転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「うう……こんなの悲しすぎるよ……」
彼女はちょうど「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」を全巻読み終えた後だった。
そしてすぐにそのままアニメを新旧合わせてぶっ通しで寝る間も惜しんで見た。
しばらく竜の紋章がチカチカと頭から離れなかった。
主人公のダイくん。まだ幼い少年なんだけど、魔王の意思から解放された心優しいモンスターたちが暮らす島デルムリン島で長老ブラスとともに日々を過ごしていたの。
なんでこんなことになってんのかって言ったら、産まれたばかりの時に両親から引き離されて流刑にされちゃったから。
まずこれだけでも波瀾万丈すぎる人生。
そんでどうしてそんな目に遭ったのかっていうのも、お父さんが余りにも強い竜の騎士っていう人間じゃない存在だったのをいいことに姫様のお母さんのいる国の王様が彼を魔物と断じてお姫様と引き離して処刑しようとしたから。
その王様ってのも散々今まで助けてもらった恩とか全部忘れてこの対応だかんね。初見で読んだ時流石にキレたよ私は。
しかもそれでお母さんはお父さんを庇って死ぬし、それをボロクソ言われたことでお父さんは人間を憎んで魔王軍に入っちゃうしでもう色々と救われないの。
そんなダイ君自身も旅をする中でお父さんみたいに「人間じゃない」とか色々怖がられたりしちゃって、最終的には大魔王をやっつけて地上の世界を去るの。
こんな報われない話ってある??
ダイくんが何したっていうの?
いやダイくんに限らずさ。ヒュンケルとかヒュンケルとかヒュンケルのこととか色々あるんだけどね。
やるせないすれ違いや報われない話が多いのだ。
それでも全然悲しげな感じとかじゃなくて要所要所は結局ハッピーエンドを迎えるんだけど……それにしてもあんまりだ。
なんとかして私が結末を変えてあげたい〜!!
なーんて思って日々二次創作を書いたり時々原作を見返してあれやこれや妄想を膨らませている。
そんなある日のこと。
お日様がとても眩しくて「まるでソアラそのものだな……フフッ」とかいって一人バランごっこを気持ち悪い感じでやってたら突然信号無視してきたトラックが突っ込んできて死んだ。
享年18歳。
花も盛りの女子高生である。
むしろお葬式の時に菊やお花で埋め尽くされて悪い意味で花盛りになっちゃったけど。
「いや、こんなことある?!!」
目を覚ました私の口からそんな言葉が飛び出した。
すると自分が今明らかに地球らしからぬ場所にいることに気がついた。
まず足元が綿菓子のように白い雲だし、空は綺麗だし、目の前には白い髭を蓄えた偉そうな人がいるし。
「おお、やっと目を覚ましてくれたか」
「だっ、誰!?!」
「わし、神じゃ」
人生で聞いた唐突に始まる信じられない自己紹介ベストテン第1位を更新した瞬間だった。
ホワッツ?? かみ??え、あの柔らかかったり白かったりして色んなことに使える――
「それは〝紙〟じゃ」
「え、じゃあ頭とかに生えてきて」
「それは〝髪〟じゃ。お主わしとここで漫才でもやる気か??」
いい加減本題に入りたくてうずうずしている神様を前に私はとりあえずふざけるのを一旦やめて正座した。
わー、正座とか何年振りだろ。足元柔らか。
「こほん。えーお主は死にました。はい」
「いやはいじゃないが」
あなたはしにました。
こんなセリフドラクエやってる時くらいしか聞かないだろう。
なんだ?じゃあ今私は返事がないただのしかばねになっているようだと??
「うむ。そして誠に誠に本当に申し訳ないのだが……実はそれ、神のやらかしたうっかり手違いなのよね」
「はい??」
いまいち状況がまったく飲み込めない私は今何を聞いても「はい??」か「は??」しか出てこなかった。
それを聞くと神様は大変申し訳なさそうに無い髪で丸見えの頭皮をこちらに向けて謝罪してきた。
「いやーっ本当にすまん。あそこで死ぬのはお主じゃなかったんじゃが……ほんとちょっとなんじゃよ??ちょっとした手違いでこんな……その……ははは」
いやそんなちょっと書類手続き間違えたみたいなノリで言われても。
こちとら貴重な一生終えちゃったんだけど。ゼンゼン笑い事じゃないんだけど。
「それでの〜……詫びと言ってはなんじゃが……」
「な、なんでしょう」
お。神さまめ。誠意を見せてくれるようだな。
これは期待できるぞ。金か??それともご飯か??
「『冒険王ビィト』の全巻詰め合わせセットでどうじゃろうか?」
「ブラッディースクライドォオオオ!!!」
ぶすりと私の日本の指が神の眼球を貫いた。
「ぎゃあああ!!三条先生ごめんなさいいい!!!」
「あと稲田先生にもな……あの世で謝罪するんだな」
「いや何急にめちゃくちゃ強気できたの?!!わし心外!!」
痛そうに両目を押さえながら神は泣いていた。
普段の私なら『それ、まさに神の涙だねwww』とかいって小粋なジョークを挟むところだが、正直言って今すぐこいつをおおばさみ(攻撃力+48)で挟みたい。いや刻みたい。
「ま、待て!わかったわしが悪かった!だから早まるな!そ、そうじゃお主を今から転生させてやろう!!ど、どうじゃ??」
「転生だぁあああ〜??それって例の流行りの異世界転生ってヤツですか??」
「う、うむそうじゃ。あ、そうそうなんならお主が大好きな『ダイの大冒険』の世界に転生させてやっても……」
「行きます。行きます今すぐ行きます」
「うおっすごい食いついてきたな……!」
私は神にドン引きされながらも身を乗り出してかぶりついた。
だってあの夢にまで見たダイ大の世界だよ??
ここで行かなきゃ女が廃るぜ
「よしわかった。では今からお主を送る。あと色々すまん事をしたんでお主にはちょっとした贈り物を与えて送ることにする」
「贈り物??」
「ま、行ってみればわかる。では達者でなーっ!!」
そうして私は光の渦に飲み込まれ、夢にまで見た『ダイの大冒険』の世界に転生していったのだ。