「昨日、俺を襲った
そう考えていると、驚愕から立ち直ったらしいグレモリー先輩が口を開いた。
「……ええ、まあ。だけど戦闘中と思われる間は結界が張られていて、中の様子はわからなかったのだけれど。戦闘後と思われる現場と、その場に立っていたあなたの姿を確認しているわ。相手が誰なのか、どうして付近の空家ごと大きなクレーターを作るような戦いをすることになったのか、わからないことだらけよ」
そう言ってため息を吐くグレモリー先輩。
「おまけに関係者であろうあなたまで後処理をせずに立ち去ってしまうものだから、修復に私たちが出る羽目になったのよ」
違うんです、俺じゃないんです。あれは全部あっちが勝手にやったんです。俺はやってない、俺は悪くない!
そんな言い訳が頭に浮かんだが、結局申し訳なくなって思わずその場で頭を下げる。
「ゴメンナサイ」
「ああ、別にいいのよ。この街はグレモリーの管轄だしね。あの程度の後始末は日常茶飯事だわ」
この人実は悪魔じゃなくて天使かなにかじゃないだろうか。
そんなことを思ってしまうほど器の広いところを見せ付けてくれたグレモリー先輩だったけど、次の一言でやっぱり悪魔だと認識し直した。
「謝ってなければ、どうしてくれようかと思っていたけれど」
背筋の凍る笑顔で囁かれた言葉で、心底言い訳なんかせずにとにかく頭を下げておいて良かったと思った。怖い、怖いですグレモリー先輩。やっぱりあなたは悪魔だ。
「あらあら、それでは私の出番はなしですの? せっかく新しい鞭を取り寄せましたのに」
「鞭!?」
微笑みながら残念そうに呟いた姫島先輩の言葉に、イッセーが反応した。ああうん、見た目からは想像できない言葉だよな。でも原作通りならその人ドのつくSだぞイッセー。俺は原作という知識があったからそこまで驚きを顔に出さなかったけど、不意打ちでそんなことを明かされたイッセーはすごく驚いた表情をしている。
「はいはい、鞭はまた別の機会にね。それで? 昨日、あの場所で一体何があったのかしら。教えてもらえるのよね?」
グレモリー先輩がそう言って姫島先輩を制したあと、こちらに向かって問いかける。助かった、鞭とか出されたら逃げるしかなかったぞ。そう内心安堵しながら、俺は昨日のことを思い出しながら語りだす。
呼び出しが昨日だと思っていて遅くまで学校に残っていたこと、その帰りに白いパワードスーツのような神器を装着した男に襲われたこと、どうにか撃退して一安心していると男の仲間が二人現れて男を回収していったこと。そしてその際に、仲間の一人が禁手を発動させて血痕やらなんやらを消し飛ばすために空家ごと吹き飛ばしてクレーターを作ったこと。
さり気なくあの惨状はあいつらが悪い、と責任を全部押し付けつつ事情をうやむやにしたまま事実のみで説明した。何故襲われたのか、とかといった質問には、俺がいると都合が悪いと言っていたと返すことで返答とした。嘘はいってない、一応。牢村が確かそんなこと言ってた気がするし。あれ、俺という存在は都合が悪い、だったかな。…………。……まあいいか。
「白いパワードスーツのような神器……、雪片弐型と呼ばれる機械的な刀……、“零落白夜”……。飛行可能で、防御無視の斬撃……? 『白式』、聞いたことがない神器ね……。まあ、こちらはいいわ。問題は禁手である『
話を聞き終えたグレモリー先輩が、自身の知識を思い出すように口にしながらそう呟いた。姫島先輩がそれに頷く。木場は苦笑しているものの否を唱えることはしなかったし、塔城さんに至っては片手を閉じたり開いたりしていてやる気十分、といった感じだ。って!
