ハイスクールD×D 転生者たちの宴   作:七忍ルキ

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過去とこれから

 俺が前世のことや、転生前のやり取りを思い出したのは六歳の時だった。

 

 きっかけは両親がトラックとの交通事故で亡くなったことだ。相手側の居眠り運転、らしい。警察からかかってきた電話でそのことを聞き、俺はショックで目の前が真っ黒になった。後から聞いた話だが、俺はその時狂ったように泣きながら笑い続けていたそうだ。

 目が覚めたら病院にいた。何がなんだかわからなくて、呆然としながら鏡に写っている俺の眼に五芒星があるのを見つけて、全てを思い出したんだ。そして、特典についても理解した。

 

 ―――『複写眼(アルファ・スティグマ)』。

 発動中、瞳の中に朱の五芒星が現れ、空間や物体が持つ魔力を視認でき、他者が展開した魔法の構成を展開途中でも(たとえ行使を中断しても最後まで)読み取り、自ら行使することができる魔眼だったはずだ。残念なことに俺はこれについてそこまで詳しいわけではないが、確か開眼は五~六歳の頃で、精神的ショックで暴走してしまう危ないシロモノだったと思う。だからこそ、

 

「なんで俺、暴走しなかったんだろ……」

 

 そう、複写眼は精神的ショックを受けると暴走するはずなのだ。そして暴走したら破壊を撒き散らし止まらないはずなのだが、こうして俺は生きている。

 呆然と自分の手を見ていると、周囲に漂う魔力(と思しきもの)よりも自分の中に見える魔力が少ないことに気がついた。

 

「……え? いやいやいやいや、まさかそんな、え、でも、ぇぇ?」

 

 もう一度自分の魔力を見る。空間の魔力を見る。やっぱり空間の魔力の方が濃い、気がする。

 

「えっ、じゃあ暴走しなかったわけじゃなく、暴走したけど被害がでなかっただけ……? いや、そもそも魔力足りなくて暴走起こそうとしたら意識が落ちたとか……? うわありそう」

 

 なんてこった、これじゃあもしこの世界がバトル系なら速攻殺されてしまいそうだ。

 

「というか俺、前世のこと思い出したのに全く未練とかないな」

 

 あの自称神が何かした、っていうのも考えられる。でも多分、

 

「俺も、こういう転生とかしてみたかったし、だから未練とかないのか……?」

 

 まあ、卒業できたと思っていた厨二病が卒業できていなかった、ってことだろう。多分。今だって今世の両親死んだっていうのに悲しみに暮れるでもなくお気楽な思考を―――。

 

「ぁ……」

 

 両親が死んだ。そう考えた直後涙が溢れてきた。

 

「う、グスッ」

 

 涙が止まらない。それどころか、いくつもの両親との思い出が頭に浮かんでは消えていく。

 膝を擦りむいて泣いている時に慰めてくれたお母さん。忙しかっただろうに、俺のわがままを聞いてくれたお父さん。これは俺の記憶じゃない、転生後の“俺”の記憶。そうわかっていても胸に来るものがある。優しく、暖かかった二人はもういない。そう考えると、余計に涙が止まらなくなる。

 

「ヒグッ、うぅ……!」

 

 死んだ両親に泣き顔を見せたくなくて、でも涙が止まらなくて。俺は声を押し殺して泣いた。

 

 

 しばらく泣いたあと、俺は静かにナースコールを押した。このままここで悲しみに暮れているわけにはいかないと思ったから。もちろん吹っ切れたわけじゃない。だけど、このまま俺がここで腐っていたら、ここまで育ててくれた両親に顔向けできないと思ったのだ。

 

 

 その後、やってきた大人の人たちから、両親の死から既に二週間が経っていることを聞かされた。既に葬式も終わっており、俺は叔父の家に引き取られることとなった。

 

 叔父の家に上がったとき、自分では一度泣いたから大丈夫だとおもっていたけど、仏壇に飾られた両親の遺影を見て、また泣いた。食欲もなくて、とても情緒不安定だった俺を文句一つ漏らさずに育ててくれた叔父には感謝している。

 叔父の家に来た当初は感情が制御できずに、よく癇癪を起こしていた。けれど、叔父はその度に慰めてくれたし、励ましてくれた。そのおかげで、中学に入る頃にはかなり感情を制御できるようになっていた。この調子で行けば、近いうちに両親のことを乗り越えられる、と思える程に。

 しかし。

 

「兵藤一誠です。好きなものはおっぱい!絶賛彼女募集中だ!気軽にイッセーって呼んでくれ!」

 

 ああ、神よ。貴様はそこまで俺が嫌いか。

 周りで男子の、「うわあいつ言いやがったよ」的な囁きと、女子の「うわきもっ」的な囁きを聞き流しながら、さっき自己紹介をした兵藤を見る。兵藤の顔は、これからの中学生活で彼女が出来るかもしれない希望でキラキラと輝いて―――、

 

「ああ、楽しみだ中学生活!まずは彼女を作って、それから……。ぐふふふふ」

 

「……」

 

 きらきら……、いや、ギラギラと欲望で汚れたいやらしい顔をしていた。

 

 ああ、あの時の自称神よ。何故このような死亡フラグ満載の世界に俺を送り込んだのか。この神や悪魔、天使に堕天使、更にはドラゴンといった人外溢れるハイスクールD×Dの世界に。そりゃ確かに複写眼なんてのが特典だったから、魔法はあるんじゃないかなぁ、とか思ってはいたけど。自己魔力が低すぎて暴走すら起こせない(推定)俺に、どうしろと。あれか、空間の魔力をかき集めて使え、ということか? どっかの魔砲少女ばりに収束させろというのか。

 

「……はぁ、不幸だ」

 

 この時ばっかりは、この言葉を使っても許される気がした。 

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