とある神谷の幻想創造 神の右席編   作:nozomu7

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傭兵の戦い

 10月18日。午前0時30分。

 

 第三王女ヴィリアンを助けるために、精鋭の騎士43名とそれらを束ねる騎士団長(ナイトリーダー)、そしてクーデターの首謀者であり、カーテナ=オリジナルを握るキャーリサを前にして、第三王女ヴィリアンを抱えながらウィリアム=オルウェルは立ちふさがった。

 

 かつて騎士になるはずだった、傭兵崩れのごろつき。その片手には、理論上なら50フィートの悪竜を斬り倒す大剣アスカロンを携えている。

 

 ウィリアムは、ただその剣をまっすぐに振り下ろした。

 

 

 

 それだけで、地面が爆発し、衝撃波が周囲を襲う。

 

 

 

 それと同時に発生した莫大な粉塵が、騎士たちの視界を遮った。また、それによってもたらされた衝撃で、屈強に訓練された軍馬さえも怯えのいななきを上げる。

 

「チッ!」

 

 敵の意図に気が付いた騎士団長が舌打ちし、その部下たちが爆発の中心地に矢を放った。しかし、粉塵が夜風に払われた後、そこには亀裂しか残っていない。

 

「なるほど。まず第一にヴィリアンの安全を考えたの。この場で乱戦となれば、まとめて死にかねないしな」

 

 第二王女キャーリサは、自分の軍馬を宥めながら呟いた。

 

 彼女は知っている。

 

 確かに、『二重聖人』であるウィリアム=オルウェルは、強力な戦力だ。しかし、その実力があれば、本来アスカロンなどという分かりやすい霊装は必要がない。この近くには水源も豊富であるのだから、彼が得意とするはずの水の魔術には事欠かないのだ。

 

 しかし、今は学園都市での戦いで手負いとなっており、満足に水を扱うことができない。だからこそ、彼は竜殺しの聖剣を用意する必要があった。

 

 だが……『ただの聖人』程度の実力であれば、今の騎士団長にも十分に退けられる。実際に、先ほど幻想創造(イマジンクリエイト)の少年が助けに入らなければ、神裂火織はあの場で騎士団長に撃破されていたはずだ。

 

(――今なら、殺せる。あの忌々しい傭兵を、我らの手で)

 

 キャーリサは、冷静に考えた上でそう結論付けた。

 

「いかがいたしましょう」

 

 騎士団長の問いかけに、キャーリサはつまらなさそうに息を吐いた。

 

「首を2つ持って来い。旧知の『敵』になるが、手を抜かないように」

「敵兵の知り合いなど、心当たりはありません」

 

 騎士団長はそれだけ言うと、軍馬には乗らず、直接闇の方へと足を向ける。

 

 敵は近い。

 

 この距離ならば、己の足で進んだ方が早く着く。

 

 

 

 

 

 駿斗とジミーは、何とかウィリアム=オルウェルと遭遇することに成功した。神裂は、ランシスを拘束したまま一度『天草式』と合流し、他の騎士たちから『清教派』の魔術師たちが逃げるための手伝いをすることになっている。

 

 神裂も反撃したいのは山々であったが、『全英大陸』の恩恵を受けた騎士団長の実力を目の当たりにして、この方が良い、と判断したのだった。

 

「ベイヤード、か」

 

 第三王女をその鞍に乗せた金属製の馬が走り去っていくのを見て、駿斗は呟いた。どうやら、魔術的なサーチをかいくぐるような造りをしているようだ。

 

 この傭兵が指定した行き先ならば、ヴィリアンを預けても大丈夫だろう、と駿斗は心の中で結論付ける。

 

「ウィリアム様」

 

 ジミーは、大剣アスカロンを担いだ傭兵に言葉をかけた。彼は『聖人』のような音速挙動ができないが、そもそも傭兵がヴィリアンを担いでいたためにそこまで速度は出ておらず、高速移動術式でギリギリ間に合った。

 

「このまま、ベイヤードの護衛をいたしましょうか」

「不要である。ベイヤードには、『必要悪の教会(ネセサリウス)』の隠れ家の座標がセットされている。カンタベリーの馬鹿な老人共と違い、実戦的な魔術師たちであるならば、第三王女が見捨てられることもないであろう」

 

 ベイヤードが見えなくなったところで、会話は止まった。その代わりに、3人の視線が一点に集まる。

 

「第三王女はそちらか」

 

