「そんなに身構えなくてもいいよ。今回おれたちはあなたに用はないから」
俺が直死の魔眼持ちと思われる学ランに警戒していつでも動けるように体制を低くしていると、その後ろ―――俺の死角となっていた部分から小柄な黒髪の少年が出てきてそう言った。『おれたち』と言っていたことからこいつもまた転生者なんだろうが、どう見ても中学生、下手すると小学生くらいの年齢だろう。外人っぽいから顔立ちだから俺の目測は正確じゃないだろうが、そこまで離れてもいないはずだ。そう考えると生意気なやつに思えてくる。だが、転生前は歳はそこまで離れてないはずだからそこまで目くじらを立てるほどじゃあないのだろう。せいぜい離れているといっても前世も含めるとみんな大人なわけだしな。
俺がやつの言葉に何も返さずに訝しげな視線を送っていると、そいつは俺の反応がないのが気に入らないのかふくれっ面をしていたが、得心がいったような顔をすると自己紹介を始めた。
「ああ、おれたちが何者かわからないから警戒してたんだね。ごめんね、気が利かなくて。おれは
そう言ってあははーなんて笑ってみせる赤月。正直、赤月が神器の説明をしだした頃から直死持ちのやつと一緒に何言ってんだこいつ的な目で見ていたのだが。というかこいつ口軽いな。自分の弱点まで一応牢村に敵認定された俺に向かって話してるし。いいのかおい。
そんな思いを込めて赤月の横の直死持ちのやつの目線を向けると、やつは手を顔に当てて俯いていた。あ、ため息吐いてやがる。
「あ、こっちはおれたちの仲間で
俺が直死持ちを苦労してるんだな、なんて哀れみで見つめていると、赤月が何を勘違いしたのかそいつの紹介まで始めた。ほう、それはいい情報を……じゃない、お前そんな勝手に言いふらしてもいいのか。横見ろよ。なんか肩回して準備運動始めたぞ。おまけにゴツイナイフまで取り出し―――っておいまさか殺っちゃうのか? いくら死徒だからって直死の魔眼持ちに斬られたら流石に死ぬだろう。
そんな感想を抱きつつ、俺は東恩納が赤月の首を刺しながら何やら説教しているという普通ならありえない光景を見ている。よく見ると東恩納の眼が黒くなってる。流石に直死の魔眼は使っていないようだ。刺されている赤月に至っては、痛い痛いなんて笑いながらはしゃいでいる。いや、笑い事じゃないレベルで血ぃ吹き出してるんですけど。こっちが気分悪くなるくらい血の匂いが充満してるんですけど。
俺が口元を抑えて顔色を青くしていると、二人はこちらの様子に気が付いたのか改めて辺りを見渡した。飛び散った血、未だ吹き出す血、さらに足元には血の池……。おまけに周囲は先ほどの俺と牢村の戦闘でところどころ壊れている。ホラーだ。
「あー・・・悪いな。いつもこんな感じだからつい」
「ごめんねー。おれたちの中じゃ日常茶飯事だから気にしてなかったけど、初めて見る人に取ってはスプラッタだよね」
東恩納、赤月の順でそれぞれ謝罪してくる。ていうか、
「これが日常茶飯事って赤月お前どんだけやらかしてんの!? さっきも聞いてただけで俺何も喋ってないのに勝手に情報ペラペラ話すし、お前もしかして頭軽い子なのか?」
思わず突っ込む。そしてついでとばかりに軽く貶す。それを聞いても東恩納の方はため息を吐いただけだし、赤月に至っては笑っていた。……ため息吐くと幸運が逃げるんだぞ、と口には出さないが内心で突っ込んでおく。
「あっははー。いやまあ、それもこれも神器のせいだよ、うん。おれが小学生の頃に発動しやがったせいで、おれは頭脳も小学生レベルなんだよね。普段生きていく中では別に困りはしないし、言葉喋るだけなら前世の経験があるから余裕だけど」
「そりゃ困らないだろうよ、引き籠もりめ」
赤月の弁明に、東恩納がしっかりとツッコミを入れる。というか引き籠もりなのか。
「しょうがないじゃん日光当たると死ぬし」
「世の中には夜間学校というのもあるぞ」
「えーやだよ、こんなナリで言ったらいじめられるじゃん。それに夜間ってガラ悪いって聞くしー」
「そんなんだから引き籠もりなんだよお前……」
突然二人で喋りだす。なんか聴いてるだけだと引き籠もりと親との会話に聞こえてくる。こいつらほんとに同年齢かよ。
「っと、こんなこと言い争いにここまで出張ってきたわけじゃないんだ」
突然東恩納がそう言ってこちらに―――俺の後ろにぶっ倒れてる牢村の方に向き直る。
「あー、そうだったそうだった。おれたちに相談もなく勝手に出て行った挙句、自滅気味にやられちゃったおばかさんを回収しに来たんだった」
そう言って赤月もこちらに向き直る。
「あー……。よくわからんが、今戦う気はないってことでいいのか?」
「もちろんだともー。最初に言ったとおり、今回おれたちはそのばかの回収に来たんだよ。それさえ終わればすぐにでも撤収するって」
そう言って俺の質問に答える赤月。だけどだな、
「いやその前にお前の血片付けていけよ」
「えー……んもー、わかったよー。んじゃまあ、てっとりばやく……!」
そう言った赤月は何やら魔力を高めている。既に
「あ、おいまさか!?」
その様子を見ていた東恩納が突然あわてたように直死の魔眼を発動させつつナイフを構えた。……え、何危ないことしようとしてるわけ?
