二度目の人生は好きなように   作:楽しく遊びたい一般不死人

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話せないこと

 

 

 

拳を打つ、いなされる

 

足を振るう、受け止め防がれる

 

拳を打つ、躱される

 

足を振るう、弾かれる

 

 

 

そんな攻防、いや、()()がその部屋では行われていた。

 

事の始まりは如月誠の提案によるものだった。

 

 

 

 

 

「一君。君にお願いしたい事があるんだ」

 

「お願い、ですか?」

 

「うん。これは個人的なお願いだから断っても大丈夫だよ」

 

そう言って如月誠は本題に移った。

 

「君は対策課に入る事になるからね。その前に軽く君がどれだけ体を動かせるかを確認したいんだ」

 

模擬戦のようなものだと、組み手のようなものだと、如月誠は言った。

 

「分かりました。どこでやるんですか?」

 

「場所と日程は後で瞳君に伝えておくね」

 

そう告げて如月誠は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「瞳君。聞いていたね?」

 

扉の外で待っていた望月瞳に問いかける

 

「はい」

 

「それなら話が早い。緋薙君と染谷君も呼んでいるからそっちで詳しく話そう」

 

 

 

 

 

「それで?なんだって急に、一と模擬戦なんて話になったんです?」

 

「そこについては追々話すとして、瞳君と緋薙君が言っていた事について聞いてもいいかな?」

 

「遺品を渡した時の事ですか?」

 

如月誠は真剣な表情で頷いた。

 

「ええっと、詳しくと言われても報告した通りなんですが」

 

「緋薙君も同じかい?」

 

「そうですね。以前伝えた通りです」

 

「なるほど・・・よし、分かった」

 

如月誠は纏う雰囲気をより、真剣なものに変え、口を開いた。

 

「まず、この前した精密検査から話そう。これを見てほしい」

 

机の上に分厚いファイルが置かれた。

 

「あ〜、如月さん?出す資料間違えてないですか?一人分の量じゃねぇでしょ、これ」

 

「いや、間違ってないよ。彼一人でこの量なんだ」

 

その言葉に場が凍る。

 

「なんですか・・・これ」

 

先にファイルを開いていた望月瞳から震えた声が届く。

 

「まず、彼の体に刻まれている術式に関してだね。現状分かっているもので80種類、まだ調べ切れていないものを含めておおよそ120種類は確実にある」

 

その言葉を聞き三人は耳を疑う。

 

「次に術式と同じく刻まれた概念付与について、まず数は分からない」

 

「分からない?」

 

「そう、分からないんだ。皆知っていると思うけど今までに複数の概念付与に耐えられた人間はいない。だから調べようとしても調べようが無いんだ。初めての事例だから調べる方法も分からないし、何か一つ間違えて状況が悪化しないとも限らない」

 

だからこの先ゆっくりと調べるしかないんだ。そう言った如月誠の顔は酷く疲れていた。

 

「さて、もう既に気づいたかもしれないけどね。一君が遺品を受け取った時の事なんだ。私の言いたい事は」

 

少し間を置いて如月誠は続ける。

 

「彼は恐らく、いや、確実に、亡くなった両親の思いを感じ取ってしまったんだろう。それがいつ、どこで、なにを切っ掛けに起こるのか分からない」

 

「だからまず、瞳君は原則一君に読心を使ってはならない。君まで引っ張られかねないからね。それと一君には手袋の着用を出来るだけしてもらうつもりだ。手で直接触れることが条件に含まれているかもしれないからね」

 

ファイルから目を移した立花緋薙が言葉を発した。

 

「このファイルに書かれている事を一君には知らせるんですか?」

 

「いや、伝えないつもりだよ。彼には余計な事を背負わせたくない」

 

「そうですか」

 

そこまで話して一度場が止まる。

 

「何か、質問があるならここで答えるよ。なければ今日はこれで解散だ」

 

誰一人声を発さずただ黙って首を横に振った。

その中で立花緋薙は握り締めた右手から流れる血を無造作に拭った。

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