 後ろから声をかけたのは、追いついてきた騎士団長だ。

 

「ウィリアム様……」

「貴様らは、『必要悪の教会』の魔術師と合流しろ」

 

 ウィリアムがぞんざいに命令したその言葉に、ジミーは一礼するとその場を去っていく。そして、駿斗はその場で地面を隆起させると、そこから何かを取り出した。

 

「『アスカロン』に取り付けるものだ。使うかどうかは、好きにしてくれ」

 

 魔力を流すだけで発動する、簡単な霊装だった。それを受け取ったウィリアムは、一度見てからその効果を理解すると、その柄に巻き付ける。

 

 それを確認した駿斗もまた、ジミーと同様に高速移動術式を発動するとその場から消えた。

 

「なぜ貴様がここで立ちふさがる。『神の右席』の一員である『後方のアックア』には、わが国の第三王女のために命を懸ける理由などないはずだが?」

 

 すると、傭兵は言葉ではなく行動で返事をした。

 

 その背後から爆音が鳴り響き、土砂が第三王女へ続く道を遮るとともに、ウィリアムの退路を断つ。大剣を裏返し、背の部分の根元近くにある鋭利かつ分厚いスパイクで、手近にあった巨大な岩を打ち飛ばしたのだ。

 

 驚く騎士たちとは対照的に、旧知の男だけは静かに頷いた。

 

「なるほど、自分がどこに存在する何者であっても、やるべきことは変わらない、か。実に貴様らしい考え方だな」

 

 40人ほどの騎士たちが、傭兵を中心に半径30メートルほどの円形で敵を囲い込む。その中心に立つ騎士団長に対して、ウィリアムはわずかに唇を動かした。

 

「……人死にが増えるであるな」

 

 その一言で周囲の騎士たちの殺気が膨らんだが、騎士団長だけは率直に頷いた。

 

「カーテナの力である程度増強しているとはいえ、貴様のレベルに付き合えるものはそう多くはいるまい」

 

 決闘だ、と騎士団長は言った。

 

「ここは本物の戦場である。お上品な貴族の礼儀作法に興味はない。本気でくるなら全員来い。無駄死にが嫌なら速やかに退け」

「心配はするな」

 

 軽い調子で言う騎士団長の片手には、3センチほどの刃幅を備えた一振りのロングソードがあった。軍馬に乗りながら振るうことを考えられた、長さが80センチほどのものだ。

 

 

 

「殺し合いという意味での、古い決闘だ」

 

 

 

 鋼の色に光るその表面が、赤黒いざらざらとしたもので覆われていき、そしてその表面からボゴッ! と泡立った。バスケットボールほどの大きさの赤い球体が、その表面を覆い尽くしていく。

 

 新たにできた剣は、元の剣の5倍近くにまで達していた。

 

 霊装フルンティング。

 

 巨人を仕留めた勇者ベオウルフが、その仇を取りに来た巨人の母親との戦いに備えてある国の廷臣から受け取ったと言われる魔剣だ。その剣は斬り伏せた敵の返り血によって鍛え上げられ、強敵を倒すごとにその強度と切れ味を増していったとされる。

 

 フルンティングを手にした騎士団長と、アスカロンを手にしたウィリアム=オルウェルが対峙する。同じ場所に立つことすら、彼らにとっては10年ぶりであった。

 

「貴様の10年がどれほどの実を結んだか、我が10年で試させてもらおう」

 

 それが合図となった。

 

 音は消えた。

 

 光は飛んだ。

 

 ただ、互いに正面から敵に突進し己の武器を叩き付ける。それだけの動作で、衝撃が周囲を襲った。そして、その衝撃が過ぎ去った後には、2人の姿は消えている。その場には他に40人弱の騎士がいたが、剣を交えることができたのはこの2人だけであった。他の騎士たちは、悲鳴を上げようが身をかがめようが、その衝撃波で地面にたたき伏せられるのみである。

 

 ウィリアムは強い。

 

 騎士団長は強い。

 

 剣と剣のぶつかり合いは、ただ純粋な剣術だけによるものではない。馬鹿正直に肉体だけを強化したところで、すぐに限界を迎えてしまう。あくまでもその本質は魔術。

 

