司令部で見つめる戦況。
使い時を計っているのか、オーブで確認されたXナンバーとは違う連合の新型三機はまだ出ていない、パトリックはあの三機には最大限の警戒をしていた。フリーダムとジャスティスが連携しなければならない相手なのだ。ストライクダガーの動きも危機感を煽られているのか相討ち覚悟が目立ち始めている。このままでは時間が経つ程に不利。
しかし?ナチュラルを見下す部下達には、その気配が感じられないのを辟易してた。
今はクルーゼが頼りだが、そのクルーゼは作戦通りにプロヴィデンスを主軸とした一斉攻撃でジャスティスを撃破、一旦はドラグーンの補充に戻ったと報告が来た。
パトリックは、その報告に暗鬱となり掛けたが、振り切った・・・・『亡き妻』には、自分の落ち度と詫びるしかない。
パトリックの思いを知らずに、気絶したアスランは夢を見ていた。内容が問題に過ぎたが為にこうしてしまった記憶だ。
『開戦理由を覚えているか?』
アスランがパトリックと対面した時、これを問われた。理由としてはプラントの誰もがこれを思い浮かべるであろう。
『血のヴァレンタイン』
自分も映像で見たからだ。父がタカ派と見なされる一因でもあるが?何故そうなったか?
『搾取に苦しんでいた』
食料の生産すら禁止されながら宇宙資源を提供するばかりの日々での果てのやむを得ぬ反旗と、知らない人からしたらプラントに義があると思うだろう。
だが?
「本当にそう思うのかアスラン?お前は同僚達のように『砂漠』を体験した方が良かったのかもしれんな」
イザークとディアッカの事だとアスランは気付いた。オーブで再会したディアッカは、以前のような狡猾さと残忍さが表面上は無くなっていた。理由は詳しく話してはくれなかったが、肝を冷やしたらしいとくらいは聞けた。次に砂漠はヒドい環境で辟易していたと、バルトフェルド隊長とその部下達も最初はそうだったらしいと聞いている。
「では、プラントはどうだ?立っているだけで苦しむような環境か?」
違う、そもそもアスランは他をあまり知らない・・・・いや、そもそも3隻同盟とされる者達の中には、精々が?
『砂漠が酷い場所だった』
『ムウ・ラ・フラガのように、家族が訃報を迎えた後にそれなりに大変だった』
この辺りしか言えない。
返す言葉が無いアスランに対する追い討ちは止まらない。
「搾取に苦しむと言うのはな?アンドリュー・バルトフェルドが戦ったような、自走砲とすら言えない装備でバクゥに戦いを挑むしかない環境なのに、我々や連合に占領されて略奪されてるような人々にこそ当て嵌まるのだ!」
固まったアスランを見たパトリックは『やめとく事にした』・・・・知らない事を言い聞かせるより、わかりやすく言わねばならないし、自分も聞きたい事を聞いておく事にした。
「では、お前はジャスティスで地球に行った後に何をどう考えて此処に来た?お前に問うているフリーダムとジャスティスの話題を・・・・つまり?私やユーリ・アマルフィが恐れる地球連合にNJCが渡り、連中が大喜びで再び核を使う事態についての話題を後にする価値がある事なのか?」
「そ、それは・・・・」
「仮に、話し合いの場を設けて?我等にジョージ・グレンの二の舞になれと言う気か?」
『ジョージ・グレン』
言わずと知れたファースト・コーディネーターだ。しかし、ジョージ・グレンの二の舞と言う事はどういう事なのか理解できなかった。
「会談の場には、納得がいかずに襲撃を掛ける側がいるであろうな、それを抑えるのが私の仕事と言われればそれまでだが?我等には『コペルニクス』の落ち度がある」
『コペルニクス』
その単語を聞いた辺りで、アスランは全力で否定する為に意識を他に集中させた。それがどう転ぶかは知る由も無く。
「こ、此処は・・・・」
医務室のベッドの上だが、エターナルやアーク・エンジェルの中ではないとアスランは理解した。身体を動かそうにも胴体も手足もベルトで拘束されて、自分が足掻いてもびくともしないと理解したが、自分は何をしていたか?確かヤキンに近付いた時迄は?と思い出した時。
「お目覚めかね?」
「クルーゼ隊長っ・・・・いや、ラウ・ル・クルーゼ!」
「おや、君にしては即決な態度だな?私の生い立ちを聞いたようだね?」
『キラを造る為の資金を提供してもらう為に造られたクローン』
そして、この戦いを裏で手引きした存在・・・・そんな存在が自分達の隊長だった。しかし、何故こんな状況に?
