転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「ほほぅ。洗礼の地ですと?」
パプニカ御一行をじいちゃんの家に招き入れ、事情を伺った。
「パプニカ王国は代々神に仕える家系。その後継者たるレオナ様は14歳になられたこの月のうちに地の神の恩恵を被るための儀式をせねばならんのです」
テムジンが説明し、当のレオナ姫は扇子で仰いで優雅に過ごされていた。
しっかしドラクエⅥのホルスしかりⅧのチャゴス然りで、ドラクエ世界の王家の儀式は若いうちから大変なものばかりだな〜……
私王族に転生しなくてよかった〜……絶対途中で死んだか殺されてたよ。
「それを行うためには最も地の神に近い場所にその身を投じなければなりません。この島には地に繋がる穴がありますね?」
「おおありますとも!森に奥地にとてつもない大穴が。……しかしデルムリン島の火山帯に繋がっているらしく島の動物たちですら滅多に近寄らんところですじゃ。そんなところへ姫さまを……?」
ブラスじいちゃんはレオナの方を見た。
彼女はゴメちゃんを物珍しそうに扇子で仰いでいた。
「心配ご無用です」
バロンがブラスじいちゃんに言った。
「レオナ姫もいずれは賢者になられるお方。この私が伝授した氷の呪文を使えば何の危険もありません」
彼の力説にじいちゃんも頷いた。
「わかりました。そういうことならご協力いたしましょう」
それを聞いたダイくんはあからさまにイヤそうな顔を浮かべていた。
「よかった。何せ王家のものの洗礼は実に50年ぶりなんです。誰もが長年怪物島として恐れ、この島に渡ることを諦めていたが……そんな折、ロモス国の王からサナ君やダイ君の有名を伺いましてなぁ……」
ロモス王は何でも「デルムリン島の怪物たちは私たちの言うことなら何でも聞く」と仰っていたそうだ。
「なるほど。この子らに地の穴まで道案内をさせたいわけですな?」
じいちゃんが察すると二人は深く頷いた。
そんな中ダイ君はじいちゃんの側でひそひそと耳打ちをし始めた。
「じいちゃんヤダよ俺。だってあいつ性格悪そうだ……」
「何ということを言うんだ!!こんな名誉なことは他にはない!!」
「そ、それにサナが勇者なんだから俺はいかなくっても……」
「バカモン!!わざわざ王家の方々がこうして遠路はるばるやって来てお前たち双子をご指名なさったのだぞ?!それに一人より二人で行ったほうが心強いわい!!」
二人は周囲に聞こえないほど限りなく小さい声で話し合った。
もっとも耳が良かった私には一言一句残さず全部聞き取れてしまったが。
まーじいちゃんからしてみれば手塩にかけて育てた子供たちが王家の儀式の案内人を遣わさせられることなんてまたとない機会だろうしなぁ。色々感慨深いものがあるのだろう。
特に魔法使いのじいちゃんにとっては賢者様なんて勇者様を支える職業の頂点、まさに花型で尊敬すべき存在なのだから。
「えへへ、こんな奴でも役に立てるなら喜んで……!!」
(ちぇ。じいちゃんったら〝ブラス老〟なんて呼ばれたもんだから浮かれちゃってさぁ)
「キミィ本当に大丈夫?途中で迷子になっちゃったりしたら置いていくわよ」
私と乗り気でないダイくんに向かってレオナのきつ〜い一言が飛び交った。
それを聞き及んだダイくんは更に沸騰させたヤカンの如くむかちーん!ときていた。
「この島は俺の庭だぁ!目隠ししたって一周できらぁ!!」
とうとう腹に据えかねたダイくんが言い放った。
その言いっぷりにレオナも関心しているようだった。
実際私たちはこの島で生まれ育って10数年以上のベテランだ。
案内するのになんら支障はない。……支障はないが……
(問題なのがあの二人だよなぁ〜……)
この後の流れを大体ネタバレさせてもらうとこの二人、裏切ります。
どこで仕入れてきたかわからない魔法の筒から魔のサソリを放ってレオナ姫を毒に犯し、助けを求めてところでバロンが呪文を放ってダイくんと姫もろとも地の底に叩き落とす。
そうして姫君の暗殺で国家転覆を図り、自身らはモンスター島で怪物に姫を殺されやむなくというようなことを企んでいる不届者2号だ。
ダイくんが決死の思いで抜け出すと、これまたどこに隠していたのか魔王軍の殺戮兵器キラーマシーンを呼び起こし、この島を火の海に変えようとする。
結果的に紋章の力に目覚めたダイ君によってバロンたちは退治され、レオナ姫もじいちゃんのキアリーを浴びて復活し二人は仲良く逮捕されて一応の決着はつくのだが……。
事前に潰しとくか。
「あ!あれなんだ?!」
「えっ?」
私が大声で窓を指差すと全員の視線が外に向けられた。
今だ。
テムジンらの目を盗んで彼らの魔法の筒を神速の速さで奪い取り、何も入っていない空の魔法の筒とすり替えた。
どうやら誰にも気付かれていないようだ。
「な、なんじゃサナよ。何かおったのか?」
「あ、あれ気のせいだったかな……今なんかいた気がしたんですけど……良ければ司教さんたちもちょっと出て見てくれませんか?」
じいちゃんはそんな時間はないと怒っていたが、どうにか彼ら二人を私たちから切り離すことに成功した。
そしてすかさず島の奥の方にルーラで移動し、魔法の筒の中身を出した。
「デルパ!!」
すると中から巨大なサソリが現れた。魔のサソリだ。
魔王の意思に依らず凶暴なモンスターであり、何日も餌を与えていないなど非常にキケンなヤツである。
この化け物こそ彼らの国家転覆計画の要その1であり、こいつの毒は毒消し草でも消えぬほどの強大なものだった。
もちろん私はじいちゃん直伝のキアリーを覚えているし、原作通りにやってもよかったのだが、それでは犠牲も多かろう。
私自身のレベルアップも兼ねてここは一人で退治させていただこう。
「ギシャア!!」
口内から汁気を撒き散らし、自慢の尻尾を振り回して私に襲いかかってきた。
どうしよ殴って砕けるかなこいつ。確か槍でもロクに傷一つつかないし、ギラの呪文も受け付けないほどには強かったよねコイツ。
まぁ本気出して紋章使ってぶち殴れば吹き飛ばすくらいはできるはず。
「でやーっ!!」
紋章を光らせ、
すると大気が激しく歪み、かつてサソリだったものは殴った箇所から砕け散っていき、拳圧で島の木々が皆倒れていった。
や、やりすぎたぁ〜!!!
ごめんよみんな!だってこいつ原作では硬かったし!!
それとも流石に竜闘気を乗せた拳は重過ぎたのだろうか。
まぁいい。これで一つの脅威は去った。
これで儀式は安全にこなせるだろう。
速攻私はダイくんとレオナの待つ場所まで移動した。
「も〜どこ行ってたんだよサナ」
「ごめんごめん。ちょっと色々ね」
「とっととアイツ案内して儀式なんて終わらせちまおうぜ」
あはは。よっぽどレオナ姫の印象悪い方に引きずってんだな。
まあでもこの儀式の中でそれも晴れるさ若者よ。
こうして私たちはいよいよ地の底に繋がる大穴まで姫を道案内していった。