転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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大魔王と魔軍司令

「どうにかしてこれを取り除くことに成功はしたが、代償にオレは心臓を一つ失い、戦力としては大幅に弱体化してしまったと言わざるを得ますまい。オレにさえ気取らせずこれを仕掛けたのはバーン様、あなただけではないのか!!」

 

 ハドラーは肉を開き、剥き出しとなった心臓とその手術痕を見せつけた。

 ハドラーは敢えて自分の意思で痕の回復まではしなかった。

 その肉体に付いた――傷とは言い難い歪な爪痕こそ、そこに黒の核晶が埋め込まれていたという何よりの証左になっていた。

 

 それを確認したミストバーンも声を失って目を光らせるばかりだった。

 

 キルバーンは少々困ったような身振りをしていたが、バーンの答えは揺るぎないものだった。

 

「はて……くろの……コア?ハドラーよ。余にはそなたが何を申しておるのかてんで得心がいかぬのだが……」

 

 それを聞いたハドラーとミストバーンは両の目をかっ開いてバーンの方を見つめた。

 

「とぼけるな!!あなたはオレを……初めから捨て駒にしようとしていたのだろう!!オレの肉体を改造できたのは死の淵から救ってくださったあなたをおいて他にいないのだ!!……かつてあなたはこう言っていたな。『余に従え、さすれば地上の全てはそなたにくれてやろう』……と。だがこの忌まわしい爆弾を見るに、そんなつもりなど初めからなかったということではないか!これはどういうことだ!!」

 

 ハドラーが怒りで熱弁するも、当のバーンには届いていないようだった。

 主君に対する不敬罪でハドラーはいつ取り押さえられて処罰されてもおかしくない状況だったが、この状況を面白がって静観しているキルバーンはともかく大魔王の忠臣たるミストバーンですらもバーンの発言とハドラーの現実を目の当たりにし、少々動きが鈍っているようだった。

 

 シラを切り通すのも飽きたのか、或いは早急にこの話題を終わらせるためかバーンは玉座から立ち上がってハドラーを指差した。

 カーテン越しに揺らめく大魔王の影に、ハドラーも内心冷や汗をかいていた。

 

「……ハドラーよ。その真相が知りたいか?ならば戦え。これからそなたに司令を下す。心して聞くがいいハドラー。……ただいまより六軍団全軍を招集させ、総力を以って勇者を名乗る者どもを抹殺しろ。そなたの疑問にはその勇者の首と引き換えに答えてやろう。どうだ?悪い話ではなかろう」

 

 ハドラーは動揺していた。

 全軍集結は彼が考えていたことでもあるが、大魔王が交換条件にしてまで秘密を勿体ぶっていることだった。

 

(やはり……やはりだ……!!大魔王はオレに何かをした……!!オレのただの勘違いだというならば、この場で有無を言わさず処刑していたものを……!!)

 

「そなたにとっても人間どもに負けっぱなしは癪であろう。余は寛大な男だ。失敗も三度までは許そう。そなたにはあと2回チャンスが残されておる……これを機に今度こそ余の計画の障害となる人間どもを皆殺しにするがいい」

 

「はっ。全てはバーン様の意のままに!!」

 

 ハドラーはそう言って去っていったが、内心バーンに対する不信感は拭いきれなかった。

 

(計画だと……?地上征服など目眩しの余興に過ぎぬくせに……!!)

 

 そう考えるとハドラーはこれまでの疑問も全て腑に落ちた。

 バーン自身神に等しき桁違いの力を持っておきながら、侵攻作戦について自身より力の劣る部下たちに任せ、まるで決め手に欠ける風を装っていたのも征服など眼中になかったから。

 

 フッ。何が大魔王の全軍を率いる魔軍司令だ。

 全ては大魔王の手のひらで踊らされていた哀れなピエロに過ぎん。

 

 全軍招集の任を受けたハドラーに、ミストバーンは音も立てずに着いて行った。

 

「ミストバーン、お前はこの事を知っていたのか?」

 

 ミストバーンは無言を貫き通すだけだった。

 だが、非情になり切れない彼の不器用な態度を察してハドラーはそれ以上彼に疑問を投げかけることはしなかった。

 

「フッ……大魔王様のお言葉は全てに優先する――だな。魔影軍団は集まった!!残る軍団にも招集をかけ、今度こそ人間どもを片付けようではないか!」

 

「ハドラー……!」

 

 

 

 

 一方で腹に一物ある二名のみが残された空間では穏やかではない雰囲気が流れていた。

 

「やれやれ。せっかくこのボクが伝令役を任されたのに、バーン様ったらご自分で全部言っちゃうんだもの。これじゃボクの面目丸潰れですよ〜」

 

「アハハ、キルバーンの面目丸潰れ〜キャハハハ!!」

 

 キルバーンのおふざけに対しても大魔王は口角一つ上げなかった。

 仕切り直しと言わんばかりに今度はキルバーンが手を叩いた。

 

「……それにしても、いやぁお見事です大魔王様。肝心のことは何一つお話にならず、彼に名誉挽回の機会までお与えになるなんて」

 

「フフ。お主も中々の狸ぶりだったではないか。笑いを堪えるのに必死で手が震えておったぞ」

 

 それを聞いてピロロも笑い転げた。

 

「あーははは!ハドラーったら哀れ〜!!ホントなーんにも知らないんだから!!」

 

「……こらこらピロロ。そう言うもんじゃないよ。彼は彼なりに立派に魔軍司令務めてるんだから……。――しかし」

 

 キルバーンはすぐさまおふざけをやめて真剣な声色に変わっていった。

 

「ハドラーくんが自分でコアをどうにかしちゃうなんてねぇ……()()にはどうするおつもりで?」

 

 バーンは何も答えずただ不敵に笑っているだけだった。

 

「……まさかもう一度彼にコアを仕掛けようなんておつもりではないでしょうね?」

 

「フッ。余もそこまで鬼ではない。有効な手立てを失ったのは事実だが、どうということはない」

 

 バーンは手元にあるチェスのコマを動かし、(から)の対戦相手に王手(チェックメイト)をかけていた。

 

「次の大戦で一皮剥けたハドラーが地上の邪魔者を消し去るならよし。或いは人間との戦いで我が軍の反乱分子が潰えるならばそれもよし。余の計画にはなんら滞りはない。――それにだ、キルバーン」

 

 バーンはキルバーンの目の前で炎を操り握り潰すパフォーマンスをしてみせた。

 

「この世界において……余の力に敵うものなど1人もおらんわ。たとえ勇者でも、(ドラゴン)の騎士であっても――な」

 

 キルバーンは大魔王の力の一端を目撃して震えた。

 

 その中にはお前も含まれているぞと言わんばかりのパフォーマンスだった。

 

(大魔王なりの宣戦布告……というわけか)

 

「全くもってその通りでございますバーン様……フフフ」

 

 キルバーンはなおも冷静に笑うだけだった。

 鬼岩城中に両者の不気味な笑い声が響き渡った……。




大魔王のNG集①

「ねぇハドラー……『これを仕掛けた』って言われても、余にはカーテン越しで何も見えないんだけど……」

「ははーっ。隙間から見てたなりファンタジー特有の超視でなんとかしたことにすればいいだろジジイ!!」
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