 そして、そのような超音速下での戦闘には通常の速度とは異なり、常に何百、何千もの『弊害』が生じる。この世界ではコンマ1秒の遅れが命取りとなり、わずかに姿勢を崩すだけでも、大きな被害が発生する。それら弊害を全て魔術によって被害が生じる前に摘み取るのが、彼らの真髄なのだ。その難しさは、『聖人』である神裂が抜刀術という形で短期決戦を挑んでいることを考えれば分かるであろう。

 

 駿斗にしても、純粋な戦闘技術では彼らに劣る。駿斗の場合は『科学』及び『能力』という他の魔術師にはない特権を利用することにより、常に自動の安全装置を何重にもかけることで超音速の域に踏み込んでいるのである。駿斗が自動(オート)に頼っているところを、彼らは全て手動(マニュアル)でこなしているということだ。

 

 したがって、彼らの魔術のどれか1つでも妨害に成功すれば、間接的に術者を倒すこともできるであろうが……今ここで戦っている2人には当てはまらない。

 

 ウィリアムは『聖人』という生まれついての資質や、『神の右席』で磨き上げた術式群。

 

 騎士団長はカーテナと『全英大陸』、さらには騎士として効率化された魔術。

 

 魔術のキーとなるものは簡単に奪えるものではなく、そして数々の戦場で戦ってきた2人にとって、例え手足の1本や2本失ったところで魔術が暴走することはない。

 

「ふん……確かに、聖人としては優れた方だが……貴様の本領は発揮できていないようだな」

 

 剣を交えれば、それは分かる。

 

 彼が得意の『水』を使わずに、そして滑るような高速移動を使わないのを見れば、それは分かる。

 

「やはり、学園都市での敗北が尾を引いているのか」

 

 傭兵は答えずに、ただアスカロンを構えなおした。

 

「そうまでして、第三王女を守る理由があるのか」

 

 騎士団長は語る。

 

『軍事』と『人徳』。どちらが今のイギリスを守ることができるのかと聞かれれば、間違いなく『軍事』だ。別にカーテナが全てとまでは言わないが、有効な戦力であるのは事実。だから、今のイギリスのために『騎士派』はその政策を支持した。

 

 しかし、そこまで話してからウィリアムは返事を返した。

 

 失笑。

 

「言葉が多いな、わが友よ。そうやって、自分にも他人にも言い訳を重ねなければ、自らの手で剣を取って戦うこともできなくなったのであるか」

 

 応じる声はなかった。

 

 

 

 両者は、ただ上空で再び激突を起こす。

 

 

 

 あまりの脚力に、足場にした木が砕けた。

 

 空中で初撃が衝突し、その後2人がそのまま真下に落下していく。しかし、彼らは落下の間にも、武器の衝突により生まれた力で体を回転させ、様々な角度から次々に斬撃を繰り出し、剣を交わらせていた。

 

 再び拮抗。そして、それが終わる瞬間は、着地のその時。

 

 ドバッ! という轟音が炸裂するとともに、両者の体が爆心地から50メートルほど吹き飛ぶ。

 

 既に、戦闘の余波で多くの騎士が倒れた場所から、彼らは移動していた。ウィリアムの背は、すでに自らが退路を断つために土砂崩れを起こした、幅数百メートルに広がるその斜面に触れそうになっている。

 

 ウィリアムはこれ以上下がることはできない。物理的な意味ではなく、この先に騎士団長を行かせるという事は、第三王女とつながるルートを明け渡すことと同義であるからだ。

 

 ウィリアムは一度その大剣を掴み直し、新たに取り付けた霊装に軽く触れてその調子を確かめると、これからの衝突に備え、体重を前に傾けた。

 

「怒れる理由は第三王女か。戦場で多くの人間を『敵』と定めて屠ってきた我々が、今更そんな理由で剣を取って何になる!」

「軽いな、上っ面の言葉では軽すぎるのである!」

「ふん。戦場に立つ者でも、降伏勧告に従うような人物まで斬るのは気に食わんとでも言うつもりか! 貴様らしいと言えばそれまでだがな!」

 

 両者の剣が衝突し、爆音と衝撃をまき散らす。

 

(……恐らくこの傭兵は軍事的、政治的な理由など考えずに戦っている。第三王女が一国の姫であるか否かすら、こいつの前では意味をなさない)

 

 その涙の理由を変える者(Flere210)

 

 掲げる魔法名の通り、冷たい涙を暖かい涙へと変換することこそが、武器を取る理由なのだから。

 

 両者の斬撃が、一時的に止んだ。互いの目が、互いの武器を見据える。

 

