転生したら竜でした 〜無敵の竜騎士は自重知らずで最強です。〜 作:ありけるみー
「本当に大丈夫なんでしょうね……?」
不安そうにレオナがつぶやいた。
「森のモンスターはみんな仲間だからね。レオナ姫って意外に臆病なんだな〜」
そして先頭を歩くダイくんはここぞとばかりに反撃を開始する。
それを聞いた姫さんは「なにくそ〜」顔をしてダイくんを追い抜いて一人走って行ってしまった。
しかしすぐに悲鳴と共に足を止める羽目になった。
「あぁああぁ〜!!!」
「ひ、姫!!」
五人の従者たちが槍を構えて魔物を見る。
魔物は大きめの身体でぐねりとトグロを巻いており、不気味に呻いていた。
大人たちは怯え、レオナ姫もダイくんと私の後ろに隠れてしまった。
それを見たダイ君は「やれやれ……」と言った感じで魔物に向かっていった。
「おいキャタピラーくん。こんなところで寝るなよ。どいてどいて」
「こっちにもっと良い昼寝場所があるよー。さ、おいで」
私たち双子にされるがままにキャタピラーは道を開けていった。
それを見たレオナたちは唖然としていた。
「へぇーっすっごい!ちょっと見直しちゃったなチビちゃんたち!!」
姫が私の頭を撫でて良い子良い子してくれた。
あァ〜姫の手尊い………!!
同様の施しをダイくんにもやろうとしたが、彼にはムッとした表情で睨まれて距離を置かれてしまっていた。
「
「あぁんねぇキミ。他に何か特技あるの?」
そんなつっけんどんな彼の態度が気になったのか、姫はお構いなしにダイくんの方へ向かって興味津々だった。
「魔法とかさ」
しかしそれはダイくんの地雷ぶち抜きモノだった。
「魔法……できない……」
案の定ダイくんは苦々しい表情で小さく言った。
「えーっ嘘ー!!一つも??やっだー!!」
姫にこう言われるのを分かっていたのか、ダイくんは悔しそうな顔をしてますますむくれていた。
「じゃあえっと……サナ?だっけ。あなたも魔法使えないの?」
「あ、いえその……」
「サナは使えるよ。聞いて驚くなよ〜サナはなー、俺と同い年なのにメラ系もギラ系も、イオにヒャドにバギに加えて回復の呪文だってお手のものなんだぜ!?」
自信なさげな私に代わってダイくんが全力でPRしてくれた。
「へーっ。ちょっと見せてみなさいよ」
姫も興味津々だ。
「じゃあお言葉に甘えまして……
私は片手の5本の指にそれぞれの属性呪文を込めていった。
まさに基本5大属性呪文によるお・も・て・な・しだ。
それらの呪文を球体にまで練り固めてお手玉のようにして投げたり拾ったりしてパフォーマンスしてみせた。
それに目を奪われたレオナや従者たちが拍手と喝采を浴びせかけてくれた。
「すっごーい!!あなた私よりちっちゃいのに本当にいろんな呪文が使えちゃうのね〜!!すごいすごい!まるで大賢者さまだわ!」
姫は普段要らぬことまでズケズケと言う性分だが、こういう素直に感心して人を褒める時も一切飾らずに自分の言葉でしっかり言ってくれるから美点でもあるのだ。
「いや実に大したものですな」
「その若さであれほどの技術……!ぜひとも将来は我がパプニカ王国の賢者に……」
人があれよあれよと押し寄せてぎゅうぎゅうのすし詰め状態となってしまった。
「いや〜それほどでもないですよ〜」
「……でも、そんなにスゴイのにどうして片割れのダイくんは魔法できないなんていうのよ」
落ち着いた姫が再びダイくんの方に話の焦点を持ってきた。
あ、あちゃ〜。姫さまそれは悪手だって……
兄弟姉妹において、片方が優れてるとかいうコンプレックスを刺激するような話題はNGですよ……
これには流石に従者たちも気を遣ったのか、「姫。きっとダイ殿は契約の儀式を受けていないのですよ。儀式を済ませればきっと使えるようになります」とせめてものフォローが入った。
しかし哀しいことにそれがフォローとなることはなかった。
「儀式はやったよ……じいちゃん俺を魔法使いにしたいもんだから、ありとあらゆる儀式をやった。……未だ一つもできない。才能ないんだよ魔法の……」
「ピィ……」
ダイくんが俯き気味に答えた。
もしかして私はやってはならぬことをやってしまったのでは……?
あぁん泣かないでダイくん。
ダイくんには魔法より何より素晴らしい武器があるから!!
そんな哀愁漂うダイくんを、この時ばかりはレオナも黙って見つめていた。
魔法は契約もそうだが、そこから使えるようになるには結構な労力を有する。
じゃないと世の中誰しも魔法使いだらけとなってしまう。
なんというか、魔法は頭と心が一致した時に初めて使えるようになる……そんな感じだったのだ。
そんな一行の旅もついに終わりを迎えた。
「着いたよ。あれがじいちゃんの言ってた地底に繋がる大穴だよ」
地の底に通じる洞窟は、恐ろしい魔物の形相そのものといった形の入り口をしており、今にも人や動物を飲み込みそうな雰囲気があった。
「しかし想像を絶する凄まじい大穴だなぁ」
従者の一人も私と同じ感想を漏らしていた。
「感心している時間はないぞ。早速洗礼の準備をな!」
一同が集められ、レオナの儀式の準備が始まっていった。
洞窟の岩場に腰を落とすと、姫はダイくんの側に寄っていった。
姫は腰に携えた刃物――パプニカのナイフを彼に向けるとそのまま持ち手の部分を手渡した。
「コレ、キミにあげるわ。魔法がてんでダメじゃ武器くらい良いの持っとかないとね」
ダイくんは光り輝くナイフを眺めていた。
「パプニカの王家に伝わる結構由緒正しいナイフなのよそれ。……でもアタシが持ち歩くとテムジンたちが怒るの」
「そりゃそうだろうな」
手渡した理由はそれもあっただろうけど、ダイくんを気の毒に思ったことも大きいだろう。
「魔法のことだけど、出来ないものは出来ないんだから、いつまでもクヨクヨしないで剣の腕でも磨きなさいよ」
「キミって思ったことなんっでもズケズケ言っちゃうんだね〜」
私はまさに伝説のやり取りを目の前で拝んでいた。
正直すぎるレオナの物言いに、ダイくんも怒りを通り越して逆に感心すらしているようだった。
「ええ。その方が相手のためにもなるでしょ?アタシも気持ち良いし」
あんまりにも姫があっけらかんと言うもんだから、とうとうダイくんも笑い出してしまった。
それにつられて姫も笑い出した。
「平和って良いよなぁあああ〜!!!」
遠目から私もその光を浴びて眼福していた。
従者たちは不思議そうな顔をしていたがそんなことはどうでもいい。
このまま二人の行く末を見守る妖精にでもなっていたかったが、それは叶わない。
そろそろここらでバロンたちが悪さを仕掛けてくる頃だろうから。
「さて……ちょっくら見回ってくるか……」
サソリは事前に撃退したし一応大丈夫だとは思うけど、万が一があってはいけないし。
私は何か怪しいものが付いてきていないかどうか見回ることにした。