深井中尉は理事長が来るまでの間雪風やコティングリーに質問をした。
<自身がウマ娘とされる現在の体になったことについての記録はあるか>
<UNKOWN NOT RECORDED>
<先程電子戦を行っていたが、使用可能な機能はあるか。>
<ALL SYSTEM RDY>
<BUT IN CURRENT STATE FUNCTION HAS BEEN MOVE WITH SUITABLE FOR ACTION IN STATE>
<ALSO SYSTEM FROM FFR-31MR/D>
<なぜFFR-41MRではないのか>
<UNKWON LOAD FFR31-MR/D SYSTEM>
<自身と深井中尉はJAMであるか>
<UNCERTAIN>
<この付近にJAMが存在するかもしくは空間がJAMの領域であるか>
<UNKOWN BUT NO RESPONSE JAM>
今のこの状態状況では自身や雪風がJAMかどうかを判別するのは難しいようだ。
ただし、JAMらしい反応はないようだ。
それとなぜFFR-31MR/Dのシステムデータがロードされているのか。
あるとするならばFFR-41MRではないのか。
だが、FFR-31MR/Dでも十分に戦えるだろう。
「少しいいか?」
「どうしました?」
「雪風が着ているのはここの制服か?」
「ええ、そうよ。」
「あなたはともかく雪風は素っ裸で倒れていたんだもの何か着せないと...ねえ...」
「なぜ、素っ裸で...」
そう深井中尉は言った瞬間ある事を考えた。
戦闘機の服装とは一体どの部分を指すのか、と。
話だけでは戦闘機の機体の状態ではあれが裸判定になっているらしい。
が、雪風は機体を一度乗り換えている。
であれば、雪風の裸の本質は雪風というパーソナルを指すのではないか?
ならば、なぜ雪風は裸の状態だったのか?
「裸になる定義が分からないな」
そんなことを呟くと、
「いい年頃のウマ娘の裸の事考えるとか変態ですか....?」
「過去のデータからのただの考察だ、そんな趣味は持ち合わせていない。」
「人前で発言しないで下さいね?それ。ボコボコにされても文句言えませんからね。」
「了解した。」
どうやらウマ娘とはかなり神聖な存在らしい。
さっきの警備員がいればどうなっていたことだろう。
「そういえばウマ娘は人と何が違うんだ?ウマとつくからにはそれ相応なのだろう」
「えーとまず遥かに人を超える力を発揮できます。」
「溝に嵌った軽トラを引っ張り上げたり、時速40km以上で走れたりします」
「あと人以上に食べます、それと人にはない病気もあります」
「管骨骨膜炎とか屈腱炎とか、様々です」
「それで命を落としたり、レースから引退せざるを得ないこともあります。私も幾度となくそれを見てきましたし、私自身も屈腱炎でレースを引退してます」
「フムン。次に、レースとはなんだ?」
「ウマ娘のレースには幾つか種類があるんです」
「メジャーというかよく知られるのは、メイクデビュー、未勝利戦、一般競争 クラシックレース、重賞競走ってところかしら」
「レースにはまずメイクデビューか、未勝利戦を勝たないと一般競争へ行けないの」
「で、レースにはグレードがあってG1、G2、G3があるの」
「G1には菊花賞や宝塚記念とか」
「G2には中山記念や阪神大賞典」
「G3にはシンザン記念や毎日杯なんかがあるわ」
「今出したのは一例ね。詳しく知りたいならURAのホームページや競バ場のホームページを見るといいわ」
「レースはそれ以外に地方レースや障害競走...といっぱいあるわ」
「走るバ場にも芝とダートの2種類があるの」
「レースによってはダートと芝が切り替わるのもあったりするわ」
「かなりややこしいのだなレースは」
「戦闘機を動かすよりかは単純だと思うけどねえ...私の成績聞きたい?」
「いや、いい」
「そう、それと、随分聞き入っていたみたいね。レースに興味あるのはウマ娘らしいわね」
雪風がおれの隣に座っていた。
レースに興味があるというよりJAMに対しての情報収集を行っているのが正しいだろう。
起きた時は夜更けだったがもうすっかり日が昇っている。
「そろそろ理事長も出勤してくる時間になるわね」
どうやら件の理事長がそろそろ来るらしい。
しわしわ婆さんみたいなのが来るだろうと零は考えていた。
「謝罪ッ!手荒に扱おうとしたことを許してくれッ!」
...なんかちっこい奴が来たぞ?
「私は秘書の駿川たずなと申します。こちらは...」
「秋川やよいだ!聞いての通りこの学園の理事長をしているッ!」
手には「謝罪ッ!」と書かれた扇子を持っている。
秘書のたずなとやらは明るいグリーンのスーツ姿だ。
おれと雪風は理事長室へと通されている。
「質問ッ!そちらの名前を聞いていいかッ!」
その扇子どうなってるんだ。文字が一瞬で切り替わったぞ?
「おれは深井零、中尉だ。こっちが雪風だ」
「なるほどッ!零中尉と雪風ッ!いい名だッ!」
なんか発音に暑苦しさを感じるな..
