ハイスクールD×D 転生者たちの宴   作:七忍ルキ

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巻き込まれに行ってみる

 ―――俺は恋をした。

 

「とは言っても……。塔城さんとは学年も違うし、そもそも特に接点もないからなぁ……。どうしたものか……」

 

 恋を自覚した日から一日経った土曜日。俺は自室でベッドに寝転びながら愚痴をこぼしていた。

 

 そもそも原作関係者とは自分から積極的に距離を置いていた俺だ。塔城さん以外の原作メンバーで見たことがあるのは、同じクラスの兵藤と同級生の木場、生徒会長の支取蒼那(しとりそうな)先輩、あと名前覚えてないけど副会長の人だけだったりする。おまけに兵藤とはその他大勢のうちの一人、として認識されているはずだし、木場なんて顔は知っているが話したことがない程度の関係だ。

 

 そんなだから、俺はこれからどうやって塔城さんにアプローチすればいいのか分からず、土曜日の昼間から自宅でうだうだと悩んでいるのであった。んー……、やっぱ原作に関わらないと塔城さんともお近づきになれない、よなぁ……。今とかはいいけど、後半とかになってくると普通に冥界だとかに行くし。でもなぁ、どうやって関わればいいんだよ。というかそもそも原作介入派の新城たちの誘いを断っておいて今更どの顔下げて『やっぱり関わることにしました』とか言えばいいんだよ。うあー……。

 ゴロゴロ。やりきれない思いを少しでも発散するかのようにベッドの上を思いっきり転がる。

 

 ―――ピピピピピ……。

 

「んあ?」

 

 ゴロゴロと転がっていると、携帯が鳴る。手を伸ばして画面を見ると、そこには『兵藤』と表示されていた。……あれ、俺あいつと携帯番号交換して……。ああ、連絡網か。

 納得した俺は、起き上がると通話ボタンを押した。というかなんの用だろう。俺と兵藤って対して接点ないはずなんだが……。あー、この時期、というとデート関連か? しかしなんだって俺に?

 内心の疑問を一先ず置いておいて、携帯を耳に当てて声を発する。

 

「はいもしもし……」

 

「あ、えーっと竜灯か? 俺、兵藤だけど」

 

 俺が電話に出ると、何やら真剣な兵藤の声が聞こえる。

 

「おー、そうだけど。どうしたよ? そこまで仲良くもない俺に電話なんてめずらしい。お前なら何かあったら、いっつも一緒にいる松田とか元浜あたりに相談するだろうに」

 

 さも意外である、といった感じで言った俺は、兵藤の返答を待つ。ホント、なんだろう。連絡網にしても、兵藤から直接俺に来ることはないはずなのだけど……。

 

「あー、まあそうなんだけどな……」

 

 兵藤はそう言って一旦言葉を濁した。……? えーっと、

 

「もしかして、仲のいい二人には相談できないようなことか?」

 

「そ、そう! 実はそうなんだ。あの二人にだけは相談できなくってな……。他に相談できそうなやつってお前くらいしかいなかったんだ。頼む! これから学校近くにあるファミレスまで来てくれないか? ドリンクバーくらいなら奢るから!」

 

 俺が聞くと、兵藤は我が意を得たりとでも言わんばかりに肯定する。そしてなぜかファミレスに来て欲しいと言ってきた。パンッ、と音が聞こえたことから、電話先では兵藤が携帯を首で挟んで両手を合わせて虚空に拝んでいるんだろうなぁ。その姿が明確に思い浮かぶ。というかファミレス? 学校の近くにそんなの……、ああ。何ヶ月か前にできたあそこか。場所はわかったが、どうしようかねぇ……。これ、下手しなくても原作に関わることになるよなぁ。んー……。

 その時、俺に天啓が下る。ああそうか、兵藤の相談役的な立場で原作に関わればいいのか! それなら命の危険も少ないし、なにより塔城さんとの接点ができるかもしれない!

