青い星は翳ることなく 作:にわか物書き
自分でも納得してませんが、納得するまで粘ると永遠に完成しなさそうなので妥協しました
本当に申し訳ありません
今ガチの主題は、高校生たちの交流と、そこから生まれる恋愛模様。
だが現状、恋愛関係とは程遠い二人が最も人気を博しており、スタッフは頭を抱えていた。
「それじゃあ、アクアくんとMEMちょって、結構付き合い長いんだ」
「
鷲見ゆきが隣に座り、アクアとMEMとの関係を深掘りしていく。
スタッフからの依願もあった彼女の強かな行動は、番組開始前からの関係を暴くと共に、それが恋愛的なものなのかをはっきりさせることを目的としたものだ。その強かさを密かに評価しているアクアは、彼女がどこまで意図しているかを探ることもなく、穏やかに応じるのみ。
「妹たちの方も手伝って貰ってるからな。その辺もあって、色々な」
「成程~。妹さんって、B小町のルビーちゃんだよね、女優もやってる」
「そそ。偶にファッションモデルとかもやったり、マルチにやってるアイドル」
「知ってる。凄い綺麗だよね」
ファッションモデルだからこそ、嫌という程その輝きは知っていた。
星のような宝石の輝きに、届かないという事は、否応なく理解させられているのだ。
「すごいよね。歌って踊れて、演技も出来て………私には無理」
「そりゃあ、ルビーだって子役やって、卒業と同時に女優とアイドルだからな。年季が違うよ」
羨望と諦念が入り混じった声を、アクアは無慈悲なまでにバッサリと切り捨てた。
「十年以上この業界に居るんだから、違って当たり前だ。そう簡単に追いつけたら苦労はしない」
「………厳しいんだね」
「結局のところ、努力が物を言うからな。あいつなんて、まだまだ歌は発展途上だぞ」
「あ、あれで!?」
「元が音痴だからな。大人気女優のアイだって、まだまだ伸びてる最中だ」
「………」
唖然とするゆきだが、アクアからすればあまりにも当然のこと。
「芸歴を考えれば、嫉妬するだけ馬鹿らしいと思うけどな」
「厳しいんだね」
「アマチュア呼びするつもりはないけど、部活動生がプロ選手を見てるようなもんだしな」
「あはは、そっか。そうかもね」
売り出し中のファッションモデルと、歳月をかけて地位を固めたアイドル女優。
成程、比べるだけ馬鹿馬鹿しい。改めて言われれば、比較にならないのも当然であった。
「芸歴の違いかぁ」
「かれこれ十年以上続けてるしな。女優一本じゃなくて、手広くやってたんだし、尚更」
女優一本で続けてきたあかねとの違いはそこだろう、と口にして、缶コーヒーを一口。
「女優として見れば、まだあかねの方が上だ。手を広げるのもいいけど、モデルの仕事に注力して質を高めていく方がゆきの為だと思うぞ。ルビーのヤツ、撮影の度に結構なリテイク貰ってるし」
尚、その原因は大体この
「あ、あははは………そんなに辛いんだ」
「その分、クオリティも高いけどな」
それも当然で、アクアがルビーの限界を見極めたうえで徹底的に要求するからだ。アクアと交流のある人物たちも、ルビーに出来る中でも最高の中の最高を求め、遠慮なく彼女の限界を求める為、必然的にリテイクも多くなる代わりに質も上がっていく。ルビーからすればたまったものではないが、同時にスキルアップもしているのだから、文句も言い難い。
求めれば求めるだけ成果として返すルビーにも、幾らか非はある………と、言うべきか。
「ゆきもルビーと仕事してみるか?なんて、俺にそんな権限はないけどさ」
「できることならやってみたいけどね。私がどれくらいなのか、知る意味でもさ」
そこまで口にしたところであることに気付き、噴き出すように苦笑する。
「って、これじゃあアクアくんとMEMちょじゃなくて、ルビーちゃんの話だね」
「俺はまだ続けられるけど」
「………アクアくん、シスコン?」
「妹が可愛くない兄なんていないだろ」
画面外のMEMちょが腕組みで頷く中、アクアもゆきの意図を汲んで話題を戻す。
「MEMちょとの付き合いだと………ああ、偶に泊めて貰ったりもしてたな」
「へー、泊めて貰っ………泊まってたの!?」
流石のゆきも驚愕に声を荒げ、目を剥くカミングアウトだった。
「ほら、俺ってこんな体だろ?だから遅くなっちゃった時とかにさ」
「そっか、そうだよねー」
「あとは、MEMが根詰め過ぎてる時に飯用意したり―――」
「………」
(いや、強すぎるでしょ、コレ………)
つらつらと語られる内容が、あまりにも強すぎた。
(((壁、大きいなぁ)))
付き合いの長さから来る濃密な交流は、顔を合わせてそう経っていない男女に成せるものではない。
現状打破には、外部からの刺激が必要だと判断するには十分過ぎた。
>>>>>>
『みなみ、なんか機嫌いいね?』
『うん。実はね、おっきな仕事取れたんよ』
週末、学校で交わした会話を思い出す。
「………冗談だろ」
「今日からお世話になります、寿みなみって言います」
ふんわりとしたピンクの髪を揺らし、この場で最も知名度が高いグラビアモデルが微笑む。
