ハイスクールD×D 転生者たちの宴   作:七忍ルキ

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暗い未来

 中学生活初日、兵藤一誠と同じクラスということが判明したあの日。俺はここがハイスクールD×Dの世界であることを知り、絶望した。

 

 ……だってあれだぞ、下手したら原作主人公である兵藤より魔力低いかもしれないんだぞ。というか今はかろうじて俺のほうが濃い気がするが、兵藤は悪魔になるから今より増えるだろうし、なによりまだ成長期だ。成長期なのは俺にも言えることだろうが、そんな急激に魔力が増えるとも思えない。しかも、兵藤に魔力で勝っても、原作では兵藤の魔力は悪魔の子供以下。魔力を体の外に出しても米粒くらいの大きさしか出せない貧弱仕様だったはずだ。

 しかもしかも、兵藤には神器(セイクリッド・ギア)がある。赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)という持ち主の力を十秒ごとに倍にしていくというチートアイテム、世界に十三個しかない神滅具(ロンギヌス)のうちの一つだ。

 

 それに対して、俺にあるのは複写眼(アルファ・スティグマ)ただ一つ。確かにこれもあらゆる魔法を見てから同じ魔法で相殺、とかチート地味た行為が出来るだけの力はあるだろう。

 が、しかしだ。その魔法を発動させるための魔力は同じではないのだ。というかそもそも魔法使えるかどうかすら怪しいレベルの魔力しかないし。

 

 というわけで、これからの俺の活動方針が『目立たず、原作から離れる』ことになるのも必然だろう。兵藤と友達になる、なんていうのはもってのほかだ。

 しかし、露骨に兵藤を避けていたら逆に目立ってしまう。そこで、俺は『挨拶くらいはするけど特に自分から遊びに誘ったりしない程度の存在』を目指す!

 

 

 そう決意して活動を開始してから早一ヶ月。俺は見事にクラスからハブられていた。

 ……とはいっても、露骨に無視されたりするわけではない。ただ単純に、仲良しグループ、というものに入り損ねただけだ。断じて、俺がコミュ障であるとかそういう事実はない。ないったらないのだ!

 

 そんなことをつらつらと頭の中で叫んでいたら、学校のチャイムが鳴ると同時に担任の先生が教室に入ってきた。

 

「ぃやっほーぅ! みんなー、おっはよー!」

 

 ガラッと教室のドアを勢いよく開けて入ってきた我らが担任の名前は富士村泰河(ふじむらたいが)。初めての顔合わせの時は、どこぞの冬木市にいるタイガー先生本人だと思ってパニクったほどそっくりだ。ちなみにこの人もタイガーと呼ぶと怒る。だが数学教師だったりする。

 

「「「おはよーございまーす」」」

 

 先生と仲のいいグループの何人かが挨拶を返す。俺? ハハハ返すわけ無いでしょう目立つし。

 

「うん! 今日もみんな元気ねー! ちなみにせんせーはもっと元気ですっ」

 

「見ればわかるよー」

 

 あはははー、と先生と前列に座っている女子が笑い合う。

 

「うん、じゃあ出欠を―――」

「滑り込みせぇええええふっ!!」

 

 どかっ、とドアを盛大に響かせながら現れたのは肩で息をする原作主人公、兵藤一誠。兵藤は息も整えないまま先生に向かって叫ぶ。

 

「セーフですかっ!?」

 

「うーん……。まあ、いいか! 特別ね!」

 

「うぉっしゃあああああ!」

 

 思いっきりガッツポーズをした兵藤は、そのまま自分の席まで歩いて行って腰を下ろした。

 

「よし、じゃあ改めて出欠とりまーす! えっと、安部くーん」

 

「はーい」

 

 と、先生が出席を取り始めた。これって、意外と自分の名前が呼ばれるまでは暇なんだよなぁ。小学校の頃もそのせいで居眠りしてしまって、名前を呼ばれても返事をせずに欠席扱いにされかけたことがあった。しかも、しかもだ。気に食わなかったのかどうか知らないが、後日あった授業参観で出欠を取るときに、わざわざ「この前居眠りしてて返事をしてくれなかった寝ぼすけクーン」だなんて呼びやがったのだ。ああ今思い出しても忌々しい。

 

「―――くーん」

 

 あのあと叔父が学校側に文句を言って、その教師は減給処分になったと聞いたけど、それ以来俺に対して無駄に厳しく当たるようになったからなぁ。あの野郎。

 

竜灯(りゅうとう)くーん? 竜灯来那(らいな)くーん?」

 

 ……ん、あれ?呼ばれてる?