 

「よし、いいぞ了解。ただ、今家だからちょっと時間掛かるかも知れないぞ? 俺ん家からだと、学校までですら自転車で三十分くらいかかるし……」

 

 そうと決まれば即実行! とでも言わんばかりに、俺は立ち上がってタンスから着替えを出しながら言う。

 

「おう、構わない。んじゃ、先行って席確保しておくからな!」

 

 またあとで! と言って兵藤は通話を切る。俺も携帯を切ると、すぐに着替えを始める。

 んー……。まあ適当でいいか。

 そう思った俺は適当なTシャツにジーンズ、そこに軽く羽織る上着を来る。よし、準備かんりょ―――。

 

「っと、あぶね。財布と携帯忘れるところだった」

 

 家を出る直前でそのことに気付いた俺は、慌ててその二つをポケットに詰め込む。よし、もう忘れ物はないな。今度こそ準備完了だ。

 そして俺は家を出てきちんと戸締りを確認すると、自転車に乗ってファミレスに向かった。

 

 

   *

 

 

 俺がファミレスについたのは、家を出てから三十分と少しが過ぎてからだった。今日は憎たらしくも天気が快晴で、太陽がランランと輝いていた。おかげで少し汗をかいてしまっている。

 俺が服の隙間から風を送り込みながらファミレスに入ると、冷気が俺の体を冷やしてくれる。あぁ、ファミレス万歳……。

 

 そんなことを思いながら客席を見渡すと、壁際の席に兵藤が座っているのが見えた。テーブルにはジュースの入ったコップが二つ。俺は店員さんに一言断ってから兵藤のもとへ向かう。すると向こうもこっちに気づいたのか、軽く手を挙げてきた。

 

「よっ」

 

 俺もそう言いながら席に着いた。

 

「悪いな、わざわざ来てもらっちゃって」

 

「んー、別にいいさ。どうせ家にいても無駄に頭悩ませるだけだしな」

 

 そう言ってバツの悪そうな顔をしている兵藤に向かって軽く手を振る。ゴチになります、と一言声をかけてからジュースをもらう。オレンジジュースだった。

 

「ぷは。……んで? 今日はどうしたのさ」

 

 一口ジュースを飲んだあとにそう尋ねる。兵藤はもごもごと口の中で何事か呟いたあと、意を決したかのように口を開いた。

 

「ああ、実はだな……。明日、初デートなんだよ、俺。だから、そのぉ……。デートプラン一緒に考えてくださいお願いします!!」

 

 そう言って兵藤はテーブルに頭をぶつけるほど深く頭を下げた。って、

 

「ちょ、こら頭上げろ! なんか俺がやらせてるみたいで罪悪感が……! そのくらいならいいから!」

 

「ホントか!? ありがとう! 恩に着るぜ!」

 

 俺が慌てて承諾すると、兵藤はようやく頭を上げた。……ふぅ。

 

「別にそのくらいなら構わないって。あーでも、俺だって彼女いたことないから対してアドバイスできないぞ?」

 

 俺がそう言うと、兵藤は真面目な顔でこう言った。

 

「ああ、構わない。俺一人だと『本当にこれでいいのか、楽しんでもらえるのか』って不安が拭えなくてな。他人の意見が欲しかったんだよ。それに、多くの女子と仲が良く、さらについ先日恋する乙女、じゃなくて恋する男子と化した竜灯なら、良い案を出してくれそうだしな!」

 

 最後の方は笑いながら兵藤は言う。あぁ、こいつにも聞かれてたんだったな……。そう思うと俺は、昨日のことが今更ながら恥ずかしくなった。

 

「そ、それは関係ないだろうに……」

 

「そう照れんなって! 今日は俺が相談する側だけど、お前も付き合うことになったら今度は俺が相談に乗るから!」

 

「付き合ッ!?」

 

 兵藤の言葉に、思わず噎せながら赤面する。って!

