転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「アバン流刀殺法には大地を斬る剣、海を斬る剣そして空を斬る剣この三つの技があります。パワーの大地斬に比べ海を斬る海破斬には…………」
既にスーパーハードな前座を終えて疲れ切って回らない頭の私たちに対しても、先生は遠慮なく教鞭を振るった。
拳法の型からモンスターのこと、アバン流刀殺法の極意などこれでもかと言わんばかりに先生の偉大な知識が詰まっていた。
……だが。いかんせんすでにそれを聞けるだけの体力がない。
午前だけでも岩運び、徒手空拳と空手の組み合いに加えて更に基礎体力訓練までこなさなければならなかったのだ。
通常の起床時間になり起きてきたポップが授業に参加し、後ろでひそひそと囁いた。
「だからスペシャルハードコースなんてやめとけばよかったんだよ。ったく。大丈夫かよ」
「だ、大丈夫ですよポップさん……」
「ポップでいいよサナ。それよりダイのやつなんかほとんど寝かかってるじゃねーか」
見るとダイくんは既に半分眠りについていた。
まぁ無理もない。私も気を抜くとバターっと倒れてしまいそうになるのだ。
「今からでもやめにしねぇか?……正直言わせてもらうと身が保たねえってこんな」
ポップくんの話を遮るように先生からチョークの矢が飛び交った。
「これ、そこ。ちゃんと理解していますか??」
「え、あはいもちろん!!」
「……それとポップ。あなたが人の修行に口出しすべきではありません。もしどうしてもというならサナさんたちと一緒に修行してその上で講釈を垂れるべきですね」
先生がキラリとメガネを光らせるとポップくんは口笛を吹きながらどこかへ消えていってしまった。
これには先生も「全くも〜」とやれやれ顔を浮かべるしかなかった。
次に3弟子交えた魔法の特訓へと突入した。
まずは兄弟子のポップくんがトップバッターを飾ってくれた。
「氷結呪文――ヒャダルコ!!」
押し寄せる波を氷結魔法で凍つかせ、カチカチに固めてしまった。
「すげぇ。やっぱポップの魔法ってすげぇな!」
「へっ。そりゃそうさ。なんたって俺はもう1年以上先生の元で修行してるんだぜ?年季が違うよ年季が」
ポップくんが自信満々に語ると、アバン先生が波をコンと小さくごついた。
するとそこから氷にヒビが入り、割れて水が溢れ出した。
「あ……」
「いつもながら詰めが甘いですねぇ〜!魔法は
出た先生の名言(?)。
「コンセン……なんだって??」
横文字並びでさっぱりなダイくんに先生が補足した。
「精神を集中する力のことです。さ、ダイくん。君の番ですよ」
「は、はい!よぉーし……」
ダイくんは両手に力を込めて氷結呪文ヒャドを唱えようとした。
しかし出てきたのは小指サイズのちっちゃな氷の塊であり、波に飲み込まれたダイくんがワカメと潮を浴びていた。
「魔法は……望み薄ですかね……」
出来上がった極小サイズの氷を眺めて先生がしかめっ面で言った。
「さ、では続いて剣術の特訓ですが――」
「ちょっと待ってよ先生。サナのは見てかなくていいの?」
ダイくんが私を指差した。
「魔法に関して私がサナさんにどうこう教える必要もないとは思いますが………ま、そうですね。それじゃついでですしやってみちゃってください」
「はい!」
よーし。今度は張り切りすぎないように……
まずは適当にメラとヒャドでも交互に放ってみせるか。
「はあっ!メラ!ヒャド!!」
「おおっ!!」
修行歴1年先輩のポップくんもそれを見て感心していた。
先生の目も鋭いものになった。
(なるほど……左右で相反する特性を持つ魔法を交互に切り替えながらの発動……姫から事前に聞かされてはいましたが、複数の呪文を操るセンスと魔法力はやはり大したものがありますね……)
「よーし、このまま色々やっちゃうぞー!!」
なんてしてたら突然メラとヒャドの魔法力がごっちゃになってしまい、思いもよらぬ一本の光の矢が錬成されてしまった。
「あ、あれ…………」
「す、すげぇ!!メラとヒャドの呪文を合体させちまいやがった!!」
それを見た私は冷や汗をかき始めた。
その場で先生と私だけが事の重大さに気がついていた。
あれこれってもしかしてアレですよね。
メラがヒャドしてアローするあれですよね。
偉大なる大魔道士マトリフさんの生み出したっていうアレですよね??
「サナさん!!それを放ってはいけません!!それはとても危険な魔法です!!」
先生がここ一番の大きな声で必死に叫んだ。
やっぱりね。これ
すぐさま私は呪文を解除し治めてみせた。
先生がほっとため息をついた。
「あ、あの先生?どういうことですか。その……危険って」
「あぁ、いえいえ何でもありませんよおほほ」
先生は突然カマ口調でクネクネと不思議な踊りを踊ったが、とても誤魔化し切れるものではなかった。
まぁこんな序盤にメドローアぶっ放せちゃったらバランス崩壊もいいところだもんね。
先生だけはマトリフさんから聞いてて知ってたのか、その性質をよく理解していた。
極大消滅呪文メドローアとはその名の通り、当たったものを容赦なく消滅させてしまう恐ろしい呪文だ。
メラとヒャド、どちらも熱エネルギーを操る呪文であるから合成することができ、プラスとマイナスのエネルギーが反作用してうんとこすると消滅させるエネルギーが生まれるとかなんとかだったような。
アストロンすら無に帰してしまうのだから恐ろしい呪文だ。
といっても呪文の域を出ないため、普通にマホカンタを使えば跳ね返せる。
当たったら即消滅なのに反射とかおかしいだろって思うかもしれないがそこは我らがドラクエである。
そういった理屈を超えた概念があるのもまた一興だ。
しかし、これは扱いに気を付けなければならないぞ。
うっかりハドラーなんかに当てちゃったら色々ゲームセットになってしまう。