転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「何、デルムリン島を訪ねたいと申すのか」
ロモスの王国には、二人の賢人がやって来ていた。
「ははぁ。モンスターの島という噂は聞いておりますが……」
「よくこのロモス王を尋ねてくれた。デルムリン島ならよ〜く知っておる。確かあの元気の良い少年と少女が住んでおるのが……」
「少年と……」
「少女?」
バロンとテムジンは互いに顔を突き合わせた。
「未来の勇者たる少女サナとダイじゃ!!」
そんなことがあったなど毛ほども知らないサナとダイはいつものうにデルムリン島でのんびりと過ごしていた。
「さぁダイ。もう一度練習じゃ」
「ムダだよじいちゃん。今までメラ、イオラ、キアリー、数え切れないほどの契約はうまくいったけど魔法が使えなかったじゃないか〜」
ダイくんが口答えするとブラスじいちゃんは決まって杖で殴りつける。
「数々の魔法の契約ができているというのに、それを使えないのは努力が足りないからじゃ!!少しはサナを見習わんか!!」
突然名を呼ばれて私は思わずハッとなった。
「い、いやそんな……」
「だって〜……オレはサナみたく難しいこともよく分かんないし……絶対無理だよ!」
「いいからさっさと練習しろ!!」
おおなめくじ、おばけキノコ、ホイミスライムたちが愉快そうにダイくんとじいちゃんの修行の様子を眺めていた。
「ギラ〜!!」
ダイくんは手から必死でギラの閃光を放とうとしたが、維持出来なくて結局またじいちゃんにごつかれていた。
「気力が足りん!!集中力が足りん!!!そこでよぉ〜くサナの魔法でも見ておけ〜っ!……サナ?やってみせてくれんかの」
「え、ええっ。あ、ハイ良いですけど……」
じいちゃんに指名されて渋々私はギラの呪文を放ってみた。
超加減しないと今度は島が火の海と化してしまう。
「
高熱のエネルギー波が手から放出され、更にそれを操って落ちていた木の実を美味しくこんがりと焼き上げてみせた。
じいちゃんが魔法の加減確認も込めて木の実に齧り付いた。
「うまいっ!!」
二つの意味で。
「わかったら基礎訓練100回〜!!」
「じいちゃんはああ言うけど、やっぱオレって魔法の才能ないんだよな〜」
ブラスじいちゃんがいなくなった後にダイくんがポロリと頭を抱えて呟いた。
「そんなことないよ。だって私たち家族じゃない。私にできてダイにできないことなんてないわ」
「そうかな〜……」
投げ出したくなる寸前のダイくんに私はなんとか魔法の楽しさを伝えようと必死だった。
ともあれダイくんは原作とか見る限り一旦
しかしまだ平和そのものなこのデルムリン島でそれを望むのは余りにも酷――
「ピッ、ピィー!!」
とそんなことを考えているとゴメちゃんが突然私たちの前に飛び込んできた。
「大きな船が島に向かってくるって!?」
あぁ。そういやそろそろか。
例のお姫様イベント。
「また偽物かなぁ?」
ダイくんと私は全力疾走で海の見える崖に走っていった。
まぁあんなことがあったばかりのこんな時期に誰か来ても無理はないか。
さてさて。流石にロモス王でもパプニカ王国の人を来島拒否することはできなかったんだろうけど、横についてるあの二人が中々に曲者なんだよなぁ〜……
というかこの島、狙われすぎじゃね??