「まず、お聞きしたいのですが、何処からどのようにこの学園へと侵入したのですか?」
「信じてもらえないだろうがおれと雪風は別の惑星、フェアリィと呼ぶ所から来た」
「おれの所属していたFAF空軍がフェアリィから地球の南極へと撤退する最中にここに来てしまった」
「なぜこの学園の敷地内に倒れていたのかは分からない」
「驚愕ッ!零中尉は宇宙人だったのかッ!」
理事長は目を輝かせながらそう言う
「いや生まれは地球だ、フェアリィにいた時間が長かったというだけだ」
そう言うとちょっとしゅんとした顔になった。
「ではそちらの雪風h.....」
「雪風も宇宙人ではないぞ」
さらにしゅんとした表情になった。
「理事長いいですか」
「おお!そうだった!警備員から君の所属を聞いたのだがあれは本当か?」
「全て本当だ」
「しかし、FAF空軍といったものは存じ上げないッ!どういうものか説明してもらえないだろうかッ!」
「FAF空軍はJAMと呼ばれる未確認戦闘機を迎撃するための空軍だ。おれはそこで偵察を任務とする戦隊に所属していた。雪風はおれの乗機だった。」
「ということは雪風さんは偵察機だったんですか?」
「そうだ、なぜかいまはこの姿だが」
「理解ッ!しかし、偵察機という古い存在、存在しないFAF空軍、これらから考えるに別の世界のものと考えるのが妥当ッ!」
「そんな簡単に断定していいのか?」
「ウマ娘には様々な神秘があるッ!幽霊と会話する者もいるッ!ウマ娘同士での不思議なシンパシーを感じる者もいるッ!ちなみに今のは全部実話だッ!」
「であれば別世界の人間がいてもおかしくはないッ!」
この世界結構オカルトがどうも幅を利かせているらしい
「ならばJAMの一つや二つ紛れ込んでいても気づかないという訳か」
「先程からJAMという単語があるがJAMとは一体何かッ!」
「それは俺にもよくわからん、ただ、JAMはおれと雪風を狙っている、それしか分からない」
「「な、なるほど...」」
たずなと理事長は拍子抜けした顔をした。
「こちらから質問をしていいか?」
「受諾ッ!答えられる範囲ならなんでも!」
「自衛隊という組織があるようだがそれについて教えて貰えないだろうか」
「たずなッ!説明してくれたまえッ」
「はい!まず自衛隊とは災害に対応するために組織されました」
「成り立ちは第一次世界大戦の時に存在した日本軍から来ています。」
「しかし、第一次世界大戦でレースが中止され、それに不満を持ったウマ娘と人が各国の軍司令部への襲撃、まあレース過激派といったところです。」
「後世から見れば良い行動ではありませんでしたがこの事件をきっかけに軍の解体と不戦条約が結ばれました」
「そこから日本軍やその為全世界の軍は救助の方向へとシフトしていきました。」
「そして日本軍から改称し、今の自衛隊になりました」
「つまり持っている装備は専ら救難救助用ということか」
「そういうことになります」
「ではッ!質問はここまでにしておこうッ!」
「して雪風ッ!何か夢はあるかッ!私はウマ娘の為に日々奔走しているッ!」
「君もウマ娘ならば何かしら成し遂げたいものがあるだろうッ!ぜひそれを聞かせて欲しいッ!」
「...」
「どうしたッ!なんでも言ってみたまえッ!」
「雪風はこちらで話すのでこれを」
零は端末を手渡す。
「む?雪風は喋れないのか?」
「雪風に発声インターフェースやシステムは積んでいない」
「テキスト形式での会話なら可能だ」
雪風は先程の理事長の質問を聞いていたのか端末にはこう表示されていた。
<I DESTROY JAM>
「なるほどッ!しかしJAMはこの世にはいないッ!なぜそれなのか理由を聞かせてくれないかッ!」
<THAT'S SUPREME ORDER>
「誰かに命令されたことではなく自分のやりたいことッ!それが聞きたいのだッ!」
<MISSION PLAN UNKOWN>
「ミッションが不明ッ?どういうことだッ?」
「雪風はJAMを殺すことを至上命令としてプログラムされている。だからそれ以外の自発的にやりたい事というのはないんだ」
「それはJAMの情報を持って帰って必ず帰還することを至上命令としているおれも同じだがな」
「レースについて聞き入っていたとコティングリーは言っていたがッ?」
「対JAM戦に有用かどうか、この世界を知覚しJAMに対してどう立ち回るかの為に聞いていただけだと思う」
「む、そこまでしてJAMに警戒感を抱くのは何故だッ?ここにはいないはずだろうッ」
「JAMは超空間通路で俺たちの地球へ侵略してきた。そしてJAMがおれと雪風を狙っているならこの世界にも超空間通路を開いて侵略しに来る可能性はある。」
「その時までにここでの対JAM戦を考えておかなければいけない。」
「むう...しかし自衛隊には入れないと思うがッ」
「何故だ、おれはともかく雪風はいけるだろう」
「コティングリーからも話されたと思うがウマ娘はすこぶる食べるッ」
「おまけに怪我をすればウマ娘は人の倍怪我の後遺症が酷いッ。ゆえに自衛隊とは相性が悪く、募集はウマ娘を避けて行われているッ」
「空軍があるだろう」
「そちらはほぼ無人機の運用でパイロットは寡占状態であるためそもそも募集がまちまちなうえお腹が空くと集中力がなくなりやすいウマ娘はあまり好まれていないッ」
「海軍はウマ娘にカナズチが多い理由で採用していないッ」
「大体雪風は偵察機なのだろうッ。泳げるとは思えないッ」
「泳ぎ方を覚えさせればよいだろう」
「それが...」
「フォームも何もかも完璧なのに、なぜか沈むのだッ!故に不可能ッ!」
「つまり打つ手なしということか」
雪風は<MISSION PLAN UNKOWN>を表示させたままだ。
自身の機体も武装も無く、唯一の選択肢には入れる余地はない。
自分の拠り所としてきたものが無い状態は雪風も不安を感じるようだ。
しかしJAMがここに現れないと決まった訳ではない。
果たしてJAMへ対抗する力をどうするか。
零は雪風と模索するしかない。