転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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唸れ空烈斬!!

 先生のメダパニ弾から逃げていくうち、今度は私たちの方が息を潜めて無数の先生を見張っていた。

 空烈斬は心眼で相手の実態を見抜いて放つ技だ。

 四人の先生の中に確実に本物の闘気を放っている先生がいる。

 それを見定めて一撃をかまさなけらばならない。

 ミスったら増えちゃうから全身全霊がけだ。

 

「これだ……!!」

 

 目を閉じて現れた一瞬の光を見て、私が剣を構えようとした。

 

「こっちが先生だ!!」

 

「えっ?」

 

 しかしひと足先にダイくんが他の先生を狙って技を放った。

 

 飛び出した斬撃が先生を捉えると煙のように消滅してしまった。

 

「あ、あれ?」

 

「残念ハズレです。ペナルティとしてもう一人の私が現れます。ぬぅうううん……ぽい!」

 

 先生は消えた分身含めたさらに二人に分裂した。

 これで5人になってしまった。

 

「ご、ごめんサナ。たしかにあそこにいたと思ったんだけど……」

 

「大丈夫気にしないで。どれだけ偽物が増えても本物は一人だけだから。そいつを探して空烈斬をぶち込もう!!」

 

 私たちはこれまで以上に真剣にアバン先生たちを見極めていった。

 5人の分身は襲われなくなったことをいいことにそれぞれ好き放題していた。

 1人はポップくんの方で教鞭をとっているしエプロン姿の先生はじいちゃんの側で料理なんかしており、ヤシの木にハンモックをくくりつけて呑気に昼寝してる先生や、海で泳ぎながら魚を取っている先生、果ては瞑想して宙に浮かび上がっている先生までもいた。

 

「…………なんか先生楽しんでない?」

 

 ダイくんが思わず呟いた。

 私もそう思います。

 

「そ〜れアタッーク!」

 

「いやーんばかーん」

 

 砂浜のヤシの実でビーチバレーみたいな遊びをやってる先生たちを見て、私たちはぐっと殺意をこらえた。

 

「あれ……そういえばなんか先生増えてない?」

 

「おや……お気付きでしたか」

 

「うわぁあああっ!!」

 私たちの背後から更に先生が顔を出した。

 心臓に悪過ぎる。

 

 思わず斬りつけそうになった腕を必死で抑えて先生の方を見た。

 

「このまま睨めっこが続くばかりだと修行になりませんからね。本物を見つけて空烈斬を決めるまでにかかった時間に応じて私の偽物が次々と現れる手筈となっております」

 

「せ、先生はそんなに分身作って大変じゃないの??」

 

「良い質問ですねダイくん。さすがの私でも自分そっくりの分身をそう何体も作り出せるものではありません。なので、私の分身にその分身を作らせることで負担を軽減しているのです。ま、わかりやすく言えばねずみ算形式で増えていくって事っすね」

 

 今サラッと先生とんでもないこと言わなかったか?

 それってつまり倍々的に先生が増加していくってこと……??

 

 なんて戸惑っているうちにいつのまにか先生だけで1サッカーチーム作れそうなほど増え切っていた。

 

「ひーえーーっ!!」

 

「大丈夫です。サナさんがさっき言ってくれたじゃないですか。『どれだけ増えても本物の私は1人だけだから』って……さぁ、空烈斬を打ち込んでみちゃってください!!」

 

「こ、この鬼教師ーっ!!」

 

 目を閉じて集中しようにも、数十人に膨れ上がった先生がわたしたち目掛けて走り込んでくるもんだからちっとも集中なんてできない。

 しかもこの個体群スピードもアバン先生の丸コピだから無茶苦茶早い。そんで無茶苦茶早い。すごい怖い。

 

「先生ー次のレッスンをばぁああああっ!!何だありゃあ

ああ!!」

 

 講義を終えて出てきたポップくんもこの異様な光景に巻き込まれて悲鳴を上げていた。

 私たち3人は追われる先生から逃げるようにデルムリン島を駆け巡っていた。

 

「お、おい!!一体なにがどうしたらあんなことになるんだよっ!!」

 

「と、とにかく本物の先生を早く見つけて空烈斬を決めないと先生がどんどん増えていっちゃうんだ!!」

 

「なにぃー?!!んな無茶苦茶な!!」

 

 私たち以上に全速力で息を切らしながらポップくんは先頭を走り続けていた。

 勇者を目指すわけでもないのにこんなはちゃめちゃ特訓に巻き込んでしまい本当に申し訳ない……!!