 

「へ? あ、はい!」

 

 ……恥ずかしぃいいいい! なんだよ「へ? あ、はい!」って! ほらみろ! 周りのやつもクスクス笑ってるじゃねぇか! あぁ、穴があったら入りたい……。

 

「んー、よし! 今日もみんな居るねー! 今日は一時間目から数学だから、張り切っていこー!」

 

 前で先生が、えいえいおー! とかいって腕を振り上げている。ノリのいい数人が真似をしてクラスがいい雰囲気になっている中、俺は頭を抱えて机に突っ伏した。ああどうか、授業中に蒸し返されませんように……!

 

 

  *

 

 

 放課後。あのあとは特に何事もなく授業が進み、俺の失態は蒸し返されることはなかった。いやよかった、ほんとに……。

 

「って、それはいいんだよ」

 

 思わず自分で自分に突っ込んでしまった。慌てて周囲を見渡すが、誰も俺に注目していなかった様子。ほっと安堵の息を吐いた。独り言なんて、聞かれていたら恥ずかしいことこの上ないからな!

 

「もう帰ろう……」

 

 これ以上ここにいたら色々とやらかしてしまいそうだ。そう思った俺は急いで荷物をまとめて帰路につく。ふふん、帰宅部の本気を見せてやるぜ……!

 他人から見て急いでいると思われないスピードで、しかしこの上なく早歩きで校門を出る。ふふふ、いいペースだ。これなら自己ベストを更新できるかもしれない―――!

 

 自分の中だけでごちゃごちゃと無駄に格好つけながら帰宅。ちなみに自己ベストは更新できなかった、くそう……。

 

 さて、叔父さんもまだ仕事で帰ってこないし、ここからは修行タイムだ。実はこの世界がハイスクールD×Dだとわかったあの日から、俺は自主的に修行をしている。とは言っても、筋トレとかはめんどくさいからやっていない。代わりに、複写眼を使って空間の魔力を収束する特訓をやっている。これさえできれば大体の敵はなんとかなると思うんだ。実際問題、今の俺に足りないのは魔力と魔法の知識だ。そのうち、魔法の知識については敵が襲ってきたら勝手に増える、というかパクる予定だから、そのために必要となる魔力をどうにかしたかったのだ。

 

「さて、っと……」

 

 複写眼を発動する。途端に空間や物の魔力を視認できるようになり、どうすればそれを動かせるのかも手に取るように解る。

 俺は両手を広げて周囲の魔力を自分の真上に収束させようとする。しかし、

 

「う、ぐ……!」

 

 収束は遅々として進まない。おそらく、というかほぼ確実に俺の魔力が低すぎて、最初の呼び水としての魔力が足りないせいだろう。

 

「うぐぐ、も、もうむりっ」

 

 そう言って俺は魔力を霧散させる。この行為だけはとてもスピーディーに行うことができて、正直虚しい。

 

「はぁぁぁ……。集めることができないのに、散らすことが得意とかどうしろと」

 

 そう、俺は収束という行為が苦手だ。というか、魔力が少なすぎてやりたくてもできないというのが本当のところだが……。その代わり、何かに干渉してその魔力を動かすのは得意だ。何せ魔力を使わない。なら魔力が見える俺からしたら、お茶の子さいさいなのだ。まあこの理論で行くと収束も余裕のはずなんだけど、あれは自分の魔力を核にしないと魔力が散るからうまく行かないのだ。

 

「この魔力量だけはどうにもならないしなぁ……」

 

 原作が始まるまでに、せめて収束が出来る程度の魔力量に成長することを祈るしかない、か……。

 

「はぁ。不安だ……。不安しかない」

 

 ああどうか、死にませんように……。




転生者No01
竜灯来那―りゅうとうらいな

黒髪黒目 イケメンというわけでもないが不細工というわけでもない
     伝勇伝のライナ・リュートに普通の日本人をかけて2で割った感じ
備考:特典は「複写眼―アルファ・スティグマ」
   魔力が原作イッセー並(下手したらそれ以下)
   
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