転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
私がポップくんの元に到着する前のこと。
「ぜーっぜーっ……なんとかメタスラ軍団倒した……」
私のメドローア連発戦法はどうにか功を奏し、呪文が無効のメタルちゃんにも直撃と同時に消し去ることができた。
――が、そこは腐っても魔王軍の一派。
一体のメタスラちゃんが消滅すると、それを警戒して彼らはとんでもないスピードで掻き回してきたのだ。
これではメドローアを当てるどころではなく、結局五発ほど無駄に使ってどうにか倒し切ることができたというわけだ。
な、なんか絶対レベルとか上がったと思う……。
なんか身体から光が満ち溢れてきたし。
しかしレベルは上がっても疲れは取れなかったので、マァムが後から魔法の聖水を取ってきてくれるまでずっと疲労困憊だった。
なかなかに侮れぬ百獣魔団。しかしこれで私も完全復活。
私のリリルーラはまだまだ欠陥品もいいところで、捜索には半径10メートル前後くらいに探したい相手の気がないといけないのだ。
またその気も相手によって見つけるのが困難であり、例えばなんの戦闘能力も持っていないミーナちゃんみたいな子なんかはかなり近くにいないと気を探ることができない。
戦っているダイくんならすぐに見つかると思っていたのだが、あいにく近くにいたのはポップくんだった。
ライオンヘッドに襲われてヒーヒー言っていたところをみると、どうやらもうワニさんは来てしまったみたいだ。
咄嗟に紋章無しアバンストラッシュを放ってライオンを倒したものの、それを束ねる獣王の力はこんなものではないはず。
ダイくんの気を探すとちょうど大きなものと小さなもの二つあったので、そちらに瞬間移動することにした。
「勝負だ――クロコダイン!」
戦場は今まさに男と男の勝負が行われようとしているところだった。
この戦いに水を差すのも無粋だと思ったが、ダイくんが大地斬を放ってそれをクロコダインが受け止めた後すぐに皆が私の方に振り返った。
「サナ!!」
「ダイ、ごめん遅くなった!!」
私の名前を聞くとクロコダインは目をカッと開いていた。
「サナ……サナだと!!はははそうか小娘、お前がハドラー様に手傷を負わせた方の勇者だな!?」
「そういうお前は獣王――クロコダイン!噂は聞いている。ロモス王国にとてつもない強さを誇る武人が現れると!」
それを聞いたクロコダインは少々驚いた様な表情を見せつつも「いかにも」と冷静さを取り戻してみせた。
いきなり現れた私――それも年端もいかない女の子がやって来たというのにさっきから一向に闘気に乱れがない。
どころかむしろさっきより高まっていってるみたいだ。
「サナ……気をつけて。あいつの皮膚は鉄よりも硬いんだ!俺の大地斬もゼンゼン歯が立たなかったんだ!」
「どうやらそのようね……」
紋章無しの今とはいえ、あれでもダイくんは意識的にハドラーとの戦いの中で大地斬を使っていた。指で受け止められてしまってはいたが、それでも血を流させるに至っていた。
ところが目の前のタフワニさんには傷一つ――いや埃さえ付いていない。
肉弾戦においてハドラー以上というのも間違いではないだろう。
「フフフ……サナよ。貴様もアバンの使徒というわけか。ならば少しはできるんだろうな?」
そうかクロコダインはアバンの使徒の命名者だったな。
誰もそう名乗ってなかったけど以降定着していくかっこいい一団の呼び方みたいなのを提案してくれたってのは中々に粋だ。
Z戦士みたいなものだろう。
話し合いで穏便に済ませようとか思ってたけど、やっぱり戦う感じか。
「ダイ、下がってて。彼とは一対一でやりたいの」
「む、無茶だサナ。こいつはもんのすごく強ぇんだ。おまけにスピードもある。1人でなんて無理だよ!!」
「小娘。オレの方は2人がかりでも構わんのだぞ。そう死に急ぐこともあるまい」
「ご厚意痛み入るわ。けど遠慮しないで。これでも魔軍司令をやっちゃってるもの」
「フッそれもそうだな。ではいくぞ!!」
かくしてクロコダインさんと私の一騎打ちが始まった。
確かにクロコダインさんの一撃はどれも闘気と殺気の込められた凄まじい威力のものばかりだった。
あの真っ二つに縦割れしている岩壁を見ると、それくらいの力があってもなんら不思議ではないと思ってしまう。
それに相対しているだけでものすごい威圧感だ。
それはハドラーのそれに勝るとも劣らない。巨躯な見た目以上に圧が感じられる。
単なる力自慢の獣人ではない。
戦況を確かに見据える観察眼と知恵、そしてここぞというときにその強大な力を振るえる剛柔操るしたたかさ。
アバン先生と修行して直前にレベルアップしてなかったらどう足掻いても勝てなかった。
こんなのダイくんにだって荷が重いはずだ。序盤では明らかに場違いな強さだ。
「小娘……いやサナよ!!驚いたぞその年で何たる強さだ。剣の腕も良い。お前は今まで出会ったどんな大人よりも数段強い。認めようこの獣王が相手をしてきた人間の中で過去最強の力の持ち主であると」
バチバチにやり合っているそんな中、クロコダインさんからお褒めの言葉をいただいた。
私は精一杯微笑みたくなる口角を必死で抑えて「それはどうも」と答えた。
「だがオレに言わせればまだまだよ。剣に厚みが足りん!あと数年もすれば人類最強の兵士となれたものを……こんなところで終わってしまうのが本当に惜しい才能だ」
クロコダインさんはそういうと、持っていた巨大な斧に力を集めていった。
「その強さに敬意を表して真の戦士が持つ武具の威力というものを見せてやろう!!」
あれは真空の斧。
確かバギ系の呪文を扱うことができる武器じゃなかったっけ。
「これはバギマ!?」
突風に包まれる私を見てダイくんが叫んだ。
「そうだ。オレ自身は呪文を使えぬが、この真空の斧にはバギ系の呪文の力が込められておるのだ。唸れ!!真空の斧よ!!」
「うわぁああっ!!」
私の後ろの方にいたダイくんが巻き添えを喰らって吹き飛ばされた。
「ダイ!!」
「そこだ!!喰らえ!!」
クロコダインが私目掛けて真空の刃に包まれた豪斧を振りかざしてきた。
ダメだ――やっぱり使わないと間に合わない!
「な、なんだこの光は!!」
私は紋章の力を解き放ち、真空の斧を首筋で受け止めてみせた。
その様子にクロコダインは驚きを隠せずにいており、斧から手を離すのを忘れていた。
この隙に――!!
「アバン流刀殺法――奥義アバンストラッシュ!!」
「がっ、ぐ、ぐぬわぁあああっ!!」
武器を跳ね除け、庇うものをなくしたクロコダインの腹部に私の鋼の剣が牙を剥いた。
凄まじい威力の斬撃波を受けるも、クロコダインはそれを掴んで受け止めようとしていた。
「な、なんの……!!これしきの技……ぐっ、……!!」
しかし次第に受け止めきれなくなり、やがて鎧が木っ端微塵になりながら後退し岩場にに全身をぶつけた。
その時彼の貫かれた腹部からは大量に血を流していた。
(す、すごい……あの鋼鉄の皮膚を鎧の上から貫いて……!!俺の大地斬じゃびくともしなかったのに……!!)
ダイくんはそこで息を呑んでいた。