「ミドジャンの表紙の子じゃん」
「はわぁ………」
「でっか………」
「ちょっと?」
「今日から収録に加わって貰うことになりました」
実にわかりやすいテコ入れだった。
ミドジャンの表紙を飾れる知名度、スタイル、性格の全てを以て盤面を荒らすのが狙いだ。既にアクメムの姉弟染みたやり取りの穏やかさに、多くの視聴者が魅了されているが、みなみのビジュアルであれば、そこに一石を投じることも難しくない。今回のテコ入れの発案者としては、アクメムの牙城を崩すとまではいかずとも、彼女をもう一つの軸として、恋愛模様を成立させたいのだろう。
………彼女を採用した人物にミスがあるとすれば、それは一つだけ。
「―――ねえ、距離近くない?」
ゆきが零し、他の面々が追従する。
「近いよな、めっちゃ」
「MEMちょ、アクア取られるんじゃね?」
「待って、それは待って。別の意味で胃が………!」
主に先輩たちからの圧を想像したMEMちょが呻く中、新参者は喜々とアクアの隣に陣取っている。
「参加している以上、恋愛禁止とかは無いんでしょうけど………それにしたって」
「ていうかMEMちょ、なんか知ってたり?」
森本ケンゴの疑問に一瞬動きを止め、MEMちょは力なく応答。
「ルビーちゃんのお友達………うん、もう一人の方が来なくてよかったよ」
「もう一人って?」
「不知火フリル」
何気なく聞いた熊野ノブユキが盛大にずっこけ、他の面々も大きく目を剥く。
芸能界に身を置いている人間である以上、その名を知らない訳が無いのだ。
「ルビーちゃんが『逆ナンされてた!』って言ってたけど………この感じ、マジだったのかなぁ」
実際はスカウト、引き抜きなのだが、
「逆っ………!?」
「………アクアくん、モテモテだね」
「羨ましい………けど、ビッグネームばっかなんだよな」
「羨ましいけど羨ましくねぇ………」
紛れもない美少女たちであるが、ネームバリューがとんでもない一点で、羨望が同情に変わる。今をときめくアイドル、星野ルビーの兄というだけでもプレッシャーがあるだろうに、そこに国民的マルチタレント、更には順調に名が売れているグラビアモデルまで傍にいるとなれば、一般的な感性なら生きた心地がしないだろう。
事実として、学校では同級生からやや距離を置かれてしまっているのが現状だ。
「………ていうかこれ、大丈夫かな?」
「素直に混ざればいい、気がするけど………」
「あかねたちが混ざらなかったのと同じだよ………うん、ちょっと空気が、ね?」
決して、重圧を振り撒くような真似はしていない。
だが、みなみは自身の感情の正体を確かめたいのか、それとも既に理解してか、誰よりも恋愛的なアプローチを仕掛けているように見える。いや、ルビーという強敵が不在で、仕事というお題目が彼女の欲求を全肯定する以上、ストッパーをかけることなく自身の胸にある疑問を、欲求をぶつけているのだ。
「ていうか、ケッコーがっつくじゃん、あの子」
「学校だとルビーちゃんがいるからねー………」
「「「「ああ………」」」」
MEMちょの反応一つで、誰もがその面倒臭さを理解した。
当のMEMちょは、
「―――――ふふっ♪」
一方のみなみは、実に充実した時間を過ごしていた。
「ん?何か変なコト言ったかな」
「ううん。ちょっと嬉しくなっちゃって」
学校では学科の違いから、昼休みくらいしか会えず。その昼休みさえ、日によっては仕事で潰れてしまい、潰れてなくても時間があまり無かったため、仕事とはいえ長時間一緒に居ることが出来ることが嬉しいのだ。彼女自身、アクアに対して向ける感情の正体は把握していないのだが、そんなことがどうでもよくなる程に胸を高鳴らせ、ある意味誰よりも積極的に動いていた。
「学校だと、学科も違うし………仕事で会えない日もあったし」
「そこは仕方ない。俺も今落ち着いてるだけで、いつ忙しくなるかもわからないし」
「うん。だから」
アクアの手に、自らの手を重ねる。
「~~~~~!?」
「わぁ………っ!?」
「これは………頑張らないとマズいかも」
MEMちょが声にならない悲鳴を、あかねが赤面と共に歓声を上げる中、ゆきは危機感の高まりを口にする。なにせ、今までのメンバーが踏み込むのを躊躇った、アクアとMEMちょの生み出す空気を真っ向から破壊しかねない行動を堂々と選んだのだ。どう転ぶにしても、既に一定の人気と知名度を持つ彼女に注目が集まることは間違いないだろう。
「うち、アクアさんのこと、いっぱい知っていきたいな、って」
「………」
面食らったように硬直していたアクアは、やがて苦笑を浮かべる。
「学校でもできるだろ」
「ほら、学校で訊きにくいこともあるやん?………ルビーちゃんがおる時は、尚更」
「そうかもしれないけどさ」
「それにうち、アクアさんが気になってるのは本当だよ」
重なった手に力が入る。ふんわりとした髪が触れる程近くまで、みなみの顔が寄せられる。
(で、いいんだよね!?先輩の人、ダメだったら恨むからね!?)
