転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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魔王ハドラー降臨!!デルムリン島危機一髪

 空烈斬の特訓が様になってきた頃、いよいよ私は応用編である視覚を遮断しての奥義発動に取り組んでいた。

 敵の気配を正確に感じ取り、空烈斬を決めるための心の眼の修行だ。

 目隠しをした今の私には一切肉眼で物が見ない状態になってる。

 その状態から点在する光のポツポツ目掛けて私は空烈斬を放っていった。

 

「アバン流刀殺法空烈斬!!」

 

 聖なる真空の刃が周囲の闘気を貫いた。

 

「うむ。見事ですサナさん。あなたはとうとう完璧に空烈斬を物にしてしまいました。修行はここまででよろしいでしょう」

 

「やったぁ!」

 

「しかーし。今から私が言うことを心に留めて置いてくださいね。一度手にした力に決してあぐらをかいて慢心することのないように!力が強いものほど自身の力に溺れ、油断し、いざという時に決断を鈍らせます。今の力に満足することなく常に高め続けていってください。これからは自分自身との戦いです」

 

「はい!」

 

 力に溺れたものの末路――

 それはこの世界のラスボスがよく示していた。

 数多くの技を習得することができた私は、次の大魔王のようなことになる可能性が十分にあるのだ。気をつけなくては。

 

「また、アバン流刀殺法は確かに必殺の威力を誇る絶技ではありますが、むやみやたらにそうホイホイと使って良い代物ではありませんからね。突出した力は時に人の目を鋭くさせます。どんなにスゴイ技でも観察され覚えられて対策を立てられてしまえば意味はありません。ここぞという時――まさに『必殺』を決意したその時にのみ剣を抜きなさい」

 

 先生は付け加えて刀殺法のみに拘らず、頭を柔軟に回転させて時には技に頼らない姿勢を見せることの重要性も教えてくれた。

 

 いや、ホントこの人すごい勇者だな。

 魔王軍はこんなのを相手にしなくちゃならないのか。

 そりゃ簡単に侵略なんて無理だわ。

 

「俺も早く空烈斬をマスターしてぇよー」

 

 ダイくんも必死で目隠しして特訓に励んでいた。

 一回コツを掴んで放ってみたこともあるのだが、なかなかそれを維持することができなかった。

 

「ダイくんも日に日に上達していますよ。特にこのセンスが重要な技をよく1人でもここまで形にしましたね。大丈夫です、あとは完成を待つばかりです。焦らずじっくりとやっていきましょう」

 

「へへ……はい!」

 

 しかし先生がそういった矢先、島全体が大きく揺れ始めた。

 

「な、なんだ地震か!?」

 

「いや違います。この振動は……何者かが島の魔法陣を破ろうとしているのです……!!」

 

 激しい振動は徐々に大きくなっていった。

 

「な、何者かって――」

 

「魔王の手下に決まってんだろ?今この島は邪悪を阻む結界で覆われてんだ。そこへ入ろうとしてくるやつなんてそいつらで間違いねーってことさ」

 ポップくんがしれっと答えた。

 

(だが、並みのモンスターでは1歩足りとも立ち入れぬはず……まさか……!!)

 

 先生の顔に緊張の色が走る。

 そうなってしまうのも無理はない。

 

 そう。ヤツが来たのだ。

 

 その者は邪悪な闘気を島中に蔓延させ、荒れ狂う雷を纏って島に上陸した。

 

 不気味な低い笑い声が、城塞のファンファーレのように鳴り響く。

 

(来る……ものすごい奴が来る!悪のエネルギーをビリビリ感じるぞ!)