「ユーリ・アマルフィに感謝したまえよ?万が一にもフリーダムやジャスティスが敵の手に渡らないようにする為の手段の一つとして、密かにNJC搭載機からは同じタイプの機体を捜索する為の機能をブラックボックス化して搭載していた。お陰でジャスティスのコックピットブロックをいち早く発見できたのだ」
『ユーリ・アマルフィ』
ニコルの父、アスランを息子の仇を討ってくれた存在と見ていた男・・・・だが、現実と自分の現状は何なのだと思うが、そもそもの元凶は?
「私が『何故、キラ君の事を知ったか聞かないのかね』?」
「え?」
「ヘリオポリスの後に、ストライクに乗っているのは『キラ・ヤマト』だと君から聞いたが、何故そこから私がキラ君が『キラ・ヒビキ』だと調べられたか聞かないのかね?『キラ』だからかね?同じ名前なだけでかね?」
その通りだと思う、何故だ?とアスランは気付いた。クルーゼが何故知れたのだ?
「私が退室した数分後に、拘束を解けるようにしよう」
「な、何を?」
「約束は覚えているだろうね?」
『約束』
無断出撃の不問後、自分に親友を撃たせるような事はしたくない、だから作戦から外すとしたクルーゼに対し、キラを説得をしたい、もしも聞き入れなければ自分が討つとした内容だ。だが?
「お礼だよアスラン?君がヘリオポリス以降、キラ君を?『約束を破ってニコルが死ぬまで』討たなかったお陰で、オーブや連合がMSを実用化して戦況が泥沼化した。今、ヤキンに迫る連合の部隊は、以前の君達がシグーやゲイツに乗っていては防ぎきれないような気迫で向かって来ているお陰でザフトの兵達はかなりの数が命を失っているぞ!」
「~~~っ!」
声にならない叫びをアスランはあげる。その通りなのだ。ザフト軍人としてのアスランはストライクを討った・・・・だが、クルーゼとアスランも居合わせた場でエザリア・ジュール等が危惧していた連合のMSの実用化を防げなかったのだ。今のように数と国力に勝る側と条件が同じに近付いては戦争に負ける。バルトフェルドも砂漠で敵対してた時にキラにその事を説いたが、結果は最悪のものとなったと考えたのを見て取ったクルーゼが追い討ちを掛けた。
「滑稽だなアスラン?ザラ議長がNJCを実用化した事を非難したようだが、ザラ議長の判断は正しかったよ、それくらいしか数に勝る部隊に対抗する術が無いのがプラントの現状だ。尤も?プラントのお偉いさんのご子息とやらには想像は出来ないでいたか?」
それは、奇しくもアスランが先程の夢で思い出すまいとしていた内容に近付くものだった。そうだ・・・・それこそが。
『エイプリルフールの真相』
高笑いするクルーゼだが、彼からの邪悪な仕打ちにはまだ一つ続きがあった。
「そうだアスラン、君がこれからどうするかはわからないが?脱出するなり司令部に行くなりするにしても、短気を起こしてはいけないからプレゼントを送ろう」
「プレゼン、ト?・・・・っう!」
腕にチクッとした感触が走った。どうやら自動拷問装置による注射だ。自白剤の類いとアスランは思ったが?
「ふふふ、最高の遺伝子操作をされたらしい君にはこういう場に持ち込める程度のものは効果が薄いだろうしな、地球で手に入れたものを使った成分を注射したよ」
地球でと聞いて、麻薬か何かとアスランは疑ったが?クルーゼは答えを言った。
「『青魚』だよ」
「はっ・・・・?」
「そうだ。君は『青魚アレルギー』と聞いたからな、コーディネーターでも想定外のものに対しては対応が出来ないとする好例だと笑わせてもらった。生き延びたらコーディネーターは万能ではなかったとする証人になりたまえ」
場違い極まる内容だが、笑える事態ではない。アレルギーの発症は数時間掛かるが、そうなったまま戦闘をやるのは未経験であり致命的な支障を出しかねない、高笑いして去るクルーゼを睨むしかないアスランだが、奇しくもこれが深い意味を持つとは知る術が無かった。
種絡み検索すると出所不明なの多いが、クルーゼの搦め手として『アスランの青魚アレルギー』を使ってみた。