転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜   作:ありけるみー

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旅立ちの日に……

 

「よろしかったのですか……アバン殿。あの子たちには確かにすごい力がありますが、まだまだ未熟なヒヨッコも同然……あなたの力が必要だったのではないですか?」

 

 アバンが飛び立つ直前、ブラスはアバンに語りかけていた。

 

「……実を言うとそれも修行の一環――なんてカッコつけちゃまずいですよね」

 

 アバンはブラスの優しい瞳を見つめていた。

 その目にはかつて同じように自身と戦い、ある懇願をした魔物を思い出させるものだった。

 

「あの子たち本当はもっと力があるんですが、私がいると気が緩んでしまうのか、うまいこと本領を発揮できなくなってしまいましてね。特にポップ。あの子は中々本腰を入れて修行してくれなかったんですよ」

 

 彼は千切りにした野菜を見て言った。

 

「でも……ダイくんとサナさんの修行をつけているうちにね、あの子も自分から立ち上がっていったんですよ。ふふっ。兄弟子のプライドなんですかね。ともかくあの子たちは今お互いに良い化学反応を起こし合っています」

 

「……なるほど。あの子たちの成長の妨げにならぬよう敢えて卒業と云う形で退路を絶たせ、どんな困難が待ち受けていようとも自分たちで力を合わせて立ち向かわせよう……それがアバン殿の最終試験なわけですな」

 

「いやー。本当はそんなカッコいいもんじゃないんですけどね。……ブラスさん、それに島の皆さんやあの子たちには本当に迷惑をかけました。勇者の家庭教師だなどと宣っておきながら……自分が情けない限りです」

 

「アバン殿……。そ、そんなに自分を責めるでない。わしはあなたがいたからダイやサナたちが立派な勇者になれたと信じておりますよ。それにもしあなたがいなければ、わしはとっくに元の邪悪な魔物に戻り、あの子らを殺してしまっていたかもしれぬ……」

 

 ブラスは自分の手を見つめて震えていた。

 そこにアバンは種族の垣根を超えた〝親〟としての姿を重ね合わせていた。

 

「ですから私は今よりも強くなって、そしてあの子たちの〝先生〟ではなく〝仲間〟として、同じ目線で互いを高め合いたいと思っているのです。……ナイショですよ」

 

 一通り料理を終えたアバンはブラスの手を取った。

 

「ではブラス殿……今日まで本当にお世話になりました」

 

「アバン殿……達者でな……。皆、あなたの帰りを待ち望んでおりますゆえ……どうかご無事で」

 

 そうして彼は音もなく立ち去っていった。

 ブラスはそれを見送って彼の作った料理を涙ながら味わっていた。

 

(偉大なるアバン殿……真の勇者じゃった……)

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「さらばデルムリン島!大冒険への旅立ち!!」

 

「急にどうしたんだよサナ。置いていくぞ」

 

 私がいい具合にタイトルコール決めていると、ダイくんが現実世界に呼び戻してくれた。

 デルムリン島には朝日が差し込み、私たちは小舟を用意していた。

 ゴメちゃんも行きたがったがブラスからは猛反対されていた。

 誰にも見られていないのをいいことに彼(彼女?)は袋の中に入り込んでいった。

 もちろん私は全てを見ていた。

 

 一通り荷物を積み終えると、私とダイくんは船に乗り込んだ。

 

「ところでポップくんは?」

 

「まだ準備があるって言ってたよ」

 

 本来の世界線ではアバン先生を喪い、失意にくれるポップくんだったけど今回は先生も生きてるしあとは勇気の問題だろう。

 しかし彼もアバンの使徒で、私たちの兄弟子なのだ。

 いざという時は頼りになるだろう。

 それでも私は少し心配になってきたのでポップくんの様子を見にいくことにした。

 

「ちょっと待っててねダイ」

 

 アバン先生との修行で気配を感じることができるようになった私はリリルーラの呪文を唱え、ポップくんの元に瞬間移動した。

 

 彼はまだ家の中でじっと唸っていた。

 

