転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「……ええいっ!くそ!なぜだ……なぜ何も出ぬ!デルパッ!デルパァァア!!」
間もなく儀式が始まろうとするその時、バロンは苛立っていた。
どうやっても魔法の筒から仕込んでいた魔のサソリが出てこないのだ。
計画の実行に支障が出ると見て、彼は怒りのあまり歯軋りをさせていた。
(やーっぱりアイツ悪者だったかー)
それを遠目から観察していたのはサナだった。
彼女はゆっくりとバロンに近づいて背中をポンと叩いた。
「うひゃあっ?!!」
およそ青年男性が上げたものとは思えないほど奇妙奇天烈な悲鳴を上げた。
「よっす」
「な、なんだ何かと思えば勇者サナさまか……全くいけないな。人を驚かせるような真似を……」
バロンは滝のような大汗を流しながら、手に持ってる筒を背中に隠した。
この世界の人間の悪党って、なんかこー小物っほいのが多いよな〜
まぁひょっとしたらキラーマシーンに乗る前だから悪意とかないのかもしれないけど。
「バロンさんこんなところでな〜にしてるの〜??」
「は、はへっ、は……は、花火の準備をしていたんですよほ、ほらこれをこうしてどーんっと……ね?」
賢者が即興で思いついたにしては少々苦しい言い訳だったが、この世界の12歳を騙すには十分な嘘なのだろうか。
一瞬だが私は凍てついた視線を彼に向けて突っかかってみたが、すぐに辞めて大穴に戻った。
「じゃ、後ろの警備は任せましたよバロンさん。くれぐれも国家転覆とか狙うような危険な輩には気をつけてくださいね〜」
「は、はいっ!?ってえっ?!!」
動揺し慌てふためくバロンを置いて私はダイくんたちの元に走り去っていった。
あの様子だとどうやらサソリの補充もないらしい。
いくら怪物島とはいえ流石に白昼から表立って暗殺を目論むほどバロンも馬鹿ではない。
必ずなにか偶然を装ってやってくるはず。
そして最後の最後に追い詰められた彼が本気を出してキラーマシーン出撃……ってのが大方予想の
私は彼の姿が見えなくなった後も嗅覚を研ぎ澄ませることで、彼らの声を聞くことができた。
案の定悔しがって地面に筒を叩きつけた彼は、早速テムジンらと連絡を取り合っていた。
「な、なんじゃと!!魔のサソリが出ない?!」
「も、申し訳ありませんテムジンさま。しかし何度試してもこの様で――」
「ええいっもう良いわたわけ者!!ったくキサマはいつもそうじゃな!肝心な時に何一つ役に立たんクズじゃ!!」
お〜お〜。
転覆組さんがたとうとう仲間割れを始めちゃったよー。
まあ人間追い詰められた時に自分の本性が曝け出されるっていうもんな〜
伊達にパプニカで賢者やってるだけあってまぁ長いこと
特にニセ勇者の時と違って彼らは自称でもなんでもなくマジモンの王族だかんね。
ともあれ目先の利益に目が眩み、果たすべき義務を放棄し主君に牙向いた時点でお終いよ。
あとは勝手にボロを出して捕まってくれるだろう。
地の底に辿り着くとそこは溶岩に囲まれた熱気の立ち込める空間だった。
こんなあまりにも危険な地帯で儀式を行なっていたかつてのパプニカの賢者たちはハッキリ言ってすごすぎる。
「我がパプニカを育む母なる大地の神よ。我は賢者の門を潜りてパプニカの使たらんとする者なり。我が進む道に御神の健やかなる祝福を――与え給え」
小難しい詠唱を言い淀むことも間違えることもなくレオナは全て言い切った。
彼女の全身に光が満ち足りて、やがて儀式を完遂することができた。
儀式を終えた私たちを待っていたのはテムジンたち一行だった。
しかし彼らは帰りの船の前に立ちはだかり、レオナと私たちに武器を向けていた。
「これは一体何の真似ですか!」
「レオナ姫……申し訳ないが、貴女にはここで死んでもらわねば困るのでな……!!」
テムジンが合図すると海の向こう側から炎を上げ始め、やがてゆっくりと一つ目の機械が姿を現した。
「あ、あれはキラーマシーン!!魔王が勇者を殺すために作り上げた殺人機械……魔王が死んだ今なぜ動く……!!」
その赤い眼光の奥には某ロボットアニメのように無数の糸を接続しているバロンがいた。
「バ、バロン!?バロンの魔法力で動かしていたのか……!」
「そうだ。魔王の魔法力で操るガラクタ同然のキラーマシーンを手に入れて、人間意思で自在にその威力を振るえるように改造したのだ!!」
「なんということをするのだ。そんなものを蘇らせたら恐ろしいことになる……!!」
「ほざけ!!今のお前は地上最強だ。さぁ蹴散らせバロン!!」
その姿にかつての穏やかで優しそうな司教の面影はどこにもなく、ガサツで邪悪な野蛮人そのものと化していた。
テムジンの命を受け、キラーマシーンの瞳が紅く輝いた。
島のモンスターたちは彼に対抗せんと集まり、攻撃を繰り出したが殺戮兵の刀で切り刻まれてしまった。
「みんな下がっておれ!!火炎呪文……メラミ!!」
ブラスじいちゃんが杖の先から火炎を放射しキラーマシーンを火の渦で包み込んだ。
「すげぇやじいちゃん……!!」
その威力にダイも感心していた。
本物の戦いでブラスじいちゃんの魔法を拝むのはこれが初めてだったのだ。
実際今じいちゃんは明確な闘志を持って敵を討つべく呪文を放っている。
これこそがじいちゃんの本気モードなわけだ。迫力も大違いだ。
しかしキラーマシーンは獄炎にその身を灼かれながらも、中も外も目立った外傷はどこにもなかった。
「フハハハ!バカめ。このキラーマシーンは勇者を抹殺するために作られたのだ。貴様程度の魔力など、通用するかぁ!!」
キラーマシーンの鉄の刃がじいちゃん目掛けて襲いかかってきた。