牛乳かバターのCMにでもでてきそうな牧草地の中を横切る、一本の道。そこを、1台の自動車が走っていた。そのレンタカーの中には、4人の少女たちが詰め込まれている。
その全員が、青っぽい色のミニスカートに、スポーツ用のシャツか白いジャケットを着ていた。
「だー、もうすぐこの緑の匂いともお別れですかぁ……」
そう言いながら窓の外を眺めているのは、レッサー。長い黒髪を先端の方だけ三つ編みにした10代前半の少女だ。
「ちょっとレッサー。ケツが見えてるわ。あとあなたの尻尾がすごく邪魔」
不機嫌そうな調子でいるのは、ベイロープ。18歳ほどの少女で、そのスカートの下には青いレギンスが足首まで覆っていて、対照的にジャケットを着ていなかった。
「引っ込めないと引っこ抜くから」
「ベイロープのケチんぼ。というか、何をそんなにイライラしているんです?」
彼女の言う『尻尾』とは、レッサーの尻から伸びている、透明なチューブの中を金属製の平べったい鎖のようなものが走っている形状をした、小悪魔についてそうな『尻尾』……のような霊装だ。その言葉に従って、尻尾をするすると自分の太ももの付け根の部分に巻きつける彼女であったが、その時の挙動なのか自らの尻を再び持ち上げてしまった。
顔の前にデカデカと白いパンツを突きつけられたベイロープの眉がピクピクと動く。
「だからっ! 引っ込めろと! 言ったはずだわッッッ!」
「ぐわァァああああああ!? いきなり両手で鷲掴み!? フロリスも何か言ってやってください!」
「えー、ワタシは今運転で忙しいからなあ」
ハンドルを握った金髪の少女、フロリスがやる気なげに言い放つ。15歳ほどの少女で、シャツの上からジャケットを羽織り、ミニスカートの下にはスパッツを着ていた。
「……それより、いつまで経っても景色が変わんねえなあ。迷うような道じゃないはずだけど。ランシス、本当にこの道で合っているんだよね?」
フロリスが話を振った先は、助手席にいる茶色い髪の少女である。
「や、やめて……。くすぐった、あふぁ、ま、魔力が、魔力を受けりゅと……」
「くそ、自分で作った魔力に当てられてぷるぷるしてやがる。生命力を魔力に変換する途中で、何がどうなったら、こんな『くすぐったさ』に襲われるんだ……?」
ランシスの様子に、思わず頭を抑えるフロリス。
彼女たちは、目下バッキンガム宮殿で話題となっている魔術結社予備軍『新たなる光』である。
4人は現在、バッキンガム宮殿の会議で睨まれていた通りに、無事に『発掘作業』を終えて南下しているところである。
『ケース』『翼』『爪』『尻尾』『ハサミ』。
それらが、彼女たちが現在所持している霊装であり、そして要であった。
「さて、と」
ハンドルを握っているフロリスが、正面を睨む。
「そろそろ気を引き締めろ。これから英国っていう枠組みそのものをぶっ潰すんだから」
道路は分かれ道になっており、その手前に交通標識が立っていた。そこには英文と矢印の簡単な図面で、こんな表記がなされている。
――直進、ロンドンまで30キロ。
当麻は赤いオープンカーの助手席にいた。
ロンドンの持つ何百年単位の歴史的な街並みの景色をぶち壊しにするようなその車の所持者は、金髪爆乳のお姉さんである。
「しっかし、まさかここでアンタが出てくるとはなあ」
「あら、お姉さんとしても、意外な展開だったわよ?」
オリアナ=トムソン。
『大覇星祭』において、リドヴィア=ロレンツェッティと共に『
肉弾戦でも魔術戦でも優れ、当麻、土御門、ステイルに加え、周囲の状況から能力を制限していたとはいえ駿斗の4人を相手しても逃げうせていたという、戦闘面でも優れた魔術師である。
イギリスに囚われたものの、現在は取引によって彼らに雇われている身なのだ。