 

「く、くそ……逃げ回ってるだけじゃ埒があかねぇぜ!!」

 

「ダ、ダメなの!!本物に攻撃しないとまた偽物が増えちゃうの!」

 

「な、何だって!?けど、んなこと言ったってこのままじゃ俺たち先生に轢かれちまうぜ!!」

 

 ポップくんの言うこともごもっともだった。

 このままだと私たちは確実にアバン先生の大群に押しつぶされてしまう。

 やるしかない。

 

 もう一度私は目を閉じ、全神経を研ぎ澄ませた。

 この島のどこかに必ず先生はいる――

 

 真っ暗な世界の中に、やがて音が消えていき、次に温度が消えていった。

 

 するとぼんやりとだが人の形の輪郭が浮かび上がってきた。

 それは走り出してくる先生とは逆の方向に……

 

「これが本物の先生だ。空烈斬!!」

 

 私は空を目掛けて闘気を集中させ、空烈斬を解き放った。

 雲が真っ二つになり、やがて空が薄らと人の形になっていった。

 

「お、お見事です……」

 

 なんと本物の先生が透明になって空中に浮遊していたのだ。

 

 斬りつけられた先生は海破斬の時と違い、攻撃をかわすにはかわせたのだが服部分にかけてビリっといかれてしまい服があられもないことになっていた。

 蹴飛ばされた木から落ちるカブトムシのように先生は地面に落下した。

 

 すると私たちに向かってきた先生の分身達は一斉に消えていった。

 

「あーっ!!先生空飛んで透明になってやがったんだ!!ずっけー!!そんなのいくら探しても見つけられねえや!」

 

 ダイくんが怒りの抗議をした。

 先生は頭から砂に埋まりながらモゴモゴと答えてくれた。

 

「これは姿を見えなくする魔法レムオルです。しかーし!!消えるのはあくまでも見た目だけで存在自体はそこにずっといるので決してズルではなーいっ!!……空烈斬の修行においてはそれまであなたたちが活用してきた『目』や『肉体』といったものは全く通用しません。いうならばそれらはあくまでもグッドな空烈斬を放つための基礎なのです。いくら斬撃や力を鍛えようと肝心のそれが当たらなければ意味はありません」

 

 逆さまになり埋まりながらも先生は威厳たっぷりに語り続けた。

 やがて「とぉ!」と砂浜から飛び出してきた。

 そのメガネと服には大量の砂が入り込んでしまっていた。

 

「まさに勇者コースの集大成とも言える技、それが空烈斬なのです!!……サナさん。よくぞここまでやり切りましたね。あなたは既に空烈斬のコツを掴んでいます。あとは応用修行さえこなせば勇者コースは無事完遂です。おめでとうございます」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 先生の労いの言葉を受けた後、私たちはじいちゃんの元に戻っていった。

 

「はーっもうクッタクタ……」

 

「ちぇー。すげえなサナは。とうとう空烈斬まで完成させちゃったんだから。でもどうやって見極めたんだ?」

 

「んー、なんか全身を目にするみたいな??私の全てを使って見極めてやるんだーっ!!てやったら出来ちゃったの」

 

「へーっ…………ちょっと参考にしてみるよありがとう」

 

 2人を見送った後、アバンは勢いよくぶっ倒れた。

 

「まーったく。弟子の前では良い格好しぃなんだから」

 

 その隣でポップがうちわで煽いでいた。

 

「い、いやー……ははは。流石にキツいっすね〜。……しかし、これでサナさんの方は特訓がほぼ完了しました。あとはダイくんを導けば完璧です」

 

「勇者って2人もいるんですか?1人育て切ったならそれで良いじゃないですか」

 

「ダメです。一度やると言い切ったからには必ず彼らを勇者にせねばなりません。……それに、もう間も無くでしょう」

 

「えっ?」

 

 アバンは立ち上がって海岸線の先を見ていた。

 その遥か向こうから感じる邪悪な気に、彼には覚えがあった。

 

(ハドラー……ここへ向かって来ているのだろう?だがお前の好きにはさせんぞ……!)

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