 ウィリアムが握るのは、霊装アスカロン。16世紀末の作家が、聖ジョージの伝説を元に紡いだ物語に登場する聖剣を元に、本物の魔術師が手掛けた『理論上では全長50フィート級の悪竜を殺す性能を持つ』剣。

 

 各々の部位は角度や厚みが調整され、斧、スパイク、ワイヤーまで備え付けられたそれらは、全て竜の鱗、肉、骨、筋、腱、牙、爪、翼、脂肪、内臓、血管、神経……といった部位を切り裂く。正真正銘、『これ1本で悪竜の全てを切断する』ための剣である。

 

 一方で、騎士団長の手にあるのは霊装フルンティング。彼の場合、『返り血』を『天使の力(テレズマ)』と対応させ、大量に圧縮封入することで破壊力を増している。また、カーテナとフルンティングが英国を象徴する剣であることから、イギリス国内において『力を制御する能力』を増強させているのだ。

 

(並の聖人を上回る天使の力(テレズマ)をどのように運用しているかと思っていたが……剣と国家に命を預けるとは、相変わらず騎士のセオリーに忠実な男である)

 

 しかし、騎士団長の次の攻撃は異なっていた。

 

 

「惜しい。一生で一度の勝負なら、万全の貴様と戦って見たかったよ」

 

 

 騎士団長は一歩も動かずにその場で剣を振るった。しかし、明らかに剣の間合いから外れた場所に立っているはずの左肩を、5センチほど斬撃が切り裂いた。

 

 10メートルほどのその間合いを、騎士団長が動いた形跡はない。

 

 再び赤黒い剣が振るわれる。

 

 不可視の斬撃に対して、しかしウィリアムは素早く動いた。身をかがめ、後ろへと飛び、腕を振るって剣でそれを受け止める。

 

「『射程距離』に細工を施したところで、安易に私を殺せるとは思っていないのであるな」

「……これも早々に勘付かれたか。相変わらず、憎らしいほど必要なこと以外は口にしない男だ」

 

 剣の個性、そのパターン。

 

 騎士団長が扱っているのは、それだ。

 

 フランスの聖剣デュランダルやエクスカリバーなど、何でも切り裂く『切断威力』。

 

 絶大な破壊力を生み出す『武具重量』。

 

 ケルトのアロンダイトなど、絶対に破壊されない『耐久硬度』。

 

 何物にも追いつけない『移動速度』。

 

 アスカロンやバルムンクなど、特定の怪物を殺す性質を持つ『専門用途』。

 

 北欧のティルヴィングやフレイの剣など、ひとりでに動いて急所へ向かう『的確精度』。

 

 そして……主神の槍(グングニル)雷神の槌(ミョルニル)空飛ぶ剣(フラガラッハ)貫通の槍(ブリューナク)など、武器の間合いというものを無視する『射程距離』。

 

 そして、それを可能にするものは……

 

「ふっ!」

 

 再び真横からこめかみにむけられた攻撃を、ウィリアムはアスカロンで弾き飛ばした。それは、糸鋸のようにはられたワイヤーに当たり、手近な木の幹に突き刺さる。わずか数ミリの、赤黒い錆のような刃だ。

 

「剣の欠片だよ」

 

 あっさりと、騎士団長はトリックを開示した。

 

 優れた武器の中には、欠片となってもその力を誇示するものがある。実際、シャルルマーニュの王が所持していた剣ジョワユーズには、聖槍の破片がその柄頭に組み込まれていた。

 

 剣の間合いを無視したその武器に対し、ウィリアムのアスカロンが輝きを放った。

 

 様々な色に変化するそれは、『どこの武器を使うのか』によってその輝きを変える。斧のような刃なら赤、剃刀のような刃なら青、缶切り上のスパイクならば緑、糸鋸的なワイヤーならば黄……といったように、その時使用する刃だけに魔力を集中させ、その瞬間に最大限の破壊力を持つようにリアルタイムで調整がされるのである。

 

 そして、その柄には常に青色の輝きを放つものがあった。駿斗が渡した、騎士団長にも用途不明な霊装だ。恐らくは、駿斗とウィリアムにしか分からないように細工がなされているのであろう。

 

「可能なら、使わずに済ませられたらと思ったのであるがな」

「らしくないな。悪竜が示すものに遠慮でもしているのか」

 

 十字教において、悪竜が示す意味は1つではない。

 

 例えば、異国、異民族からの侵攻勢力。

 

