転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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ハドラーの疑惑

 暗雲立ち込める鬼岩城に、よろよろと足取りの重いものがいた。

 

「ハ、ハドラー様!!」

 

「いかがなさったというのですか!ひどいお怪我を……!!」

 

「とにかく急いでありったけの蘇生液に漬けろ!!」

 

 サナに敗れ、更に心臓の一部と化していたコアを取り除いたことで、いかに不死身の肉体を持つハドラーとはいえ、致命打を受け続けた代償は相応に大きく、しばらくは蘇生液に吊るされることになった。

 

「これほどの手傷を負われるとは……かつての勇者はそれほどまでに力をつけたと言うことか……!!」

 

「バカな!見ろあの傷痕を!!いくら勇者でも人間にあんな真似ができるものか!!」

 

「で、では一体ハドラー様は何にやられたと――」

 

 配下のガーゴイルたちが不安の声を上げていると、突然蘇生液が砕け散る音が響き渡り、中からハドラーが出てきた。

 

「ハ、ハドラー様っ!!お身体の方は……!!」

 

 お付きのガーゴイルが彼の身体を拭っていった。

 時間こそかかったものの、ほとんど傷は回復し切っていた。

 

「ど、どちらに?」

 

「バーン様の元に行く。どうしても片付けておかなければならぬことがあるのでな」

 

 そういうと彼はいつもの服装に着替えて足早と走り去ってしまった。

 玉座の間までやってきたハドラーに対して、そのただならぬ雰囲気を感じ取ったのかミストバーンが無言で彼の進行を止めた。

 

「魔王軍魔軍司令ハドラー、早急の用につきバーン様にお目通り願う!!」

 

「おやおやどうしたんだいそんなに焦って」

 

 背後から突然冷たい風が吹き抜けてきたので、彼は思わず振り返った。

 

「死神……キルバーン!!」

 

「ふふふ、聞いたよぉハドラー君。人間の勇者とやらにやられておめおめと帰ってきたんだってね……?それでよくバーン様の前に姿を現わせたもんだ……ボクだったら恥ずかしくて自殺モノだね」

 

 キルバーンが抑揚のない声でケタケタと笑うと、隣の使い魔ピロロも笑っていった。

 

「バ〜カ!死神が死ねるかよ〜だ」

 

「フフフそれもそうだね。キミは相変わらず賢いなぁピロロ」

 

「おのれキルバーンめ。しくじったオレを始末しにきたのだろうがそうはいかんぞ」

 

 蘇ったばかりのハドラーは闘気を全開にして彼に向けていた。

 今は死ぬに死ねない――自身の生死よりも大事なことがあるという決意に満ちた顔付きだった。

 

「フフフ困るなぁハドラーくん、勘違いされちゃあ。たった一度の失敗でキミほどの軍団長1人を処刑できるわけないじゃないか。ボクが言ったのはメンツの話さ」

 

「面子だと?」

 

「魔王軍を統括する魔軍司令の立場にいながら人間に敗れて帰ってくるという失態を犯したんだ。人間の首を持って帰ってくるくらいしないとキミの立場も危ういってコトさ」

 

 しかしそれを聞いたハドラーは動揺するどころか逆に一笑に伏してみせた。

 

「そんなくだらんこと今のオレにはどうでも良いことよ。たとえあのお方に見限られようとも、オレはオレ自身のなすべき事をなすまでだ」

 

 それを聞いたバーンの名を冠する二名は大層驚いていた。

 

(ヘェ……あの地位に固執していた元魔王の男がここまで丸くなるとは……いや、むしろ前よりも芯が強くなっているような……)

 

「死神よ。貴様がオレを処刑しに来たのではないならそこを通してもらおうか」

 

 

「……ならん」

 

 

 突然発せられた声に彼らが驚いた。

 この場にいた誰のものでもない低く冷たい声だった。

 

「ミスト……バーン……!」

 

 彼の声を聞いたハドラーが驚愕の色を浮かべていた。

 それまでミストバーンの声など聞いたことなかったので、彼は喋ることができる魔影参謀に戸惑いを隠せなかった。

 

「大魔王様の許可なくして何人足りともこの先に立ち入ることは叶わん!ハドラー、お前がいかなる立場であろうと――いかなる事情があっても、だ」

 

 全員が静まり返った。

 大魔王を何よりの至上とする勤勉な影の忠誠心が垣間見えた瞬間だった。

 

 ハドラーもそれ以上は言い返す気にもなれず、ただただ俯いて頭を垂れるだけだった。

 

 

「良いではないかミストバーン」

 

 玉座の間の、カーテンの向こう側から老獪な声が響き渡った。

 

「バーン様……!!」

 

 声を聞いた全員が即座に膝をついて玉座の方を向いた。

 

「ハドラーは余に早急の用があるようだ。通してやってはくれぬか」

 

「ハッ。大魔王様のご命令とあらば」

 

 するとそれまでの態度が嘘のようにハドラーから遠ざかり、自分は一歩引いて下がった。

 ハドラーはそれを見逃さず、臆せず大魔王の近くに向かった。

 

「我が主君大魔王バーン様よ!あなたに尋ねたいことがある!!」

 

「なんだ。申してみよハドラー」

 

「あなたは……あなたは私を復活なさった時……私の身体の中に何かを仕込まれませんでしたか!?」

 

 ミストバーンは硬直し、キルバーンは意味深な声を上げていた。

 当のバーン本人は「どういうことだ?」と返していた。

 

「……オレは奴らの攻撃を受けた際、自分の肉体からある物が飛び出していたのを確認した。――それは悪名高き魔界の超爆弾黒の核晶(コア)そのものであった!!」

 

「黒の……核晶!!」

 

 その伝説はミストバーンも聞き及んでいたようで、ハドラーの口からその言葉を聞いた瞬間微かに身震いしていた。

 一方キルバーンは驚くどころか微動だにせず、カーテン越しのバーンに視線を送っていた。

 

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