「自分が何を言っているのか分かっているのか!」
「言ったはずだ。これ以上は待たない。」
その部屋では二人の男が話していた。
「何度も言ってるじゃろう!今の彼はそんなことが出来る現状ではないと!酒呑童子との戦闘で無理に力を使ったせいで未だに体が安定していない。その上体を無理矢理変えたせいで栄養失調も重なっているんじゃぞ!」
老人は声を荒げて反論している。
「今更だな。神便鬼毒を飲んだのだろう?ならアレは既に次の段階に移行出来るはずだ。違うか?」
どこか馬鹿にしたように嗤いながら男は続ける。
「神便鬼毒は鬼には毒となり人には薬となる。だが、アレが飲んだのなら話は別だ。お前が反対するのであれば俺が用意した連中でやってもいいんだぞ?いいのか?」
「言葉には気をつけろよ。小僧。」
「ハッ。いくら脅そうと無駄だ。そもそも貴方に拒否権はないことを忘れたか?数少ない『切断と縫合』の術式。それを極めた貴方が参加しなければアレが無事ではすまないだろう?」
数秒の沈黙が流れ、老人が折れた。
「外道め。これほど殺したいと思ったのは貴様が初めてだ。」
「それは光栄だ。現役を退いたとはいえ貴方にそこまで言って貰えるとは。」
「段取りは私が決める。口を出すなよ?」
「初めからそう言っているだろう。期限さえ守れば他はどうでもいいと。」
「貴様ッ!あの子をなんだと思っている!」
その言葉を聞いた瞬間、男が老人の首を掴む。そして冷たい刃を感じさせる声で告げる。
「器、化け物、兵器。どんなモノになろうと俺には関係ない。目的を果たせればそれでいい。その後は俺の知ったことではない好きにしろ。だが、怪異は殺してもらう。一匹残らず、根絶させる。その為にアレが必要だった。それだけだ。」
首から手を離すと男は部屋から出て行く。
「・・・これまでか。彼らには負担を掛けるが、仕方あるまい。」
老人は足早に準備に取り掛かる。
「えっと、貴方が鬼道さん、ですか?」
「ああ、俺が鬼道祓だ。そう警戒しないでほしい。」
俺は一週間寝ていたらしく起きたらいきなり偉い人と話す事が決まっていた。なんか清水先生が渋い顔してたけどどうしたんだろ。にしても目の前にいる鬼道祓という人はなんというか、生きてはいるけどそれだけって感じる人だった。まるで、そう、
「生きながらにして死んでいるようだ。」
は?
「ああ、気にするな。よく言われているから君もそう思っているんじゃないかと考えただけだ。」
「あ、いや、すみません。失礼ですよね。会っていきなりこんなこと考えてて、」
「いや、第一印象は重要だ。相手は信用に値するのか、自分にとって害があるのか。それとも今すぐに殺すべきなのか、と俺は考える。」
最後のがなければなあ。
「そう、ですか。・・・それで僕に話したいことがあるというのは、」
「それについてだが、ハッキリ言おう。俺は君に実験を施した張本人だ。」
ええ、マジかよ。
「俺が話したいのは、君に機械なってほしい、ということだ。」
「機械、ですか?」
「ああ、怪異を殺す機械だ。感情を持たず、最適な判断を下し怪異を殺す。そんな機械だ。」
思ったより物騒な話しだった。まあ、一応聞いとくかな。
「どうしてそんな機械が必要なんですか?」
「・・・私怨だ。怪異を滅ぼすには俺では無理だった。だからそれを成す為に君には人柱になってもらいたい。」
なるほど?
「俺の意見に賛同する者は少ない。倫理や道徳、そんなものを掲げても奴らを滅ぼせない。それを分かっていない連中が多過ぎる。怪異は年々強力な個体が増え始め、被害も大きくなっているというのに上は現状維持で良いと思っている。維持する程の平和を築けていない事を理解していない!」
これはだいぶストレス溜まってるなぁ。というか今外はそんな事になってんの?知らなかったんですけど。あと電話鳴ってますけど出なくて良いんですか?あ、出るの?
「少し待て。何があった、何?・・・少し席を外す。清水を付けておくが死にたくないのであれば部屋からは出るな。」
「何があったんですか?」
「知らなくていいことだ。」
急な仕事でも入ったのかな?
「予定を繰り上げことになった。今から突入する。」
最近はあまり鳴ることのなかった電話から帰って来た如月誠は真剣な表情でそう告げた。
「何があったんですか?」
「鬼道主任が動いた。清水さんからの連絡だから間違いない。染谷君は完全武装だ。瞳君は予備の符も使い切る可能性があるから武器も用意してくれ。」
「分かりました。すぐに用意します。」
「私は他に頼れそうな所に掛け合う。皆も急いで準備をしておいてくれ。」
「課長。緋薙は?」
「途中で合流する。出張先の仕事は終わっているから彼女の術式なら間に合うはずだ。」
「了解。」
如月誠は電話を掛けながら一つの書類を見ていた。今回の騒動の原因である一枚の報告書。
「