「……つーか、ユーロトンネルの爆破って、フランスと、その背後にいるローマ正教が関係してんだろ。アンタ、牙剥いちまって大丈夫なのか?」
「一応断わっておくけど、お姉さんの本分は魔術系の運び屋。どこかの組織に忠誠を誓っているわけではないわ。どの勢力に協力して誰と戦うかは自由よ。……だから、報酬さえいただけるのなら、アナタ個人のために汗を流してあげても構わないってワ・ケ」
甘い息を吹きかけられて、思わず当麻は体をガチガチにする。この色っぽいお姉ちゃんは、思春期の男子高校生にとっては色々と刺激が強いので苦手なのだ。
それはともかく、運び屋としての経験を生かして、『発掘』した霊装を持っている魔術師を見つけ、撃破するのがオリアナに与えられた仕事である。本人が言うには、逃げる技術と追跡する技術は全くの別物であるらしいのだが、その辺りは本職の人でなければ分からないものなのだろう。
手がかりは、ロンドン市内に仕掛けられている防犯カメラ。そのうちの1つにわずかに映っている自動車の影があったのだが、その影を生み出しているはずの自動車がなぜかどこのカメラにも映っていなかったのだ。
「こいつは数十万台あるはずのカメラの配置を全て把握したうえで、その死角となるポイントを選んで移動し、車を止めた。……偶然で片づけるのは、ちょっと難しい状況ね」
「でも、それだけで、本当に魔術師って分かるのか?」
『分からないから調べに行くんだろ』
その時、カーステレオから聞き慣れた声が響いた。魔術的な通信をしている駿斗である。
『どのカメラにも映っていないってことは、逆に言えば、どのカメラにも映らないようなルートしか通っていない、ということだ。魔術的な「妨害」が監視カメラにされた様子はないらしいし。もっとも、そもそもロンドン市内で魔術なんか使われていれば、一発でイギリス清教にばれるだろうが』
イギリス清教と王室の監視下にあるこの街では『場所をすぐに特定する』とまではいかないものの、『魔術が発動した』ということはすぐにばれてしまう。
その駿斗の解説を聞いて、当麻がへー、と感心していると、オリアナは付け足した。
「それに、その途中で気になることがあったら調べて確かめれば良いのよ。そうやって、ヒットするのを待つしかない」
後手になるようだが、事実なのだからそうするしかない。『新たなる光』に駿斗が一度でも接触してしまえば、すぐに探査・追跡用術式で調べることができるのであるが、メンバーについてわずかな情報しかない現在では、そうやって地道に調査するしかないのだ。
そんなわけで、防犯カメラの死角に止められているという自動車のすぐ近くまでやってきた2人であったが、そこでオリアナは急に向きを変えた。カーナビからは、男の声で英語が聞こえてくる。
「連絡が入ったわ。奴らの1人がヘマをしたみたい!」
「うわっと!? 何だ、、『
「今のは『王室派』から干渉を受けているロンドン市警よ。なんか、近くにある酒場でトラブった馬鹿がいるようね!」
赤と青のランプを光らせているパトカーの間を、法定速度を明らかに無視したオリアナのオープンカーが爆走する。ウインカーもつけずに交差点を曲がったところで、その視界に『変なもの』が入ってきた。
具体的には、煉瓦の歩道の上を、分厚いジャケットにミニスカートをはいた小柄な女の子が、なぜか3つものカバンを抱えながら突っ走っていた。
「これでした! くっそー、ちょっと持ち上げて重さを確かめればすぐに分かったのにッ!」
早口の英語は当麻には理解できないが、とにかく少女は2つのカバンを路上に放り捨て、残る1つのカバンを手に更に走る。だが、その様子だとか、深夜の道に少女が歩いていることよりも目を引くものがあった。
槍だ。