 

「そ、それは置いといて! 今日は兵藤のデートプランを考えるために来たんだし、話を聞かせて欲しいな」

 

 俺がそう言って話を戻すと、兵藤は先ほどとは打って変わって真面目な表情になった。……へぇ、こんな顔もできるんだな。

 俺が密かに兵藤の評価を情報修正していると、兵藤は真面目な表情のままで話し出す。

 

「ああ。明日が初デートなのは話したよな? 俺としては、せっかくの初デートなんだし夕麻ちゃんにも楽しんで欲しいんだ。ああ、夕麻ちゃんってのが、前に話した俺の彼女な。んで、俺だけじゃデートプランを考えるのに不安だったから、誰かに手伝ってもらおうと思ったんだよ。ただ、松田と元浜は、こんなこと相談したら絶対『裏切り者めぇ!』とか言って襲いかかって来るだろうからな。そこで白羽の矢が立ったのが、クラスでも大体のやつと仲が良くて、さらに女子の友達も多い竜灯、ってわけだ」

 

「なるほど。よし、俺でいいなら微力ながら手を貸そう」

 

 俺はそう言って兵藤にとりあえず今考えているデートプランについて話してもらう。

 

「ありがとな! よし、んじゃまずデートプランだけど―――」

 

 そう言って兵藤は自分で考えてきたのであろうデートプランを話し出す。……ふむ。朝十時に駅前で待ち合わせ、ショッピングを楽しみ、近くのファミレスで食事、その後映画を見る、か……。

 

「いいんじゃねえの? ただ、初デートで映画はやめといたほうがいいと思うぞ。映画を見てる途中はお互い無言になっちまうし、長時間拘束されることになるからな。まだ相手の趣味とかもよくわからないんだろ? それならお互いにおしゃべりを楽しんで、理解を深めるほうがいいだろ」

 

「な、なるほど……! なら―――」

 

「そこはやっぱりこっちのほうが―――」

 

「あ、それ、こうの方がいいと思うんだが―――」

 

「お、そうだな。んじゃこっちの時間をずらして―――」

 

 俺と兵藤は、それから数時間にわたってデートプランをあーでもないこーでもないと言いながら話し合った。最後の締めに、夕焼けのおかげで噴水が綺麗な公園を通る案(兵藤)と普通に夕焼けを見れる高台を通る案(俺)で荒れたが、結局今回は兵藤のデートだから、と兵藤の案に決定した。デートプランが決まった時の兵藤は、期待で溢れていた。

 ……これが、最後に殺されてしまうっていうのは、かなりかわいそうに思えてきた。機会があればレイナーレぶん殴ろう、と心に決める。

 

「今日はホントありがとな!」

 

 デートプランも決まり、そろそろ解散、という時に兵藤が言ってきた。

 

「いいって、このくらいならいくらでも相談に乗るさ。クラスメートの頼みだしな」

 

 そう言って俺は苦笑する。実際、俺がしたことなんてちょっと時間をかければ兵藤一人でも思いついたであろうことを述べただけだ。

 

「俺が言いたいんだよ! ありがとう!」

 

 そう言って兵藤がニカッと笑う。俺はそれに対して苦笑した。

 

「律儀なやつ……。まあいいさ、明日は頑張れよ」

 

「おう! ……あ、そうだ。いつまでも苗字で呼び合うのも水臭いし、ライナって呼んでいいか? 俺のこともイッセーでいいぜ!」

 

 ファミレスを出て自転車に跨った時、兵藤が名前で呼び合おうと提案してきた。俺はそれに笑いながら頷く。

 

「いいぞ、イッセー(・・・・)。明日のデート、成功するよう祈ってるよ」

 

 俺がそう言うとイッセーは、驚いた顔をしたあと不敵に笑った。

 

「そっちこそ、恋が成就することを願ってるぜ、ライナ(・・・)!」

 

 俺たちはおもむろに近づくと、どちらからともなくハイタッチをする。それを合図に、俺たちは別れて帰路に着いた。

 

 ―――イッセーが一度死ぬのを傍観する、という事実から目を背けたまま。

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