俺が思わず眷属入りを即答で肯定してしまい、辺りが沈黙に支配される。どうやらグレモリー先輩も俺が即効で悪魔になることを了承とは思っていなかったらしく、ポカンと口を開けて固まっている。気まずくて思わず視線を逸らすと、イッセーとばったり目が合う。目は口ほどにモノを言う、との言葉通り、イッセーの視線は明確に俺にある言葉をイメージさせた。
―――同士よ、と。
…………。……。
ぁ、もしかして、俺もハーレムなんぞを目指してると誤解されたか!?
俺がさっきまでのイッセーの言動を思い出して愕然としている間にも、イッセーの雰囲気はわかりやすいほどに明確になっていく。
―――言葉はいらない。ただ、どちらが先に
普段よりも圧倒的に男前な顔になりつつそんなことを目で語っているイッセーは、いつの間に立ち上がったのか一人腕を組みながら仁王立ちしている。負けるつもりはない、とでも言いたいのだろうか。そんなイッセーの空気に触発されたのか、イッセーの隣に座っている姫島先輩もあらあら、なんて笑いながら微笑ましい子でも見るような目でこちらに微笑んでくる。イッセーの後ろに立っていた木場まで苦笑しつつこちらを見てくる。
「……いやらしい」
極めつけに、塔城さんがこちらを横目で見つつそう呟いた、って!
「いや、ちょ、待った! 俺は別にそこの変態と同じようにハーレムなんぞ望んじゃいない!!」
これ以上の印象悪化を防ぐためにも、俺は立ち上がりつつ全力で叫ぶ。否定する。むしろ拒否する。が、誰ひとりとして信じてくれた様子はない。イッセーなんて、隠さなくてもいいのにな、なんて言いそうな顔でこちらに笑いかけてきた。右手で首を刈る仕草を返す。するとイッセーは、その仕草を宣戦布告とでも受け取ったのか、負けないぜ! なんて宣言しながらこちらを指さした。俺はもう一度誤解を解くために口を開き―――、
「―――それで、イッセーと同じようにハーレムを築くことが目的でないのなら、どうして即答で返したのかしら?」
―――俺が言葉を発するよりも先に、グレモリー先輩が俺に向かってそう問いかけてきた。
「なんでってそりゃぁ―――」
この問いにも即答しようとして、途中で詰まる。これ、塔城さんと近付けるからなんて言えないじゃん、本人いるし!!
再び混乱しかけたが、すぐに一つの事実を思い出す。
「―――どこかの庇護下に入らなきゃ殺されるから、だな」
そう、俺は既に思い切り原作に関わってしまった。ならばこそ、次はあの
―――
それはつまり、今の俺と赤月との間に、隔絶した力量差があるということにほかならない。仮にも
前に会った時は、俺はまだ明確に原作に関わったわけではなかった。確かにイッセーが死ぬ場所に居合わせたが、これもイッセーの死が確定したあとに俺は現れた。悔しいことに、間に合わなかったからだ。だが、これによって俺はまだ明確に原作に関わっているわけではないが完全に原作から離れているわけでもない、言わばグレーゾーンにいたわけだ。しかし、今この場にいることで俺は明確に原作に関わることとなった。だから、次は容赦なく殺しにかかってくることは容易に想像できる。
「殺される、ね。随分とまあ物騒な話だけれど、差し支えなければどんな相手に狙われているのか、聞いてもいいかしら?」
「簡単な話だ。俺が
即答する。グレモリー先輩には悪いが、あえてわかりにくい表現を取らせてもらった。流石に転生云々を話すのは気が引けるし、何より自分が誰かの創作したキャラクターだなんて言われたら腹が立つだろう。自分がこれまで歩んできた道のりは、そしてこれから歩むであろう道のりも、すべて決められているんだと言われるに等しいのだ。俺なら腹が立つよりも先に、『怖い』と思う。
そんなことを考えていると、俺が殺される、なんて口にした時から固まっていたグレモリー先輩以外の人たちが再起動を果たした。
「と、特別ってどういうことだよ。どう主義主張が違えば殺す殺さないなんてことになるんだよ!」
イッセーが思わずといった風に叫ぶ。その顔は困惑に満ちていた。だからこそ俺は、あえて軽い口調で答えを返す。
「お前も
「それは無理、ていうか絶対嫌だけど!! 俺も特別って、もしかして
「―――いえ、そうじゃないはずよ」
絶叫から一転して静かに問いかけてきたイッセーの言葉に答えたのは、俺ではなくグレモリー先輩だった。
「え、それはどうしてですか? リアス先輩」
「部長とお呼びなさい。あなたもこれからは我がオカルト研究部に所属してもらうのだから」
お姉さまはダメですか、できれば部長の方が嬉しいわね、分かりました部長! なんて小芝居を挟んでから、グレモリー先輩は静かに語りだした。
「話を戻すけれど、イッセーが持つ神器は
「ク、アハハハ……」
笑う、笑ってしまう。複写眼が、イッセーの神器よりも特別? ああ、ある意味ではそうだろうさ。この世に本来存在しなかったはずのモノ、という点では複写眼は圧倒的にイッセーの持つ
つまり、俺よりもイッセーの方がトクベツなのだ。
「……なんで笑うんですか?」
唐突に、隣に座っている塔城さんが聞いてくる。その声で、俺はようやく笑うのをやめてソファに腰を下ろした。
「いやだって」
笑うのは意識して抑えたが、まだ口元はつり上がっているのが分かる。だが、これはどうしようもなかった。なので、俺はそのまま塔城さんに答える。
「まさか悪魔が、
そう言って俺が視線を向けた先は―――イッセー。正確には、その左腕に未だ装着されたままの赤い籠手。俺が視線を動かしたことでほかのみんなもイッセーを見る。俺たちが一斉にイッセーを見たものだから、イッセーはひどく狼狽した様子だ。だが、そんなことはお構いなしに、俺は続ける。
「イッセーのその籠手から微かに漏れ出している内力は、極微量なのにひどく力強い。俺がこれまで相対してきたすべてが塵芥にしか感じられなくなってしまうような、究極に上質な内力だ。こんな力強い内力を宿した神器が、ごくありふれたもの? 馬鹿言わないでくださいよ。この内力は、
それは即ち、『堕天使』レイナーレ、『白式使い』牢村壱火は言うに及ばず、
「あなたを殺そうとしてきた奴ら、ってレイナーレよね? あの程度の堕天使なら私でも消し飛ばせるわ。そんな存在が霞む、って言われても正直驚かないわよ? いくらありふれた龍の手とはいえ、封印されているのはドラゴンなんですもの」
そう言って腕を組むグレモリー先輩は、何やら不機嫌そうだ。まあそれもそうか。なにせ、面と向かってお前はその程度か、と言われたのと同義だもんな、俺の言葉。というか、あれ? 牢村たちとの戦闘について把握してない、のか?
「何を勘違いしているのかは知らないけど、俺が言ってるのはそんなチャチなやつじゃないよ。
俺がそう言うと、イッセー以外のオカ研メンバーは顔を険しくした。その様子を見ていたイッセーが慌てて真剣な顔を取り繕うが、遅いからな?