「ん〜?」
目が覚めるとそこは真っ白な部屋であった。って真面目にどこだここ?
「ここは、どこなんだ?」
なんか声が違う気がするし、…あれ?なにこの体?めちゃくちゃ傷だらけなんですがこれは。
ちょっと整理しよう。そうだ、急がば回れだ。
確か俺は、
刺された?焼かれた?撃たれた?斬られた?沈められた?潰された?
唐突にフラッシュバックした情報量に圧倒されて脳がショートしかける。
大量の死。その記憶が頭に流れ込む。
「うっ、なッ、んなんだよ。」
身に覚えのない記憶を思い出しているとやっと思い出す。
自分が孤児である事を。
「確か、母さんと父さんが仕事で?」
そうだ。家で帰りを待っていたら急にスーツの人が来て、それで、殉職したって、言われたんだっけ。それから連れて行かれて、どうなったんだ?
「おお!起きたか!いやはやもう少し掛かるかと思ったがやはり元が優秀という事もあって素晴らしいな。記録を付けておこうか。」
誰だ?この人?取り敢えず、
「あの、ここはどこですか?」
「ん?もう話せる程にまで回復したのか?やはり想像以上じゃな。少し、待ってくれ。あと数秒で終わる。」
そう言うと目の前の老人はさっきから書いているクリップボードに素早く書き連ねると俺に目を合わせる。
「さて、ここは第七概念研究所という所じゃ。覚えておるか?」
「第七、概念研究所?えっと、」
そこまで思い出してまたフラッシュバックしてくる記憶に吐き気を覚える。
「大丈夫か!苦しかったらこれを使いなさい!」
老人は俺にポケットから袋を渡してくれる。
「うっ、えぇぇ、」
大して中身の入っていない胃液だけを吐き出す。
「やはりまだ辛いか?取り敢えず今はゆっくりと休みなさい。良いな?」
「ありがとう、ございます。」
気遣いがありがたい。そのお陰かは分からないけど、ある程度思い出せてきた。
俺は転生して五歳の時までの記憶がある。
元々覚悟は出来ていた。仕事に行く前日に二人が真剣な顔で話をしてくれた。
「一、これからとても大事な話をする。よく、聞いてくれ。父さんと母さんは大規模な討伐任務に選ばれた。正直、帰って来れるかは分からない。」
その時の父さんの顔は隠し切れない不安があった。
「でも、お母さんもお父さんも一緒に帰れるように頑張るから良い子で待ってて欲しいの。あなたはとても賢い子だからあまり心配してないけどね。」
それを誤魔化すように母さんが喋った。
「だが、もしもの事があったらこのメモに書いてある番号に電話をするんだ。そうすれば如月君に繋がる。一もよく遊んでもらっただろう?」
「それから戸棚の一番上に通帳が入っているからそれもね?」
この時には二人とも不安な顔をしていた。だから俺は少しでも安心してほしかったんだっけ。
「うん。分かったよ。二人の言う通りにする。でも、ちゃんと帰って来てね。」
「ああ、勿論だ!」
「大丈夫。きっと帰ってくるから。」
確かそれから二週間くらいだった。良く晴れた日だった。両親の事を知って
「なんで俺はここに?」
「ふむ。それはな、」
老人は俺に背を向けて話始める。老人の話を聞いていると後ろ手に持っているクリップボードの文字に気づいた。
君は利用された
その文字を決して声に出さないようにしつつ意味を考える。この人は俺の味方、なのか?利用されたって言うのは実験の事か?とにかくこの人には従った方が良さそうだ。メッセージを書いておこう。
「さて、この辺りまで話せば大丈夫じゃろう。何か聞きたい事はあるかな?」
「それなら、貴方の名前を教えてほしいです。」
「そういえば自己紹介がまだじゃったか。私の名前は
「ありがとうございます。それと清水さんはどうしてここに?」
「それは私が君の、なんと言えばいいか。・・・教育係のような位置付けになってな。今日は君の顔を見るだけと思って来たんじゃが、こうして顔合わせになってしまった訳じゃな。」
清水さんの笑い方にはとても悪意があるようには見えない。
「おお、そうじゃ。自分の名前は言えるか?」
「えっと、俺の名前は、
「そうじゃそうじゃ、大丈夫そうじゃの。明日から本格的に始める予定だから今日は君と話をするとしよう。何か聞きたい事があれば言ってくれ。出来る限り答えよう。」
どうやら今日はお喋りで一日を過ごすらしい。
「気づいてくれたようじゃの。」
私の手元のクリップボードに文字が書かれていた。
ありがとうございます。あなたもお気をつけて
「あの状況で私の心配をするとは、なんとも。」
どうにか隙を作らねばな。そうと決まればまずは電話か。
「もしもし?ああ、そうじゃ。彼が目覚めた。こちらはまだ動けそうにない。そちらの準備が終わったら連絡をくれ。・・・大丈夫じゃ、意識もハッキリしておるようじゃからな。私の心配までさせてしまったよ。信用できる者には伝えておいてくれ。」
さて、まずは色々と教えておかなければな。先は長いのお。