「え、もしかしなくても戦うつもりですか!?」
俺は思わず叫んでしまった。その内容を聞いて、イッセーがぎょっとした顔でこちらを振り向く。
「当然でしょう。この街は我がグレモリー家の管轄なのよ? 都合が悪いからと言って、少し調べれば一般人であることが明白なあなたを襲うような連中がいるとわかったのよ? 動かないわけがないでしょう。いないとは思うけれど、もしこの街にあなた達以外の神器持ちの一般人がいたら危ないしね。放ってはおけないわ」
「だけど……!」
あれ、やばい正論過ぎて反論できない。自分の領地内で人が襲われて、それが領主に伝わって何も行動しないわけがないし……。いやでも、関わらせるわけにはいかな……あれ? そういえば俺なんであいつらと原作メンバー離そうとしてんの? むしろ原作メンバーけしかけるくらいでいいんじゃね? あいつら傍観派なわけだし? 自分だけでどうにかしようとするより、グレモリー先輩に動いてもらったほうが手っ取り早くね? ……考えれば考えるだけ止める理由がなくなってきたな。危険云々とか、悪魔相手に何を今更って言われるだろうし。
―――完全に止める理由なくね?
…………。……よし。
「やっぱやりましょうか! 俺も微力ながら手伝います。乗りかかった船ですし!」
爽やかに、笑顔でそう告げる。
「あら、助かるけれど、いいの? 戦いになると思うけれど……」
「問題ないです。一回はなんとか退けてますし、逃げるくらいならなんとかなりますよ。それに、いくら話をしたとはいえ人相を直接知っているのは俺しかいないじゃないですか」
それに原作メンバーけしかけて俺一人でいると暗殺されそうだし! 是非連れてってください。
そんな思いが通じたのか、少し悩んでいる様子だったグレモリー先輩は、俺に無茶をしないこと、と言って俺の参戦を許可してくれた。やっぱ俺が一回どうにか撃退した事実が効いたらしい(多分)。じゃなきゃ素人を戦闘の場に連れて行くなんてしないだろうしな。自分の身は自分で守れると判断されたんだろう。
「とはいえ、流石に相手の居場所がわからないしね。今は気にせず普段通りに過ごしましょう」
いかにもこれから戦い! って感じの雰囲気だったが、グレモリー先輩がそう言って切り替えるように明るく言い放った途端オカ研メンバーの三人は雰囲気をふっと柔らかくさせる。どこか居心地悪そうにしていたイッセーも、ほっと安堵している。
「さて、それじゃああなた―――ライナ、と呼ばせてもらっても?」
「あ、はいどうぞ。こっちは部長、でいいんですよね」
「ええ。じゃ、ライナの悪魔転生を始めましょうか」
そう言ったグレモリー先輩は、懐から赤いチェスの駒をいくつか取り出した。どれも
うだうだと頭の中で思考していると、いつの間にやら悪魔転生の魔法は佳境に入っていた。
「―――新たな生に歓喜せよ!」
ゴウ、とグレモリー先輩の紅い魔力が俺を包む。その際、四個の兵士の駒が俺の胸に溶けるように飛び込んでいく。それらを中心として俺の体が熱を発し、体が作り替えられていくのが分かる。痛くはない。熱くもない。例えるならば全身マッサージをされているかのように心地良い。
ふ、と。体を包んでいた魔力が切れる。と同時に、俺は今までとほぼ同じなのに決定的に違う体を流れる内力に気がついた。もどかしく、でもどこが違うのかわからなくて思わず力を入れると、背中からバサッ、と翼が生えた。黒い、悪魔の翼だ。意識すると動かせるのが分かる。手を回して触れてみると、ちゃんと神経が通っているらしく、触っている感覚が分かった。なのに普段は消えていることにイマイチ納得がいかないが、そういうものなのだろう。
そういえば。
「悪魔って、角と尻尾も生えてるものだと思ってました」
ないんですね、と思わず漏らすと、全員から笑われた。え、悪魔って言えば角・翼・尻尾の三つが揃ってるイメージしない? しない? さいですか……。むぅ、解せぬ。
「とにかく、これからよろしくね。イッセー、ライナ」
グレモリー先輩がそう言って俺とイッセーに笑いかける。俺はイッセーと顔を合わせてから頷き、揃って口を開いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
…………。
ま、まあ揃わなかったが言ってることは大体同じだしよしとしよう。コンビネーションは追々ってことで……。でもいつか絶対息合わせてやる。
クスクスと女性陣+木場が笑いを漏らす中、気まずそうな顔をしたイッセーを見ながらそう誓った悪魔初日であった。
だれてきた、うーあー