 そして、悪に染まった堕天使。

 

 

 

 

 

「……ウィリアム様と騎士団長の戦闘が始まったようですね」

 

 彼らは音速に匹敵する速さでその場を後にしたものの、ある程度の距離で一度立ち止まった。すると、後ろからは爆音が響いていることにようやく気が付く。いくら天使の力で聴力を強化しようが、音より速く動いている以上、耳に届かない音波は聞こえないのであった。

 

「勝てる見込みは?」

「一筋縄ではいかない相手でしょうが、ウィリアム様なら」

 

 ジミーが彼に向ける信頼と尊敬心は、並大抵のものではなさそうだった。

 

「お前らの予定は?」

「『必要悪の教会』の魔術師たちと合流します」

「じゃあ、途中までは一緒か。とりあえず、当麻と連絡を取るかな……なんにしても、インデックスをどうにかして取り戻さないと」

 

 彼女はクーデター発生時にキャーリサや騎士団長と行動を共にしていたはずだ。

 

 しかし、そのために必要なのは恐らく……その護衛をしている騎士たちを蹴散らすことであろう。

 

「俺単独で倒してもいいけどなあ……下手に戦闘に入ることはできないし」

 

 戦闘になれば、一番危険が及ぶのはインデックス本人だ。彼女も強制詠唱(スペルインターセプト)などの対魔術師の技術は持っているものの、詠唱よりも武器による戦闘をメインにした騎士たち、それも多くの人間が相手ではあまり護身もできないだろう。そもそも、あの場所にいた時点で、そのようなことに対しては完全に対策がとられていると考えるべきだ。

 

「じゃあ……とりあえず、幻想千眼(サウザンズアイ)

 

 駿斗が、懐から取り出した幻想核杖(イマジン・コアロッド)に天使の力を通す。術式が発動し、駿斗の目に大量の情報が流れ込んできた。

 

 捜すのは、インデックスの魔力と、当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)だ。その距離をはかり、まずは近い方から優先する。

 

(……やはり、近いのはインデックスか)

 

 しかし、馬車の形をした霊装に入れられている彼女の近くには、騎士たちが警戒のためについているようだ。まあ、彼女の10万3000冊の知識を用いれば、この形成が逆転する可能性もあるのだから、無理もないであろう。

 

「あっちだ。行けるか」

「当然です」

 

 ジミーを引き連れ、彼らは再び高速で移動する。

 

 すると、その途中でそう言えば、と駿斗が切り出した。

 

「なあ、どうしてお前らはイギリスに来たんだ? とりあえず、敵意がなさそうだったから、協力してもらっているけど」

「ウィリアム様は『騒乱の元凶を絶つ』とおっしゃいました」

 

 ジミーは、そう話し始めた。

 

 その通りである。彼らは『騒乱の元凶』だった当麻の右手と駿斗の肉体を粉砕するために、学園都市に乗り込んできたのだから。

 

「しかし、親玉があなたたちを狙うということこそが元凶であり、あなたたちは真の元凶に寄り添う付属品に過ぎないと判断されたのです」

「真の元凶……?」

 

 駿斗が眉をひそめて尋ね返すと、ジミーは説明してくれた。

 

『神の右席』は、駿斗やイギリス清教が予測しているように『前方』『左方』『後方』『右方』の4人が存在し、そしてそれぞれが『神の火(ウリエル)・風・黄』『神の薬(ラファエル)・土・緑』『神の力(ガブリエル)・水・青』『神如き者(ミカエル)・火・赤』に対応している。

 

 そして、残るただ1人の男こそが、ローマ正教とロシア成教を束ねている。その男の名は『右方のフィアンマ』。

 

 フィアンマは、自分の野望のために『禁書目録(インデックス)』の知識と当麻の右腕『幻想殺し(イマジンブレイカー)』、そして駿斗の肉体『幻想創造(イマジンクリエイト)』を狙っているらしい。

 

 しかしその前にクーデターが発生してしまったため、ウィリアムたちはフィアンマの行動に歯止めをかけるために、この諍いに参戦してきた。

 

「じゃあ、とりあえず、目的は一致しているということで大丈夫なんだな。じゃあ、まずはインデックスのところまでよろしく頼むぜ」

「ええ。必ずや、この騒乱を収めましょう」

 

 ジミーが自身の霊装に天使の力を通し、そして駿斗は敵を重力で引き寄せた。

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