厳密には、1.5メートルほどの金属でできた、部分部分で太さを変えることで長さを短くすることのできるシャフトである。その先端には、40センチほどの刃が4本、人間の手から1本指をなくしたような感じで取り付けてあった。
「何だありゃ……?」
「何らかの霊装なんでしょう。明らかに怪しさ爆発。あれが『新たなる光』の一員で間違いなさそうね。まったく、魔術師は自分が変な格好をしているって自覚がないのかしら」
その言葉を聞いた当麻は無言でオリアナの全身を見たが、彼女はそのことに気が付かない。それよりも、胸元から単語帳のような紙束を取り出すと、それを歯で噛み千切り、少女とすれ違いざまに路上へと放つ。
「人払いよ」
彼女が放ったカードは2つ。
1つは人払い。そしてもう1つには、黄色い文字で『Fire Symbol』と書かれていた。
オリアナの魔術『
ボゴッ! という爆炎が歩道で炸裂する。
爆発を確認したオリアナは、ハンドルを切ってほとんど勢いを殺さずにUターンした。その遠心力に体を揺さぶられながら、当麻は慌てて声を上げる。
「おっ、おい! ちょっとやりすぎじゃねえのか!?」
「いいえ、むしろまずそうよ!」
叫びながら、オリアナが運転席のドアを開け放ち、ほとんど転がるようにオープンカーから降りていく。すると、当麻の視界の外、ドアのすぐそばからジャッキン、という金属音が聞こえた。
かろうじて眼球だけを動かして見れば、例の少女がスカートから伸びている『尻尾』を従わせながら、その槍の先端を標的に向けていた。
「文句はないですよね?」
槍の鋭い先端が自動車のドアを貫通し、当麻に向かって突き刺さろうとする。
「オッ……ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」
当麻は車の構造を無視して、助手席のシートを踏みつけるとボンネットの上へと跳ぶ。跳んだその瞬間、槍の先端が当麻のバッシュの底を浅く切り裂いた感触が、足の裏から確かに伝わった。
だが、そのことを確かめる余裕もなく、当麻はボンネットからも飛び降りる。その背後から、グワッ! という妙な轟音が鳴った。
そう、例えるのであれば、車から何かの部品を力任せにむしり取ったような。
振り返れば、『槍』の先端にドアが刺さったまま、強引にそれを振り回していた。
当麻はとっさに、
彼女はその『槍』の先端に着いたドアを振り下ろす。ただし、当麻に、ではなく、オープンカーに向けて、だ。
正確には、その後部にある燃料タンク。
再び、爆音が鳴り響く。だが、それよりも驚くべき光景を、当麻は目にした。
本来なら四方八方に広がるはずの炎を。
少女の持つ槍の先端に取り付けられた、4本の刃が強引に『掴み取った』のだ。
爆炎の形状が変わる。辺の長さが最大で1メートルほどの、不自然な形状のブロック状の塊をしている。それを構えながら、彼女は地面にへたり込む当麻と笑いながら目を合わせていた。
思わずとっさに右手を掲げてしまう当麻であったが、彼女はその防御をかいくぐるような軌道で『槍』を振り回し、その先端にある炎をぶつけようとする。
その時、ボッ! という衝撃が、少女を横へと吹き飛ばした。
オリアナの魔術によってその体を吹き飛ばされた彼女であったが、それでもその手はしっかりと『槍』を掴んでいた。しかし、その先端にあった炎はあらぬ方向へとすっぽ抜け、空中で爆発を起こす。
そして、少女本人は魔術をその手に持った四角いカバンで受け止めており、その盾の奥から鋭い眼光を放つ。
ただし、
「おおぅぅぅああァァァあああああああああッ!? やっちゃった、思わずガードに使っちゃったけど、一番大事なのを盾にしちゃいましたー!」
当麻にネイティブな英語はさっぱりなのであるが、どうやら彼女は慌てているらしい。その様子を見て、当麻は左手の『硬化手袋』を少しはめ直しながら、オリアナに言った。
