力で立ち向かったのだ。

 

 アックアが自分の影から取り出したメイスを振るう。そして、彼はその直後違和感に気が付いた。

 

(水が……神の力(ガブリエル)であるか……ッ!)

 

 すると、駿斗の持つ翼が4色から1色に統一されて行き、そして1対、青色の巨大な翼だけになっていた。

 

 8月の御使落し(エンゼルフォール)で得た、神の力と同質の天使の力(テレズマ)。それによって、彼が得意とする『水』の術式を力づくで封じたのだ。

 

 彼は幻想核杖を中心に生み出した水の剣で、アックアのメイスと打ち合った。

 

 彼がそれを扱えるのは、40分ほどが限界だ。それまでに彼がアックアを倒すことができなければ、結末は全て天草式にゆだねられることとなる。

 

 そして、それ以前に天草式と当麻が『十二使徒』に敗れた場合は、完全なる敗北になるのだ。

 

 

 

 

 

 天草式+当麻と、『十二使徒』との戦いが始まった。

 

 レビの硬貨袋が飛び、天草式と当麻全体を囲むように魔方陣が形成される。そして、彼ら全体を覆うような雷撃が放たれた。

 

『女王艦隊』の旗艦で以前見た時に比べて、圧倒的にその威力が高い。どうやら、向こうで戦っている駿斗やアックアの魔術を視界に収め、『神の子との同席』をモチーフにした魔術で威力を高めているようだ。

 

「建宮さん、防御を!」

 

 五和は叫ぶが、しかしその必殺の魔術は彼らに有効打を加えることなく霧散した。

 

 原因は当麻の右手。

 

 彼が天草式の前に飛び出しそれを突き出すと、それは乾いた音と共に消えたのだ。

 

 それを見たレビは、後ろにいるトマとジミーに目配せをする。

 

 すると、3人が天草式という集団に向かって突撃してきた。それを見た天草式も、全員が戦闘準備にかかる。

 

 天草式の集団から、たくさんの武器が振るわれた。フランベルジュ、槍、また東洋特有の鎖鎌や十手などといった武器もあった。

 

 物理攻撃が来るかと思えば、そこから衝撃波が飛び出し、魔術的な光が放たれたかと思えば、それは攻撃ではなく仲間への支援術式だったりした。

 

 これが天草式特有の『隠密性』。

 

 隠れキリシタンを主体とする彼らは、分かりやすい魔術をあまり用いらない。生活の中にあるもの、ありふれた日用品――例えば、服や文房具などといったもので、さりげない形で魔術を組み上げ、発動してくる。どちらかと言えば、魔術的な記号をあらかじめ用意するのではなく、日常の中に隠れているそれを見つけて利用する、というのが彼ら特有のやり方だった。

 

 そして、その中心に当麻はいた。

 

 彼に向けて振るわれる武器が建宮に弾かれ、飛び出した魔術が当麻の右手に打ち消される。出会ってから1か月弱しか経っておらず、会った回数で言えば未だ4回程度しかない彼らであるが、それでも拙いながらもコンビネーションは悪くはなかった。

 

 しかし、『十二使徒』の3人もまた強力だった。

 

 レビの放った1つの魔術が天草式の複数人をまとめて吹き飛ばし、トマという青年は彼らの攻撃をまるで無視するかのように、その身に受けても平然としていた。ジミーが持つ縮絨棒(しゅくじゅうぼう)が振るわれると、それを受け止めようとした天草式の1人の剣が木端微塵になった。

 

 次第に、彼らは疲弊していった。そして、『十二使徒』は依然としてその力を揮い続けている。

 

 小さな差は、時間が経つごとに大きく開いて行く。そして、ついにその限界が来た。

 

 上条当麻の体がジミーの持つ縮絨棒に吹き飛ばされ、そしてそれをきっかけに天草式は敗北を喫した。

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