転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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黒の真相

 やぁみんな。私サナ。

 突然だけど、今大ピンチです。

 

 ハドラー目掛けて思い切りアバンストラッシュ放とうとしています。

 勢いついてんでもう止まれません。

 さて、勘のいい諸君ならお気付きとは思うが、この時点で既にハドラーの中にはあの憎き魔界の超爆弾黒の核晶(コア)があります。

 ということは?

 

 コアに触れたらジ・エンドってね。

 

「ぐげあああっ避けろぉおおハドラーァァア!!」

 

 こんな珍妙な悲鳴をあげざるをえないのも全部大魔王バーンのせいだ。

 おのれバーン。物語が詰んだら貴様のせいだ。

 

 ヘルズ・クローとアバンストラッシュの激突により、周囲は閃光に包まれた。

 凄まじい闘気と闘気のぶつかり合いはかの真竜の戦いほどではなくとも、大地や空間に激しい影響を与えてしまっていた。

 私たちの立っていた場所は巨大なクレーターのような跡地に早変わりしてしまい、木々も全て焼け落ちて丸裸同然の大地となってしまっていた。

 くっすまんデルムリン島……後で必ずなんとかしますから……

 

 しかし黒の核晶が爆発したにしてはえらく小規模なものだな。

 ふと周りを見渡すと、咄嗟にアストロンをかけた先生と鉄の塊になったダイくんたちが何事もなく立っていた。

 

「おーいサナ〜!!」

 

「よかったダイくんに先生も、みんな無事だった!」

 

 あぶねーッ。思わず次回『ダイ爆発!!』になるところだった。

 そういや無粋な話になるけどアストロンってコアの爆発に耐えられるんかな。

 あーでもあれ爆発したらピラーにも誘爆して地上消し飛ぶんだったわ。

 まじ大魔王バーン悪質の極み。

 

 なんてめちゃくちゃなことを思ってると、間もなく土の中から呻き声がした。

 ハドラーだ。

 

「ひ、ひ、ひょえーっ!!ま、まだ生きてやがんのかハドラーは!!」

 

 ポップくんが心底信じられないといった顔つきで言った。

 まぁこの程度で死にはしないとは思っていたが、竜闘気+先生の奥義でもまだ立ち上がる気力があったとは、もはやしぶといとかそういうレベルじゃなかった。

 そういえばこの人、ヒュンケルのグランドクルスにも耐えてたっけ。

 クロコダインも相当にタフだが、この人もこの人だな。

 

「ぐ……さ、流石に……今度ばかりは死ぬかと思ったわ……み、見事だ小娘……いや、アバンの弟子よ」

 

 受け止めた爪どころか腕ごと消し飛んでおり、全身は傷だらけになっていた。

 どうやらアバンストラッシュの軌道逸らしは上手く行ったようだ。

 

 ――と、そこでハドラーちゃんからとんでもないブツがはみ出していることに気がつく。

 

 く、黒の核晶……!!

 

 肉が抉られ、ハドラーに埋め込まれていたコアがくっきりと顔を出していた。

 

 

 あ、あ、あ、危ねぇええええええっ!!

 もうマジでほんのあと少しだったじゃん!!

 逸らしてなかったら終わってた。本当。

 

 しかしそんなことにさえ気付かずハドラーは残り少ない体力で傷の再生に努めていた。

 どうやらまだ戦うつもりらしい。

 

「黒の核晶だ!!ハドラー、お前の胸の中には今黒の核晶がある!!」

 

 私は止むなく叫んだ。

 

「く、黒の」

 

「核晶……??」

 

 ダイくんたちは当然としてアバン先生でさえも理解が及ぶものではなかった。

 

 だがハドラーだけはそれを知っていたのか私の発言に驚愕した。

 

「な、なに!!あ、あの魔界の忌まわしい伝説の爆弾がオレの中に……!!」

 

 確かめるように彼が胸部を覗き見ると、まさしくその爆弾が姿を現しており、ハドラーは震えた。

 先生が前に身を乗り出して私に尋ねてきた。

 

「どういうことですか、サナ!!」

 

「前にどこかの文献で読んだことがあるんです!あれは魔界産の爆弾で、大量の魔力を吸ってエネルギーに替えて超爆発を起こす危険な代物なんです。拳台のものでも島一つが軽く消し飛ぶという……」

 

「ひ、ひぇええええええっ!!な、な、ななんてモンくっつけてんだよぉハドラーは!!」

 

 危険性をいち早く察知したポップくんが遥か遠くまでダッシュした。賢い選択だ。

 でも多分あれ死の大地をまとめて吹っ飛ばすほどの破壊力あるからデルムリン島を出ないとまずいと思うけど……

 あ、でもまだヒュンケルとも戦ってないし、相当無茶してないからあそこまで魔力吸ってないから大丈夫…………かも。

 

「だったらあれを壊しちゃえば――」

 

「ダメよ。ちょっとでも衝撃を当てるとすぐさま爆発しちゃうくらい危険なの!」

 

「じゃ、じゃあどうすれば――」

 

 とにかく善は急げだ。

 私はすぐさまメドローアの体勢に入った。

 使い所ない呪文だと思ってたけど、まさかこんなところで役に立つとは。

 