「おいオリアナ、よく分からんが、あのカバンが最重要アイテムらしい。女の子をぶっとばすとか気が進まなかったんだ。四角い鞄を集中砲火してボッコボコにしちまおうぜ」
「いいですとも。あれも霊装の一種なのだとしたら、あなたの右手で殴ってみるのも面白そうじゃない?」
そんな作戦会議を耳にした少女は、ビクリと肩を震わせた。
「よっ、よくぞこの短時間で私の弱点を見破りました! しかし、ここでやられるわけにはいかんのです! ベイロープに尻を握りつぶされないためにも、ここは戦略的撤退をさせていただきましょう。とうっ!」
一度、『尻尾』を振り子のように大きく動かすと、彼女は真上に跳ぶ。
当麻は思わず頭を上に向けるが、その視線の先では、少女が隣のビルの3階の窓を突き破ってその中へと入っていくところであった。オマケに、彼女は周囲に騒ぎが起こることを何も考えていないようだった。いや、分かっていて無視しているのだろう。オリアナが『人払い』をかけなければ、大騒ぎになって身動きが取れなくなっているところだ。
「くっそ……あんなの追えんのかよ!?」
当麻は毒づく。しかし、プロの魔術師であるオリアナは冷静に相手の行動と霊装を分析していた。
「そうでもないわ。建物の中や屋上を移動できると言っても、限度はあるもの」
建物は道路に沿って立てられるため、片側三車線、四車線のような一定以上の広さを持つ道路にぶつかってしまえば、建物から建物へと飛び移ることはできない。したがって、彼女は道路に沿って移動するしかないのだ。
また、彼女の『尻尾』はある種の猿などについているものと同じで、空中でバランスを取るためのもの。すなわち、彼女にとっても『一定以上の高さ』は怖いものであり、軽々と飛び移れるようなものではない、というわけだ。
するとその時、空から1枚の紙が下りてきた。オリアナはじっとそれを見つめる。
「……通信用霊装ね。イギリス清教のやつよ」
『俺だよ』
そこから駿斗の声が聞こえてきたので、当麻は少し肩の力を抜いた。
「駿斗。俺たちが遭遇した魔術師はとんでもない力を持つ槍みたいなのと、尻尾のような霊装を持っていた。そちらのほうはどうだ?」
『「天草式」からの連絡だと、向こうでは1人、イギリス清教の魔術的な施設を利用して捕まえたらしい。それで、あいつらが持っている霊装についても分かってきた』
その言葉に、2人ともに緊張が走る。
『あいつらの主武装の槍は、北欧神話に登場する、雷神トールが女巨人グリーズルから借りたものを分析、合体させて組み上げた霊装だそうだ』
ある時、悪戯の神ロキが巨人ゲイルロズルに捕まり、トールを雷槌ミョルニル・力帯・鉄の手袋を持たせずにゲイルロズルの元へ連れて来るという条件で解放される、という話があった。トールはゲイルロズルの屋敷へ向かう途中、ゲイルロズルを快く思っていないグリーズルから、彼女が所有していた、莫大な破壊力を生む鉄の棍棒、腕力を増強する力帯、鉄の手袋を貸してもらうことで、ゲイルロズルを倒すことができたという。
その逸話から生まれた霊装『鋼の手袋』。
『「新たなる光」のメンバーは、全員女の子らしいからな。
「……?」
「あらゆる天候を司る豊穣神、ってワケね」
タングリスニとタングニョースト、という山羊をトールは所有していた。トールの戦車を牽くのに使役されるだけでなく、トールによって食べられてしまうのだが、骨と皮さえ残っていれば、次の日にミョルニルを振るうことでよみがえらせることができたという。
そうした面から考えても、トールを『雷神』だけで終わらせるのは不自然なのだ。
『だから、危険なんだよ』
「危険?」
『あいつらの霊装はかなり高性能だ。それはすなわち、魔術師としてかなりの実力が存在するということになる。そしてあいつらは、北欧神話を中心とした霊装を用意している』
