転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
私たちは今、復活した魔王と戦うためにアバン先生の用意したヒジョ〜に厳しい〜特訓に励んでいた。
ちなみにあの後何故かまたガーゴイルが2匹やってきたので、ポップくんとダイくんが力を見せて概ね原作通りの展開と収束された。
しかし――
「だぁーもう!!サナの後じゃ何やっても霞んじゃうよ」
由緒正しき勇者の剣(古道具屋で買った10ゴールドの安物)を手渡され、紋章の力を一時的に解放しガーゴイルを真っ二つに叩き割ってみせたが、ダイくんはご不満の様子だった。
「えー……でもダイが先でも一緒だったと思うけどな〜……」
「その通りです。あなたたちの力に優劣なんてありません。ただできることが少しづつ違うだけですよ。もんのすご〜くでっかい巨人さんとこんなにもちっちゃい蟻さんとでは歩く歩幅も速度も全然違うのは当たり前です。けれど、『歩く』という行為の意味は同じものです。大事なのは人と比べることではなく、自分がどうしたいか――自分が何を成したか、ですよ」
「おおーっ素晴らしいです先生!!……ううっ私思わず感動して……」
「お、おやそんなに感動してくれたんですか……サナさん。意外と涙上戸なんスかね??」
アバン先生は困惑していたが、私は昔を思い出して男泣きせずにはいられなかった。
こんな良い先生もいなかったし、こんな良い親もいなかった。
多分アバン先生みたいなのが私の学校にいれば病む人もいなかったと思う。
めっちゃ熱心に向き合ってくれるんだろうな〜。
しかも体育だけじゃなくて何でもオールマイティーに教えてくれそう。
でもって家庭科だけめちゃくちゃ得意そう。
「そしてダイくん。あなたにもサナさんと同じように1週間で勇者になれるスペシャルハードコースをご用意させていただきます。厳しい修行になりますが、覚悟はよろしいですね?」
「はい!!」
威勢よく返事をするダイくんに兄弟子ポップくんは表情を引き攣らせていた。
(な、なんだよこの兄妹……!!先生の特訓はホントにムチャクチャハードなんだぞ?わかってんのか?!)
ダイくんと私の首根っこを掴んでポップくんがひそひそ話で囁いた。
「おい!やめとけって!!1週間で勇者になるなんて無茶だ!」
「ポップ。あなたも兄弟子なんですから、いつでも一緒に特訓に参加して良いんですからね?」
先生に言われるとポップはギクっと方を尖らせ「あはは、遠慮しときます」と小さく呟いた。
彼の勇気が発芽されるのは大分後の話になるのだ。
いくらメラゾーマを使えるほどの魔法使いとはいえ彼もまだ子供。
魔王襲撃といってもまだイマイチピンときてないのかもしれない。
いや、あるいは自分なんかではどうにもならないとわかっていて最初から諦めているのかもしれない。
そしてここから過酷な1週間が幕を開けていった。
転生前から運動神経ゼロで体育の成績も常に1をキープしていたが、転生後には元気に動き回れる身体と無限のスタミナを自負していた私だが、先生のウルトラスーパーハードな修行は「スタミナ?何それ美味しいの?」とでも言わんばかりに一瞬でそこらの余裕を追い詰めていくものだった。
他の漫画で例えて申し訳ないが、初期のドラゴンボールに出てくる亀仙人の修行と言うと最も分かりやすいだろうか。
私たちでいうと朝の4時だか5時だかにあたる早朝に先生は私たちを叩き起こし、寝ぼけ眼に目覚めの一発と巨大な大岩を押してきた。
「さっ。とりあえずサナさんはコレを引くか持つかしてこの島を10周してきてください。それが早く終わったら今度はうさぎ飛びでもう10周。そんでそれも早く終わったら今度は逆立ちで逆走してみてください」
私が顎外して唖然としたのが諸君らにお分かりいただけただろうか。
「マ、マジっすか……」
「マジです」
先生は何ら悪びれる気もなくそう言い放った。
力があるからこんな岩そうめんみたいなもんだぜ!!と思う方もいらっしゃるかもしれないが、砕くことと持ち運ぶことはまた別であり常にめちゃくちゃ重い重りをつけて走っているようなものだった。
当然すばやさなんてステータス概念があったら普段の1/10にまで落ち込んでいたことだろう。
「あ、そうそう。サナさんは魔法に明るいようですから一応先に断っておきますね。ルーラやトベルーラといった飛翔呪文の類で飛んでいくのは禁止ですから。ちゃーんと自分の両足を大地につけて走り切ってくださいね」
「げぇえええ…………」
ちなみにコレ、本番の特訓とかではなく朝のウォーミングアップなのだ。そりゃポップくんがあんな顔するわけだ。
なんとか10周とうさぎ飛びはクリアしたものの、昼までに目隠しには至らなかった。
というかもうヘトヘトだった。
ちなみにダイくんにも似たようなメニューが課されたらしく、こっちも隣で大の字になって寝ていた。
「ふむ……ま、初日はこんなモンっスかね?じゃみなさんお食事」
「おおっ……」
「――の前にお勉強といきましょうか!」
「ヒーッ!!」
思わずゴメちゃんみたいな声で悲鳴を上げそうになった。
先生はまさにスパルタなんてもんじゃないくらいのスーパースパルタ人だった。
そして多分この上にマトリフさんがいるんだろうな……
力関係でいうとマトリフさん>>>>スーパースパルタ人>ブラスじいちゃんってところだ。
その三者どちらも「愛」があるっていうのだけはせめてもの救いだが。