転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「はふーっ。もうダメかと思ったよ〜」
さて、そんな私に待ち受けていたのは後ろに控えている彼らからの怒涛の質問攻めだった。
うーーん。なんて説明したものか。
「お、お前!なんなんだよあの紋章とか黒のコア?だか、なんでそんな色々知ってできるんだよ!」
「ねぇサナ。さっきのあれアバンストラッシュだろ?いつのまに身につけたんだよ!」
「サナさん、まずはあちらで休んだのち……」
男3人から質問と会話攻めにあった。
これ見方変えたら逆ハーレムじゃんね。
言い寄られた男をことごとく跳ね除けてるかぐや姫のようだ。
なんてバカなこと考えてても仕方ないので、とりあえず私は全部「古い本で読みました」でシラを切り通した。
が、流石に竜の騎士の事については誤魔化しも効かなかったため、私はじいちゃんとダイくんを隣に彼らと席を囲んだ。
「なるほど……つまりお二人は赤ん坊の頃にこの島に流れ着き、それをブラスさんが育てたというわけですか」
「おっしゃる通りですわい。この子らの本当の親は誰かわかりませんが、もしかしたら竜の騎士なのかもしれません……」
「竜の騎士?ってなんだよじいちゃん」
ダイくんが純粋な疑問をぶつけた。
「詳しいことはわしにもわからん。言い伝えによればこの世に悪が現れた時、額に浮かぶ竜の紋章の光を輝かせ悪を打ち倒し世界に平和をもたらす存在だと言われておる……その者と同じ力を持つお前たちならばあるいは……という話じゃよ」
「へーっ。じゃあ俺たち勇者だったのかもしれないなサナ!」
「そ、そうねダイくん」
勇者志望のダイくんはとても嬉しそうに語っていた。
「サナさんが時々凄まじいまでの力を見せるのもそのためでしたか……。見たところサナさんはその力を自在に使いこなしているようですが……いつから?」
「えーっと。最初は思いっきり力を込めたら紋章が光り出して、なにやらすごい力がでるな〜なんて」
なんか二次性徴の話をしてるみたいだ。
紋章の力を操れるようになったのは8歳の頃だった気がする。
知識こそある程度あったものの、実際ものにするにはかなりの時間を費やした。
また、紋章の力を使ってる間は普段扱えない上級魔法の使用も容易になったのを覚えてる。
なにせ人、魔、竜の長所を詰め合わせあらゆる種族から敵が出てきても対抗できるように生み出されたのが竜の騎士なのだ。
魔法も魔族のそれと同等以上の力が出せる紋章状態は竜の騎士からすればなんら不思議なことではない。
「そ、それよりだサナ!お前なんでハドラーをみすみす見逃しちまったんだよ!」
ポップくんが私に向けて指差してきた。
「サナだけじゃねぇ先生もっすよ!そりゃ俺もちょっとは可哀想だと思ったよ。……けどあいつは生きてる限りまた人間を襲いにやってきますよ!しかもあんな奴と同じくらいの力を持った魔王軍なんてのもいるんですから……!俺たちにアストロンをかけて魔力を使い果たした先生ならともかく、サナはまだピンピンしてたろ?」
「そ、それは――」
い、言えない。ここでハドラーが死んだら後のフラグが全て潰えるなんて。
既に生み出されているであろうフレイザードはともかく、他のオリハルコン禁呪法生命体の皆さんとか生まれなくなっちゃうし。
ダイヤ9から逃げるためのうんたらこーたらとか、アバン先生と死神の対決がどーとか口が裂けても言えない。
私は苦し紛れの言い訳を思いつき放ってみせた。
「じ、持病のひざがしらむずむず病が再発して……」
「なんてぇ??」
伝説の老師の逃げ口上もここでは意味をなさなかった。
嗚呼老師ごめんなさい……!!
それを聞いたアバン先生は何かを思い出したのかくすっと笑ってしまった。
「もう先生までっ!!真面目な話ですよ!!」
「ポップ。彼に情けを与えて逃してしまったのは私の責任です。責めるなら彼女ではなく私を」
「そ、そういう話じゃなくて……」
「わかっています。私のしたことは勇者としても、人間としても許されたものではありません。もし再び奴が人間を襲った時は、私が責任を取って必ず討ちます。……さて、ポップ、ダイくん、それにサナさん。あなたたち3人には世界を救う旅に出てもらいます」
「た、旅に!?」
先生は服のポケットから美しいネックレスを取り出してきた。
「それはアバンの印……卒業の証じゃないですか」
ポップくんが言った。
アバンの印は太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。
「まずはサナさん。あなたは見事勇者コースの修行を乗り越え、とうとうアバンストラッシュの完成まで見せてくれました。そして私が終ぞ敵わなかった宿敵ハドラーを打ち倒し、既に私の力を超えてしまいました。最早私が教えることなどありません。今やあなたは名実ともに立派な勇者の1人です。世界があなたの力を必要としています。私に代わって2人のことをよろしくお願いします」
「せ、先生……!」
そうして私は仮免でない本物の卒業の証を先生の言葉と共に受け取った。
「ま、待てよ。私に代わってって……先生は。先生はどうするんだよ!!」
「……私は。私はあなたたちとは行けません」
先生が声を絞るように言った。
「今回の件で私は自分の力のなさを痛感しました。ハドラーの言う通り人は衰えるもの。今の私の力では皆さんの旅の足手まといになってしまいます」
「そ、そんな先生ぇ……!!」
ポップくんは感情の大粒を目から垂れ流していた。
先生は続けてダイくんの首にもアバンのしるしをぶら下げた。
「ダイくん。あなたも素晴らしい逸材です。空烈斬もほとんど物になり、修行は完遂したと言ってもいいでしょう。サナさんと2人で勇者として人々を救う希望の光になってください……!」
「せ、先生……」
ダイくんも思わず泣き出してしまっていた。
そして先生は最後にポップくんの方に向かった。
「ポップ……」
「先生……俺、卒業の証なんて要らない……!!今度こそ真面目に修行頑張りますから……だから、だから……」
「ポップ。……大丈夫です。あなたもサナさんやダイくんと同じで既に十分力をつけています。後は戦う勇気を持つだけです。愛するものを守るために生命をかけて戦う勇気を……」
先生はポップくんの胸にコツンと拳を置いた。
その熱を噛み締めるようにポップくんは先生の手を握り返しながら何度も泣きじゃくっていた。
そうしてアバン先生は私たち3人に卒業の証を渡してくれた。
私たちアバンの使徒は晴れて勇者になったのだ。
「先生はどうするつもりなんですか?」
「私はこれからとある場所に修行へ向かってきます。……無責任な話だとは思いますが、どうか私を信じてください。必ず魔王軍との戦いまでに間に合わせます。そしてその時はあなたたちと共に戦う事を約束しましょう。ですが、世界は待ってくれません。あなたたちだけでも旅に出て、魔王軍の悪事を挫いてください」
先生から地図や薬草など色々なアイテムを受け取り、私たちは旅路の支度を進めていった。