すなわち、と駿斗は一泊置いて言った。
『北欧神話は多神教だ。それはつまり、それだけ用意される可能性のある霊装の種類も多い。例えば、水中を素早く駆ける猪だとか、な』
そして、悪い予想ほどそれはよく当たるものだ。
駿斗が通信を取るしばらく前。
地下鉄の出入り口で、天草式十字凄教はベイロープを追い詰めていた。
「イギリス清教第零聖堂区『
「……もうここまでたどり着いたって訳?」
五和たち天草式十字凄教は、環境に溶け込むことを旨とする宗派だ。蛇の道は蛇と言うべきか、それゆえに、逆に不自然なものを見つけ出す術にも長けている。
「
「いいえ、結構」
ベイロープは、懐から取り出したものをイヤホンでもつけるかのように装着する。それは、真空管のようなものが左右に2本ずつつけられた、耳の後ろに引っ掛ける補聴器のような形状をしていた。
「このカバンを『起動』させるまで……捕まるつもりはないんだからっ!」
彼女は四角いカバンを蹴りあげ、それを片手でつかむ。それと同時に五和は槍を敵の右肩めがけて放つが、それは弁ロープの肩に下げてあった『包み』を破いて現れた『武器』に防がれた。
霊装『鋼の手袋』。
辺りにいた天草式が、一斉にその手に持った武器を構える。しかし、数十人の日本人に囲まれながら、それでもベイロープは不敵に笑っていた。
なぜなら、彼女たちにとっての『勝利』は『戦闘における勝利』ではなく、『逃走』にあるからだ。
振り回された見慣れない霊装に、思わず天草式が身構える中、彼女は今まで自身が背にしていたコンクリート製の壁を砕いた。
ベンロープは、瓦礫と共に地下鉄駅へとつながる階段へと急降下していく。
「五和!」
「分かってます! 建宮さんたちは全ての出入り口へ人員を配置してください!」
五和は建宮へとそう叫んだ後に、五和は階段へと飛び込んで一息に最下層へと下る。そして、着地と同時に懐へと手を伸ばした。
取り出したのは、1丁の拳銃。
発砲音が炸裂し、それに反応した人々が一気に姿を消していく。『人払い』よりも迅速に民間人を排除した彼女は、そのままベイロープを追う。
到着した時は、ちょうどベイロープが無人のホームから飛び降りようとしているところであった。どうやら、電車には乗らずに直接線路を走るつもりのようだ。
しかし、間に合わないことが分かったのであろう、彼女は攻撃をしかけてきた。
闘争から、速やかに戦闘へと移る。
巨大な看板を『槍』――『鋼の手袋』の先端でつかむと、それを勢いよく投げる。
しかし、それは五和には届かず、7本の斬撃によって裂かれた。見れば、いつの間にか彼女の周囲にはワイヤーが張り巡らされていた。
だが、しかし、ベイロープは自らの霊装の先端を床に刺し、思い切り掬い上げた。
大量の破片が、五和に向かって散弾となって襲い掛かる。
「っ!」
彼女は身をかがめてそれをやり過ごすが、その視線の先、『鋼の手袋』の先端がその形状を変えたことに気が付いた。
それは、何かを『掴んで』いる。
(空気中の――風? いや、粉塵を……ッ!?)
そして、それは五和へと『叩き付け』られた。
普通に考えれば、ただの粉塵だ。しかし、圧倒的な腕力によって増強されたその威力は、ドッパァァアアア! という轟音と共に彼女の体を吹き飛ばす。
回避しても、再び粉塵を掴み、繰り返される攻撃。そして、五和はその体を地面へと叩き付けられた。それでも、すぐに体勢を立て直すことができたのは、とっさに跳んで衝撃を殺したからであろう。
しかし、ベイロープは跳んだ。『鋼の手袋』の先に、大量の粉塵を凝縮させた状態で。
(ま、ずっ……ッ!? ただでさえ、腕力だけでも厄介だというのに……ッ!?)
その後、立て続けに打撃が叩き付けられ、五和は床へと倒された。