俺も慌てて複写眼を発動させつつ、前方に魔力を集めておく。
「
ごう、と魔力が密度をもって周囲に溢れる。禁手化だと!? だがそのわりには何も変わってるようにも見えないが……。
俺がそんな風に思っていると、赤月は左手を前に出しながら告げる。その左腕は黒く染まっており、その上から赤い文様が浮き出るようにして描かれていた。……、さっきまで普通の腕だったよな? てかあれ、複写眼で見てるからわかるけど体内に封印してある何かを解放する術式じゃねーか。てことはつまり―――!
「
ドガァァァァァァン、と。まるで雷でも落ちたかのような轟音と閃光をまき散らしながら現れたのは、雷の獅子。バチバチと帯電しながら、主である赤月の指示を待っている。
「このへんに散らばってる血、消し飛ばして! あ、でも周囲になるべく被害の出ないように!」
赤月がそう指示すると、レグルス・アウルムはその前足を足元の血だまりに叩きつけた。
ドッゴォオオンッ。
「うおっ」
凄まじい音をたてながら爆発を起こしたことに俺は思わず声を漏らしながら両手を顔の前にかざした。ついでとばかりにその前に魔力を収束・圧縮して壁を創る。爆風が通り過ぎたことを確認すると、俺は恐る恐る先程まで血まみれだった道路に目を向けた。
―――血はなかった。ただし、道路もなかった。
そこにあったのは、大きなクレーターのみ。周囲の家(空家でありますように!)も巻き込んで吹き飛ばしている。
そしてそのクレーターの中心にいるのは、レグルス・アウルムを侍らした吸血鬼、赤月。
赤月はレグルス・アウルムを消すと周囲を見渡し、頷いた。
「よし、綺麗になった!」
「なにが、よし、だゴラァ!」
満足気な表情を浮かべてかいてもいない額の汗を拭う仕草をしていた赤月に、突然上空から東恩納が蹴りかかった。ドカッ、と鈍い音を立てて赤月の頭が地面に叩きつけられる。起き上がろうとする赤月の頭を踏みしめながら、東恩納は叫ぶ。
「てめえどこをどう見たらこの状況でよしだなんて言えるんだよあほか! どう見たって悪化してるだろうが!」
全くだ、思わず内心で東恩納に同意する。
「今日という今日は許さねぇ! お前今日晩飯抜き!」
「そんな!?」
東恩納が飯抜きを宣言した途端、ガバッと擬音がつきそうな勢いで東恩納の足ごと頭を浮かせた赤月が悲しげな声をあげる。踏みしめていた赤月が起き上がった影響で数歩よろめいた東恩納は、そんな赤月に向かって命令する。
「どうしても飯が食いたいならさっさと
「りょ、了解っ!」
そう言って赤月は俺の横を猛スピードで駆け抜けて牢村を抱えると、屋根の上を飛び跳ねてどこかへ跳び去ってしまった。ポカン、とそれを見送った俺に東恩納が話しかけてくる。
「あー、悪かったな。身内が迷惑かけて。今度菓子折りでももって改めて謝罪に行かせてもらうわ」
「え、ああ、いや、そこまでしなくても大丈夫だぞ?」
「気にすんな、こういうのは誠意が大事なんだ。それじゃ、そういうことで」
そう言って東恩納も屋根の上を飛び跳ねてどこかへ消える。……なんだろう、屋根の上通るのが流行ってるのか?
そんなことを考えている俺を、
「やっべぇ。えっと、自転車自転車……」
放置されていたにも関わらず奇跡的に無事だった俺の自転車を見つけると、俺はそこに駆け寄りつつ、魔力収束をやめて体内の魔力を散らす。このままだと犯人に間違えられそうだし……。
完全に魔力を散らして魔力が底をついたのを確認すると、重い体を無理やり動かしながら自転車にのって全速力で帰宅した。
転生者No5
赤月湖上―あかつきこじょう
男
黒髪黒目 顔立ちは外人っぽい
ショタ
備考:特典は『第四真祖の力』
魔力は特典の関係上豊富
眷獣は禁手化しないと使えない
転生者No6
東恩納紫希―とおのしき
男
黒髪黒目 美形 遠野志貴に似ている
苦労人
備考:特典は『直死の魔眼』
魔力皆無
ナイフの取り扱いがナイフ術の達人を超える天才