内心テンパりながらも、事務所の先輩の教えを忠実にこなすみなみ。恋愛経験者からの助言だけあり、いざ実際にやってみると恥ずかしさが凄まじいのだが、アクアの反応を見ていると優越感に似た達成感が、歓喜が同時に沸き上がり、恥ずかしさがどうでもよくなってくる。学校では、友人たちがいる場ではあり得ないこの距離で、この距離で無ければ見られない反応を目の当たりにして―――
(ホント、ずるいなぁ)
寿みなみの胸は、どうしようもないくらい高鳴っていた。
眼前の美男子のこの表情を、今この瞬間だけ独り占めできていることが。今だけは、彼の視線を自分一人が独占できていることが………この特等席で、これからも自分が知らないアクアの姿を知ることが出来ることが、何よりも嬉しくてたまらない。そんなところまで思い至ってしまえば、薄っすらとでも自身の胸の奥で暴れる感情を理解できた。
(うち、ちょろいなぁ………あれだけで一目惚れかぁ)
本当に一度だけ、あの優し気な微笑を目の当たりにしただけで、惚れ込んでいたらしい。
(けど、よかった。ここでなら、もっとアクアさんを知れる)
この仕事を即答で受けて正解だったと、過去の自身を心の底から称賛する。
「せやから、うちの知らないアクアさんのこと、いっぱい教えてくれへん?」
所謂ガチ恋距離で、熱を帯びた微笑と共にそう告げる。
その一部を撮影していたスタッフの一人が零したのは、この場の全員の総意だった。
「………ガチじゃん」
最初こそ、誇張があっただろう。
だが、その先は彼女の秘めた感情が包み隠されることなく表れている。
「そうだな。俺もみなみさんのことはあまり知らないし、お互いに知っていけたらいいな」
無難な返しであるが、みなみはそれでも構わない。
なにせ、今ガチの現場に参戦した時点で、彼女の望みは果たされているのだから。
「MEMちょ、ライバル出現だね」
「それよりルビーちゃんの反応の方が怖いよぉ………!」
「ルビーちゃん、アクアさん大好きだもんね」
小動物のように震えるMEMちょに一同が密かに萌えるが、今は同情心が勝っていた。
「そ、そんなに怖いんだ、B小町のセンター………」
「人は見かけによらない、っていうか………」
「事務所でも、芸歴でも大先輩だよ?その上、アクたん関係もあるし」
更に付け加えると、憧れの大先輩の娘である。頭が上がる筈もなかった。
「アクアって、思ってたより大変なんだな………」
「ああ見えてB小町のネット広報やってるし、光るモノがある子にはアドバイスもしてるよ。特にB小町のネット広報の方は、メンバーの子たち個人に合わせた企画からグループ全体の交流を発信できる企画まで全部考えて、生配信ならスケジュール調整、それ以外なら撮影と編集、投稿までと、ホント色々やってるんだよ?」
「「「いや仕事量っ!?」」」
思わず叫ぶが、幸いなことにマイクに拾われてはいなかった様子。
特大の火種をぶち込まれた今ガチの収録。
寿みなみの初登場回は、最初から最後までみなみとアクアの交流を軸に撮影されていた。
軽い雑記
・寿みなみ
アクメム一強が序盤で完成しつつあった為、起爆剤として呼ばれたグラビアモデル。
アクアが気になっていた為アプローチをかけたところ、気持ちを自覚して攻め攻めになった。
お陰で番組側の、みなみを軸にアクメムに敗けないカップリングを作る目論見は壊れた。
が、アクアを中心とした恋愛模様を撮れるようにもなった為、プラスも大きかったり。