 

 野生のカンとも言うべきか、ダイくんもそれをひしひしと感じ取っているようだった。

 その場にいる全員が臨戦態勢に入っていた。

 

「どうやら、不安が的中してしまったようです」

 

 先生がそう呟くと、やがてそいつが私たちの目の前に降り立った。

 ブラスじいちゃんはその気の持ち主を一瞥すると、全身から滝のような汗を流して怯え――恐れ慄いていた。

 

「貴様の魔法陣にはなかなか骨を折らされたぞ……」

 

「やはり生きていたか……魔王!!」

 

「魔王!?こいつが!?」

 

 かつて世界を恐怖に陥れた魔王――ハドラーの姿がそこにあった。

 全身を邪教徒のように真っ黒な法衣で包み込み、逆立ったツノがネコのように見えた。

 

「魔王ハドラー!!」

 

 ハドラーと因縁のある先生は彼に対して殺気を放って身構えていた。

 ポップくんは「もぅダメだ……おしまいだぁ」とどこかで聞いたような諦観の悲鳴をあげて震えていた。

 

「久しいなアバン……あれから長い年月が経ったものよ」

 

「えっ!?先生魔王と会ったことがあるの?」

 

 弟子2人が先生に尋ねた。

 先生は無言で頷いた。

 

「お前のような男がこんなところにいるとはな……〝勇者〟アバン!」

 

「ゆ、勇者アバン!?」

 

「せ、先生が勇者……!?」

 

 このことは2人も知らなかったようだ。

 そう。このお方こそかつて地上に現れた魔王を討った伝説の勇者アバン。

 

「かつて貴様はオレの前に立ち塞がり、もう一歩で達成するはずだったこのオレの野望をことごとく打ち砕いた……!!」

 

 ハドラーの様々な感情が入り乱れた目が、アバン先生の鋭い目がかつての2人の戦いを映し出しているようだった。

 

「古い話ですよ」

 

「あの痛みと屈辱決して忘れん……!」

 

「お前はその数百倍にも及ぶ人間の生命を奪ったではないか」

 

「ふん笑わせるな人間など我々魔族に比べようもない愚かな存在……!!たとえ数百万集まったところでオレの生命とは釣り合わんわ!!」

 

 ハドラーは悪びれもせずに堂々と言い放った。

 やばい……ここから名シーンしか流れないんだけど……!!

 私は1人感心していた。

 

「……変わらんなハドラー。いや、以前にも増して愚劣極まりない性格になったようだ」

 

「何だと!!」

 

 怒りを露わにした魔王の雷が彼の全身を包み込んだ。

 

「ここから離れていなさい!」

 

 先生がそういうと、ポップくんは私とダイくんを抱えて走っていった。

 

「そんな!俺も一緒に戦うよ……あ、あっ!!な、なにすんだよポップ!俺たちも戦わなきゃ!!」

 

「バカ!!俺たちなんかがいたら足手まといになるだけだろうが!!」

 

 こういう時、彼の冷静さには感服する。

 確かに今の私たちが束になってかかっても復活したハドラーには敵わない。

 むしろ先生が私たちを庇って満足に戦えないことさえある。

 戦力差を冷静に分析し、撤退の選択を行えるのは確かな強さではある。

 当時の読者層にはポップくんのこういうところが嫌われていたそうだけど、自分の実力と状況を瞬時に理解してそれに適した行動が取れるポップくんが私は昔から好きだった。

 

 震えまくっていた足はまぁ見なかったことにして。

 

「あれが貴様の弟子か?聞けば勇者の家庭教師などと抜かして正義の戦士を養成してるらしいな。我が魔王軍の侵攻を邪魔するものは誰であろうと許さん!まずは……」

 

 ハドラーは手から光球を作り出していった。

 

「恨み重なる貴様を血祭りにあげ、貴様の弟子全てを抹殺してやる。あの世で仲良く家庭教師ごっこでもやるがいい――イオラ!!」

 

 魔王の手から放たれた爆裂魔法イオラが炸裂した。

 しかし先生はそれを片手で受け止め、押さえ込むと握りつぶした。

 

「魔王ハドラー、お前自らが出向いてくるとは考えようによってはちょうどいい。この場でお前を倒し、世界の暗雲を晴らしてやる!」

 

 先生も全身に気を溜め、ベキラマの熱光線を浴びせかけた。

 世紀を揺るがした両雄が今まさに目の前で火花を散らしている。

 

 くうぅ〜!!!

 参加してぇえええ〜!!

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