転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「何が乙女だよ!!あぁっ!!」
マァムたちから離れてダイとロモスの城に向かうポップは足元の木に躓いて派手にすつ転んだ。
彼らはかれこれずっとこんな調子であっちに行ったりこっちに行ったりフラフラとしていた。周囲はすっかり夜の闇に包まれており、魔の森の木々が不気味に揺らめいていた。
「やっぱりあのマァムの村に行った方がよかったんじゃないか?」
「うるせぇ!うるせぇうるせぇうるせぇ!!こうなったら意地でもこの森を抜けてやる!!」
「でも方向さえ分からないんだぜ?」
ダイは懐疑的だったが、ポップは構わず進んでいった。
コケにされたプライドもあるだろうが、なにより男が一度口に出した言葉を曲げて女の子に頭を下げるなんてポップには我慢ならないことだった。
このまま歩き続けていればいつかは辿り着く――少なくともポップはそう信じていた。
そうした結果3日も迷ってしまったことなどもう忘れていた。
そんなポップの思惑とは裏腹に進めば進むほど魔の森は形を変えて邪悪になっていくばかりだった。
「ち、ちくしょう。またおんなじところに帰っちまった」
「だから最初にあの子に道案内頼んどきゃよかったんだ。ポップがあんなこと言うから……!」
「うるせぇな!大体俺はあーいう生意気なオンナは大嫌いなんだよ!!」
「ほんじゃ、どういう女の子なら好きなんだよ」
そう言われてポップはデレデレと鼻の下を伸ばしながら語った。
「そりゃおめ、あの女とは正反対よ。優しい顔立ちの美人で〜グラマーで〜金持ちで〜オレの言うことなら何でも聞いてくれる娘だな〜あははは!参ったな最高だよ言うことなしだ!!」
「ポップ……お前ってホントわがままだなぁ……」
「ば、バカ、しみじみ言うな」
まるで子供みたいなポップの理想像に彼よりも年下のはずのダイが呆れ果てていた。
「じゃあポップはサナみたいなのがタイプってこと?」
「えーっ!?ば、ば、バカ!おめ。あいつは優しい顔立ちの美人しか合ってねえじゃんか!!まだグラマーじゃねぇし……金持ちかどうかも分かんねえ。第一、あいつが俺の言うことを何でも聞いてくれるとは思えねーしな……」
「不思議だよな。俺と同い年くらいなのに賢者顔負けの呪文を使えたり、剣なんてそこらの戦士より強えーしさ」
「あぁ。……あーいうタイプは絶対隠れ気が強い女だぞ〜。男尻に敷く系だ。自分の方が強いし何でもできると思ってるからな」
気が強いという部分を聞いてダイは咄嗟にレオナを想像してため息をついた。
(やっぱ女の子って、年取ってくるとあーなるのかなー……)
そんな彼らのあくせくする様子をブキミに吊るされていた悪魔の目玉が覗き見ていた……。
魔王軍のモンスターたちはその性質によって六つの軍団に分かれている。
それは大魔王バーンの力の源である邪悪の六芒星を象徴している。
不死騎団――死をも超越した戦士たちの軍団。人間たちを地獄に送り込む殺戮の使徒たち。
氷炎魔団――灼熱の猛火と氷点下の吹雪。全てを焼き尽くし、魂すらをも凍らせる恐怖の破壊者。
妖魔士団――絶大なる魔法力を誇る魔道士の軍団。いかなる人間の魔法使いもその妖力には太刀打ちできないであろう。
百獣魔団――凶悪極まりない獣たちの群れ。底知れぬパワーをふるっての進軍はまさに無尽の矢をいくが如し。
魔影軍団――実体を見せずに敵を討つ闇の狩人。大魔王から頂いた魔智を生命とし世界を暗黒に染める。
超竜軍団――最強のモンスター・ドラゴンの軍団。故にその戦力も六軍団中随一。
そしてそれぞれの軍団を最強の実力者六人が軍団長として統括し指揮をするこれが大魔王六軍団の全貌である。
そんな中、百獣魔団を指揮する獣王――クロコダインがハドラーと悪魔の目玉を介して交信していた。
「クロコダインか」
「悪魔の目玉がハドラー殿お探しの勇者とやらを魔の森で見つけたようだ。あそこは我が軍の管轄であったはず。そこでだ魔軍司令殿に折いって頼みがある」
「なんだ」
「そこに向かった勇者の少年たちと一戦交えたいと思うのだが、どうだろうか。ここ最近強いものに巡り会えておらんでな、ちと腕が鈍ってしまっているようなのだ。招集の件は重々承知しておるのだが、幸いにもすぐ近くにおるようだし……ただオレの独断で動くわけにもいかず、ハドラー様の許可を得たいのだが」
「構わん。ただし、飽くまでも決戦前の下見程度に済ませておけ。深追いは決してするな。危なくなったら即座に退避しろ」
獣王は目玉越しに眉間に皺を寄せていた。
「ハドラー殿がそこまで仰るとは……今回の全軍招集といいやはり奴らはそれなりの強敵ということですな」
これまで勇者と名乗る輩とは星の数ほど戦ってきたクロコダインにとっては新たに現れた『勇者』など眼中にもない存在だったが、事情を聞かされた際に事の重大さを理解すると同時に久しく見ぬ強敵の出現に獣王としての血がたぎっていた。
「まだ小さいがどちらも油断ならん存在だ。特にサナという少女には気をつけろ。何を隠そうあの小娘こそがこのハドラーの肉体に致命傷を負わせた相手だ。その身に合わぬ数多くの強大な呪文も操る……まともに戦り合えば貴様とてただでは済むまい……」
「なるほど……」
「それにまだ大戦前だ。こちらの手の内を全て晒す必要もあるまい。敵はサナだけではなく人間ども全てだからな。来るべき決戦の日までなるべく戦力を温存させておきたいというのがオレの本音だよ」
「獣王承知した。だがもしオレが首を討ちとれるのなら……」
「あぁ。構わん――いやむしろ挑むなら殺す気でやれ。ヤツが本領を発揮せんうちならば或いは勝機があるやもしれん。だが繰り返し言うが下見程度だぞ。今のうちから全力で飛ばす必要はない」
「分かっておりますとも……」
交信が途絶えるとクロコダインは全身を震わせ、それまでに見た事ないほど口角を高めていた。
「くくく……ぐわははは!!滾る、滾って来よるわ!!待っていろ人間の勇者よ!!」