転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
逃げ回るポップたちにお構いなくライオンヘッドがベギラマの灼熱を放ち、またその牙で彼らを追い詰めていった。
「やばいぜ、おいあいつ相当なレベルだ逃げた方が……」
「逃げられないよポップ。俺たちよりかなり動きが早い……!戦うしかない!」
開けた岩場に追い詰められ、今度こそ逃げ場を無くした彼らにライオンヘッドがじっくりと攻め込んできた。
しかし獣がそれ以上歩を進めることはなかった。
彼のいびきよりもっと低い唸り声を聞いたからだ。
この世の地獄でも拝んだかのように、ライオンヘッドは全身を震わせてガタガタと牙を鳴らしていた。
そのただならぬ怯えようと低い雄叫びにダイたちも気を高めていた。
(ものすごい威圧感を感じる……!!)
「み、みろよライオンヘッドを……怯えて縮こまってやがる。て、てことはだよつまり……考えたくはないけれども」
「そうだよポップ。この声の主はこいつより全然強いってことさ!」
ライオンヘッドが脱兎の如く遠ざかっていくと、巨大な地響きに近い足音が聞こえてくるようになった。
まもなく木々が真っ二つに裂かれ、真空の刃がポップたちに吹き渡った。
「見つけたぞ小僧……!!」
そこに立っていたのはややピンクがかった橙色のワニ獣人だった。
その姿を確認して彼らは額から汗を流した。
「我が名は獣王――クロコダイン!!魔軍司令ハドラー様が指揮する六つの軍団の一つ、百獣魔団の軍団長だ!!」
「六つの軍団……?」
「左様。我が魔王軍はモンスターの性質によって百獣、氷炎、不死、妖魔、魔影、超竜六つの軍団に分かれておる。俺の軍団は恐れを知らぬ魔獣の群れよ」
やがてクロコダインは少年たちを指差した。
「ダイよ!!」
「ど、どうして俺の名を――」
「ハドラー殿の命によりお前を討つ!!死にたくなければ必死で発揮するのだな魔軍司令ハドラー殿を傷つけたというお前の真の力を!!」
「うるせぇこのワニ野郎!!よく聞いてみりゃなんのことはねぇ、ハドラーの下っ端じゃねぇか!見てくれがあんまりすごいんでビビって損したぜ!!ハドラーでさえ俺たちがコテンパンにのしてやったっていうのに、お前なんか相手になるかってんだよ。な、ダイ?」
自分より前に乗り出し、クロコダインに啖呵を切る兄弟子を見てダイは「お前……何もしてなかったじゃないか……」と思っていた。
それを聞いた獣王は大口を開けて笑い転げていた。
「な、なにがおかしいんだよ!笑い上戸か!?お前くらい俺様の呪文でちょちょいとやっつけてやるワニ〜!!」
「グハハハ!!何処の馬の骨か知らんが、まぁ試してみるがいい」
「なんだと!!……メラ!!ワニの丸焼きになりやがれーッ!!」
ポップが放った火球をクロコダインは息を吸い込んで吹き飛ばした。
「こんな呪文じゃスライムだって殺せんぞ。今度はこっちの番だ」
クロコダインが斧を持ち、力を込めて振りかざすと周囲に激しい衝撃波が生じ、ダイたちの背後にあった大岩の壁を真っ二つに引き裂いてしまった。
(すごい……パワーだけならハドラーより上だ!!)
その威力を見たダイは早々に獣王への警戒心を強めた。
「我ら六団長を見くびるなよ。各々の得意とする技においてはハドラーどのを上回る力があるからこそ、我らは軍団長を任せられておるのだからな」
「ポップ、正面からぶつかったんじゃ勝ち目がない。俺が隙を突いて攻撃するから、ポップは呪文で援護してくれ」
しかしすでにそこにポップの姿はなかった。
「グワハハハ!!懸命な判断だな!!あんなザコに用はない!俺が興味あるのはダイ!!お前だけだ!!」
そうしてダイはパプニカのナイフを手に、迫り来る獣王に立ち向かっていった。
一方逃げ出したポップは全速力で脇目もふらず森の中を駆け巡っていた。
「すまねぇダイ……お前もうまく逃げろよ……!!」
しかし足元を確認していなかったポップがライオンヘッドの尻尾を踏みつけてしまい、今度は彼との逃避行が始まった。
「わーっ!!今日はなんてついてないんだよーッ!!助けてくれー!!」
いよいよ追い詰められたポップの耳に懐かしい声が聞こえてきた。
「飛び退いてーっポップくーん!!」
声の主はその方角から光の闘気で出来た斬撃を飛ばし、ライオンヘッドの眉間を切り裂いた。
「あ、相変わらずスンゲェな〜サナは……」
「大丈夫?ポップくん」
「あ、ああ。なんとかな……」
「それで……ダイくんはどうしたの?」
サナが聞くとポップはびくっ!と肩を震わせ、申し訳なさそうにくねくねとし始めた。
「い、いやぁそれがよぉ魔王軍団長のクロコダインってヤツに襲われちまってさ、逃げてきたんだよね俺。ま、ダイのやつもうまく逃げて来たんじゃないかとは思うけど……」
「まさかダイくんを見捨てて逃げてきたんじゃ……」
「そ、そんなわけないだろ!!」
しかしポップの慌てふためき様から真っ先に逃げてきたものだと理解した。
(やれやれ全くこの兄弟子はしょーがないんだからもう……)
「とにかくダイくんの気を探ってみる……!いた、あっちね」
「へっ?」
「リリルーラ!!」
そうして彼女はポップの目の前から瞬時に消えてしまった。
「き、消えちゃったよ……サナのやつ……」
取り残されたポップは後を追うこともなく、ただひたすら敵の魔の手が及ばない方向まで全力で走って逃げていった。