転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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空烈斬のトンデモ修行開始!?

 私とダイくんの1週間で勇者になれちゃうスペシャルハードコースも、いよいよ佳境にさしかかってきた。

 原作だと海破斬をマスターした時点でハドラーがやってきてしまい、修行は中断されてしまうのだがこの世界では私たちがものすごい速さで刀殺法を二つも覚えてしまうという異例な事態が発生してしまったので、今日は幻の空烈斬の特訓に取り組もうというのだ。

 

「ダイくん。それにサナさん。あなたたちは大地斬に海破斬、二つのアバン流刀殺法をこんなにも短期間でマスターしてしまいました。この勢いそのままに、鉄は熱いうちに打てと言います。今日はいよいよ『空』の技である空烈斬を覚えてもらいます」

 

「はい!!」

 

 隣のダイくんがもう待ち切れないという様子でうずうずしていた。

 

「しかし空烈斬はこれまでの技よりも極めて難易度は高いです。私がスペシャルハードコースを1週間という長さに設定したのもこのためです。何せパワーの大地斬、スピードの海破斬と異なり特訓で身体を鍛えるだけでは限界がありますからね」

 

 それを聞いてダイくんは驚いた。

 

「ど、どんな風にやるんですか?」

 

「いいですか、空烈斬は見えない相手や形なき邪悪な魔物を断ち切ることができる技です。同様のことは海破斬にも言えますが、あちらが剣の速度で斬撃の飛距離を伸ばしているのに対してこちらは闘気――すなわちオーラで相手に剣撃を与えているのです」

 

 そう。不定形を切り裂くだけなら海破斬でもいいじゃんとお思いの方もいるかもしれないが、それではゴーストや弱点を隠し持っている相手には通用しないのだ。

 

 案の定頭がこんがらがってメダパニ状態のダイくんに先生が言った。

 

「ま、小難しい理屈は置いておいて、どうやって習得するかについてご説明します。まずこの修行はコツを掴むための基礎特訓とそれを実戦で放つための応用特訓の2種類に分かれます。あなたたちに最初にやってもらうのはこの基礎の方です」

 

 先生が力を込めて唸ると左右方向に先生の姿が量産されていった。

 私はドラクエⅣのベロリンマンを思い出した。

 万全の状態で挑んだのに結局全部偽物掴まされて負けたことが記憶に強く残っている。

 

「せ、先生が増えた!?」

 

「おほほほ。これは四身分身拳。自分と全く同じ意思を持った超高度な残像みたいなもんですが、きちんと肉もあり、体温も再現されているものなので触れただけでは絶対に分かりません」

 

「あなたたちにはこの中から本物の私を探して空烈斬で切り裂いちゃってください」

 

「ただし。闇雲に偽物を斬りつけても無意味ですよ。失敗すればその分身からまた次の私が生まれてしまいますからね」

 

「一つミスをする毎にどんどん難易度が上昇していくわけです。なに本物を見分けるなんて簡単ですよ。それは心眼――すなわち心の眼で真実を見定めればいいのです」

 

「こ、心の眼で……!!」

 

 四人になった先生からそれぞれ移動付きで説明が入った。

 やばい。一体欲しい……!!

 どうしよう右見ても左見ても男前しかいないんだけど。

 先生の話がさっきから全然頭に入ってこない。

 

 ダイくんも目を回してしまっていた。

 それを加速させるべく、先生は四人で集まったりバラけたりダンスを踊ったりなんかして私たちの精神を巧みに撹乱していった。

 

 空烈斬よりそっちの技術の方がよっぽどスゴイのではなくて??!

 

「さっ、それでは修行開始です!!」

 

 そうして四人のアバン先生が全速力で島中を駆け巡っていった。

 

「くそー。心眼……心の眼なんてどうやって開けば良いんだよ」

 

 ダイくんも私もとても困惑していた。

 なんとなくそれっぽく目を瞑ってみたが、何かがハッキリと見えてくるわけじゃない。

 

「何をしてるんですか二人とも!!本物は私ですよ。さぁ早く!!」

 

 突然ヤシの木のてっぺんから先生の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「何を言ってるんですか!ダイくんサナさん。騙されてはいけません。本物はこの私です!!私を攻撃しなさい!!」

 

「えっ、えっ!?」

 

 しかしその対抗馬と言わんばかりに木々の隙間から先生が現れ、更になんと地面の底から先生が現れた。

 

「ふーっ……なんとか出られました……。さぁ二人とも私の手を取って!!その二人は偽物です!!」

 

「も、もう何が何だかわからねぇよ〜!!」

 

 完全に先生の術中にハメられていた。

 そのどれも本物同然の気迫を感じられた。

 

 あーあ。こん中に変身したベルドーサ混ぜて更に混乱させてぇな〜

 

 頭が混乱しすぎて段々私も意味不明な方向に頭がシフトしてきた。

 

 いかにも本物であると思わせるアバン先生軍団だったが、1人だけそこにいない事に気がつく。

 

「ねぇ待ってダイ。こんなに沢山の先生がいるのに1人だけいないなんておかしいわ。きっとどこかに隠れてこの様子を見ているのよ。それが本物だわ」

 

「そ、そうなのか?」

 

「何を言っているんですか。ここにいるこの私こそ本物ですよ」

 

 それっぽく振る舞っているものが多くいるが、空烈斬習得にあたって視覚や聴覚での情報はアテにするなという好例だった。

 今後こういう惑わしを行ってくる敵も現れてくるだろう。

 

 そういったものに振り回されず、真実のみを見極める眼が求められているのだ。

 

「心の眼で……」

 

 ダイくんも私も目を閉じ、精神を統一させた。

 気を探るなんてあまり意識してやったことはなかったが、私は必死で神経を研ぎ澄ませていた。

 

「ほいメダパニ弾!!」

 

 すると先生のうち一体が謎の玉を取り出して地上に投げつけた。

 

「げ、げほげほ!!な、なにこれ……!!」

 

「それはメダパニの呪法が込められた弾丸――名付けてメダパニ弾です」

 

 意識を集中させかけていた頃、無防備でモロ貰ってしまったので、神経がクラクラとしてきた。

 立ちくらみに近い感覚と吐き気を覚えたので、やむを得ず私はその場から立ち去った。

 

「実戦で敵が悠長に技を待っててくれる思ったら大間違いですよ」

 

「戦いとは常に真剣勝負です。技も決断も一瞬で――それがセオリーです」

 

「き、キビシ〜」

 

 吐き気と眩暈でふらふらになりながらも、後退してなんとか距離をとった。

 集まっていた先生はまたも分散し、元気よく走り出していってしまった。

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