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第七概念研究所はいつもとは打って変わって物々しい雰囲気に包まれていた。その原因は今受け付けで待たされている男にあった。
「申し訳ございません。鬼道主任に確認しますので少々お待ちを。」
「おや、そうですか。わざわざすみません。」
「では、少しお待ち下さい。」
受け付けの職員は奥に行くとすぐに電話を繋ぐ。
「如月誠です。恐らくアレについてかと。」
その言葉に舌打ちをした鬼道祓は少し考えてから返す。
「時間を稼げ。俺が向かうまでそこにいさせろ。」
「かしこまりました。」
職員は受け付けに戻ると笑顔を浮かべながら応対する。
「お時間を取らせてしまい申し訳ございません。」
「いえいえ、急に来た私が悪いのですからお気になさらず。」
「ありがとうございます。鬼道主任から今こちらに向かうのでここでお待ちになって欲しいと。」
「そうですか。・・・いや、私が行きましょう。鬼道主任のご厚意に甘え過ぎてしまいますから。鬼道主任は今どちらに?」
「詳しい場所まではわかりません。ですが、ここは広いので入れ違いになってしまうかもしれません。やはりこちらでお待ちになった方が良いかと。」
「・・・分かりました。」
如月誠は席に座り、電話を掛ける。
「染谷君、突入準備だ。鬼道主任と会うことが決まった。」
「了解。清水さんはどうです?」
「それなんだが、さっきから繋がらないんだ。もしかしたらバレたのかもしれないから清水さんの協力は得られないと考えておいてくれ。」
「分かりました。他の奴にも伝えておきます。」
「ああ、ありがとう。」
頭の中で先の事を考える。
(思ったよりも時間が掛かってしまった。やはり、情報通りか。上手く行くと良いんだが、鬼が出るか蛇が出るか。私は運が良いほうじゃないから少し心配だね。)
時間にして十分程で目的の人物は来た。
「申し訳ない。時間を取らせてしまった。」
「いえいえ、急に来てしまった私が悪いのでお気になさらず。実は少々お話したいことがありまして。」
「なるほど。それで、そちらの方は望月瞳さんで合っているかな。」
「ええ、彼女は付き添いで来てもらったんです。同席しても構いませんか?」
そこで初めて鬼道祓が逡巡したのを如月誠は見逃さなかった。
「ああ、構わない。」
(あと少しだ。瞳君に確証を取ってもらおう。)
「ありがとうございます。では、単刀直入に聞きます。
「・・・」
「答えて下さい。貴方は九十九一君にこの実験をしたんですか?」
(さあ、どう出る?)
少しの間鬼道祓は沈黙した。
しかし
その口から出た言葉は
「如月課長。一歩、遅かったな。」
最悪に近いものだった。
「総員突入!」
「迎撃しろ。」
如月誠と鬼道祓の言葉は同時に発せられた。
「全員突入だ!被害は最小限に抑えろ!」
染谷燈が吠え、対策課が押し進む。中では研究所の職員と対策課の乱戦になりつつあった。その乱戦の最中人の間を縫うように動く人影が三つあった。
「瞳君は読心を使って一君を探してくれ。私は染谷君と動いて鬼道主任を追う。」
「分かりました。二人とも気をつけて下さい。」
「大丈夫大丈夫。俺はともかく課長はそうそう負けないよ。いざとなったら俺は逃げるから。」
「染谷さんは相変わらず素直じゃないですね。」
「ハハッ、読心はずるいねぇ。目の調子は大丈夫?」
「問題ありません。では、私は先に。」
「頼んだよ。瞳君。」
「九十九君。着いて来なさい。」
「どこに行くんですか?」
「ここから逃げるんじゃ。君を安全な場所まで連れて行く。」
「上が騒がしいのと関係があるんですか?」
「まさか、聞こえるのか?いや、今はいい。とにかく着いて来なさい。」
早くこの子を逃さねば手遅れになってしまう。そうなる前にどうにか・・・!
「どこに行くつもりだ。俺は部屋から出すなと言ったはずだが?」
「なぜ、貴様がここに・・・」
「そんなことはどうでもいいだろう。まったく、物事がようやく進むと思えばすぐこれだ。俺はつくづく運がないな。」
この男から逃げることは難しい。だが、足止めをするにしても場所が悪い。
「無駄な話は終わりか?なら早く渡せ。」
「・・・仕方あるまい。」
老い先短い爺の使い所か。
「一君、少し下がっていてくれ。ちと、危ないからの。」
「自棄にでもなったか?全盛期ならばともかく、今のお前が俺を殺せるとでも?」
「そうじゃな。今の私では貴様を殺せんじゃろう。」
しかし
「だがな、私にも意地がある。」
「そうか・・・命を賭けるべき場を間違えたな。」
虚空から一本の刀が現れる。
その刀は刃毀れが酷く、血で薄汚れていた。
「覚悟しろ。儂は貴様の腕か足を捥ぐまでは死なんぞ。」
そこには白衣を着た老人の姿はなく、ボロボロの外套を纏った亡霊が立っていた。
「そういうことか。
「
所詮これは借り物だ。私では扱い切れなかった力だ。代償も満足に払えず、ただの一度も真価を出せなかった。
「さあ、最期の言葉は考えたか?」
「本当に、面倒なものだな。」
さて、どれだけ傷をつけられるか。