「あぁ〜……先生も行っちまったし、今度こそ旅にでなきゃなんねぇよな〜……で、でもハドラーがあんだけおっかねぇ奴だってのに魔王軍はそれ以上かもしれねぇんだもんな……くそーっ!!まだ死にたくねぇよ……どうすりゃいいんだよ」

 

 彼の弱々しい悲鳴が狭い部屋にこだましていた。

 彼は今必死で自分を奮い立たせようとしている。

 魔王軍征伐の旅――それは決して簡単なことではない。

 私のように並の攻撃や呪文を受け付けない竜の騎士ならともかく、ポップくんは魔法の才能がある普通の人間なのだ。

 焼かれたら死ぬし、切られても死ぬ。

 

 それでも恐怖に抗ってアバンの使徒として――正義の使徒として戦わなければならない状況になってしまったのだ。

 元人間の私には彼の苦心がよくわかる。

 

 音も立てずに見守っているだけのつもりだったが、突然風が勢いよく私の背中を押したため足元の小枝をパキッと割ってしまった。

 

「だ、誰だ!!」

 

「あ、あーごめんごめんポップくん私」

 

 彼はまるでモンスターにでも遭遇したかのように勢いよく振り返ってきた。

 

 それが私の姿だと識別すると武器をおさめ「なんだサナか……」とほっと肩を落とした。

 

「も、もうすぐ出発するから迎えにきたんだけど……」

 

「あ、あぁ悪い悪いすぐにい…………ちょっと待てサナ。お前まさかさっきからずっとここにいたんじゃ……」

 

 私が半笑いで誤魔化すとポップくんの顔がだんだんと赤く染まっていった。

 今にも顔を突き伏せて泣き出しそうになっていたが、すぐに強がって部屋から飛び出してみせた。

 

「べ、別に俺はなんとも思っちゃいねーぜ!?ハ、ハドラーだってサナがボコボコにぶっ飛ばしてやったんだ!!魔王軍なんて女の子でも捻れるんだ俺だってそれくらい出来らぁ!!」

 

「ポップ……」

 

「さぁ行こうぜサナ。ぐずぐずしてらんねぇ、世界がこの偉大なる魔法使いポップさまを待ってんだからよ〜」

 

 そう言うポップくんの足はまだ震えていた。

 私はなんだか見ていられなくなりポップくんの手を取った。

 

「な、なんだよサナ」

 

「大丈夫。大丈夫だから。辛い時や怖い時は素直に言っていいんだよ。私はあなたの味方だから」

 

 思わずこんなセリフが出てしまった。

 これは私が幾度となく原作やアニメを見ている時に溢れたセリフだ。

 身体に染み付いてしまっていたのか、こんな場面でも咄嗟に出てしまう自分が恥ずかしい。

 

 その発言にポップくんは私の真の姿でも垣間見たのか、ひたすら目を擦っていた。

 

「お前って……時々年齢に似つかわしくねー大人びたこと言うよな」

 

 案の定火の玉メラゾーマストレート火災ど直球な発言がカウンターとして飛び交った。

 ぐふっ。ば、ばかな。カウンターは関ハドラーの特権ではなかったのか。

 

「サナってホントは12歳じゃなかったりして」

 

 年下に見透かされたようなことを言われたのが癪だったのか、ポップくんはこれまでの仕返しにと意地悪そうな微笑みを浮かべていた。

 

 ハドラーに呪文連発された時より痛い。

 

 あ、侮っておったわ……!!

 このガキ、いずれこの俺の寝首をかくぞ……!!(?)

 

「なーんってな。んなわけねぇよな。……ったくいきなりお前がそんな小っ恥ずかしい台詞言うもんだから調子狂っちまうぜ」

 

「あ、あはははは……」

 

 かくして公式キャラからも恥ずかしい台詞認定された私のアレは二度と使えない禁断の技となってしまった。

 禁断のっつか黒歴史だ。

 

 私とポップくんはダイくんの待つ船の元に向かって走り出した。

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