「ハドラー!!とりあえずコアを上向きにしてブリッジしてーっ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 ハドラーは私の言う通り咄嗟に乗せ反り姿勢を取った。

 魔王と人間で文化も違うはずなのにブリッジが通用したことに一抹の親近感を持ったが、そんなこと考えている場合ではない。

 

 

「メドローア!!」

 

 私はハドラーのコアを掠めるようにメドローアの矢を放った。

 胸部上部分のみをかすったコアは爆発も破壊もされず、反応を伴わず一瞬で消滅した。

 しかし結びついていたハドラーの胸部も少なからず消滅の影響を受けてしまった。

 

「ハドラー……!!」

 

「ぐっ……案ずるな。オレの心臓は左右に一つづつあるのだ。片方無くなったところでどうということはない。……それより」

 

 コアが消滅し、心臓部分が丸出しとなったハドラーが胸を抑えて言った。

 

「誰がこんな恐ろしい真似を……!!」

 

「知れたことを……。お前の主、そしてお前に地上の与えると言いながら全てを吹き飛ばすつもりだった非情な男だ」

 

「バーン様が……!!」

 

 ハドラーは絶句した。心当たりはあったのだろう。

 恐らくは、その生命を救ってくださった時に。

 私は超魔生物に改造された時に埋め込まれたものだとばかり思っていたから完全に失念していた。

 まだまだだな私も。

 

 魔界の神は地上を席巻した魔王でさえも捨て石にするつもりだったのだ。

 恐らくはあの人への対策だろう。あわよくば共倒れを狙い、計画に支障が出ないようにするため。

 

「ひでぇ……なんてことしやがるんだ大魔王は……!」

 

 いつの間にか戻っていたポップくんが拳に怒りを溜めていた。

 ボロボロと変わり果て、傷心の魔軍司令に私は手を差し伸べた。

 しかしその手は振り払われ、ハドラーは自力で立ち上がった。

 

「フン……今更正義の使徒どもの助けなど借りられん。だが、我が生命を救ってくれたことに一応礼を言っておこう。ありがとう――サナ」

 

「え、ええ」

 

 ハドラーに名前呼ばれるなんて全く予想してなかった私はぎこちない返事となってしまった。

 やばいこれ原作書き換えちゃってね??

 だってハドラー倒れたのにアバン先生生存だし(元から生存だったけど)、ハドラーのコア取っちゃったし、これどうなるんだ色々??

 

「ハドラー。貴様はどこに向かうつもりだ」

 

 アバン先生がハドラーに語りかけた。

 互いに力を使い果たしてボロボロだが、ようやくアバン先生の方が有利に立った今ならハドラーにも止めをさせただろうが、先生はそれでも剣を取らなかった。

 

「この生命、貴様の弟子に救われたのは事実だが、あの方に救われたのもまた事実――オレには魔王軍としての責務が残っておる。……それに、今一度確かめねばならぬこともあるのでな」

 

 立ち止まったハドラーは先生に振り返らずにこう言った。

 

「アバン……貴様はオレに大魔王の使い魔だと言っていたな。……フッ。アレも満更嘘というわけではないらしい。強大な力を持った大魔王にとって、オレは単なる使い魔に過ぎんのかもしれんな……」

 

「ハドラー……!」

 

 その場にいた全員から戦いの意思が消えていた。

 それを見てハドラーが微笑んだ。

 

「しかしこうして敵に背を向けておいてなんだが、貴様も貴様よなアバン。いや、貴様の弟子もだ。今ならこのオレを倒せただろうに。そもそもこの爆弾さえ取り除かなければそのままオレを爆死させて片が付いたものを……これが人間のいう〝武士の情け〟という奴か?」

 

「フ……それはお前も同じこと……。いかに満身創痍とはいえ、我々も大技を使い果たし戦う気力などほとんど残されていない。その気になれば騙し討ちしてでも私たちを殺せたはずだ。それをしなかったということは……」

 

 アバン先生からそう聞かされたハドラーは大笑いをし始めた。

 

「魔軍司令とあろう男が、人間を見過ごしその人間にも見逃されるとはな……最早醜態も極まったな……」

 

「なに、痛み分けという形で手を打てばいい。恥というならば手負いの魔物を前にして手を出せない私の方も同義だ」

 

 アバン先生の目には憎しみや怒りはなく、どこか同情めいた哀しさと優しさが入り混じったような穏やかなものがあった。

 

 かつては自身と生命のやり取りをし、再び蘇って魔王軍として尽くそうとした矢先に大魔王の都合の良い手駒としか扱われなかった好敵手に対して、気の毒にでも思っているのだろうか。

 

「やはり貴様は甘い……だがアバンよ。そしてその弟子どもよ。甘さを捨てろ!大魔王バーンは恐ろしい男だ。奴の配下たる六軍王も一筋縄ではいくまい。奴らはお前たち人間の敵だ!倒すことだけ考えろ!!さもないと失うのは自分の生命だけではないぞ!」

 

 ハドラーが私たちに向けて警告すると、そのまま空へ飛び上がっていった。

 長々と説教のようなセリフを吐いていたのは、体力と魔力の回復を図っていたのもあるわけか。

 流石元魔王。随所の冷静さは顕在か。

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