いつもの場所に立って見てみると、やはりパプニカ王家の紋章が船に刻まれていた。
「軍艦だぁ〜!!」
しかしそんなもの初め見るダイくんは飛び上がって叫んだ。
確かに大砲とか付いてるしそう思ってしまってもなんら不思議ではないが……
男の子ってそういうの好きよね。
島に起きた異常事態を知らせにダイくんは脇目もふらずに走っていった。
「じいちゃん大変軍艦だ!!軍艦が攻めてきたよ!!」
目玉焼きを焼いているじいちゃんの元にダイくんが慌てて駆け込んだ。
「なんじゃと?!」
便利な望遠鏡でじいちゃんが確認すると、またまたダイくんの頭をかち割って彼の早とちりを諌めた。
「あれぞまさしく聖なる船じゃ……修行に修行を重ね、魔法使い・僧侶の術を全て使いこなすことで成長した賢者にのみ使うことを許される船なんじゃぞ」
毎度ながらじいちゃんの博識には驚かされる。
かつて魔王軍に所属していた時に得た知識なのだろうか。
そしてその賢者を有する大国、パプニカ王国の船がデルムリン島に座礁した時、私たちは崖を降りて彼らを出迎えた。
まず先に司教テムジン、そして賢者バロンが島に降り立った。
続いて複数のローブを纏った付き人たちが出てきた。
「うわぁ……あれが賢者さまか……!!」
「これ頭が高い!!」
きらきらと目を輝かせるダイくんにじいちゃんが頭を下げさせた。
するとそれに合わせてか、テムジンたち一行も私たちに膝をついて頭を下げてきた。
「未来の勇者サナどの、それとブラス老」
「ブ、ブラス老……!?」
「未来の勇者だって……!?」
高明なものに褒められ慣れていないじいちゃんが顔を真っ赤にしていた。
「私はパプニカ王国の司教を勤めるテムジン」
「賢者バロン」
二人が丁寧に名乗りをあげた。
お年を召しているのがテムジンで、若い美男子がバロンだった。
「パプニカの姫レオナ様と共に、故あってこの島を訪れました。何卒姫にお力添えをお願いしたいと思いまして……」
「姫ですと?」
じいちゃんがそう言うと、最後に船から降りる者がやってきた。
従者同様ローブ姿に包まれてこそいたが、その隙間から太陽の光を反射して覗き見える白く美しい足と、フードの中にある気品に溢れ整った顔立ちからその者の高貴さを存分に押し出していた。
やがてローブを砂浜に放り捨てると、その美しい御姿が私たちの目の前に晒された。
レオナ姫である。
「わぁお!」
この時のダイくんの反応も忘れてはならない。
彼が女性に対してこのような反応を示すのは大変珍しいのだ。
確かにレオナ姫はとんでもない美人だし、肌色面積豊かだし、化粧もしていかにも美人一直線な顔立ちをしていたのだ。
そう思ってしまうのも無理はない。
傅く従者たちの真ん中に道を開きながら、彼女は向かってきた。
近くで見ると姫はやはり一段と美人だった。
これで14歳って…………
「どうもはじめまして」
「こんちゃ!」
私たち双子は姫に挨拶した。
「アナタが勇者サナ?」
姫が私の元に接近してきた。
これ本来ならここでダイくんが勇者と呼ばれて然るべき存在である。
前もって株を奪った反動がまさかこんなところで来るとは。
「え、えへへ……」
そういった私の申し訳なさそうな態度も、他の人からは違った意味で捉えられたことだろう。
そんなダイくんも負けじと姫に向かってピースしてアピールしてる。
「やだ〜こんなおチビちゃんカッコ悪〜!!」
そんなダイくんの姫に抱いていた幻想を木っ端微塵に破壊なさるのがこのお方、レオナ姫である。
幸いというか、私もダイくんもほとんど変わらない身長だったため、二人まとめて仲良く『おチビちゃん』の名誉を賜った。
彼女のこうした歯に布着せぬ物言いこそ魅力の一つなのだが、流石にショックが大き過ぎたのか、この時ばかりはダイくんも膨れっ面を浮かべて黙りこくってしまっていた。
実を言うとこれよりアレな性格なのが、本編開始前の映画と読み切りでのレオナである。
連載にあたって多少マイルドな感じになっているのがせめてもの救いだろう。うん。
当時「姫といえばお淑やかな〜」なテンプレを見事に打ち破った好例ともいえるだろう。