おわせかふたりたび   作:タメガイ連盟員

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旅に出る前に当面の生活を確保しましょう。


第二話

 少女――鰐口(わにぐち)ミツミはアルテミス女学園中等部2年生であった。

 

 過去形であるのは当のアルテミス女学園が既に機能を失っているからだ。

 

 いや、停止しているのはアルテミス女学園だけではない。この学校が防衛の主目的とする東京地区やその付随設備も今や廃墟と化していた。

 

 それをミツミは既に確認していた。1週間かけて東京地区を駆け回っても、そこに人間を見つけることはできなかった。かつて自身が暮らしていた地域にも誰も何もいなかった。

 

 東日本では東京地区を除いてずいぶん前から無人だ。既存の動物の特徴を有する『プレデター』相手に限られた戦力で広い地域を守ることは困難であるから、生き残っている人間を市壁を築いた地域に避難させたためだ。当然ながら全ての人々を収容しきることはできず、そうした人々は外流者と呼ばれているが、外にいる限り『プレデター』の脅威にさらされる以上長期間活動するのは困難だろう。

 

 東京地区へ至る道で周囲を見ても、人間どころか『プレデター』の姿すら確認できなかった。ペガサス専用の武器である『ALIS』は当然持ち歩いていたのだが、まったく使うことがないとは思いもしなかった。

 

 念のためにと思い、通信機器を使い名古屋や大阪と言った他地区やペガサス校へ連絡を取ろうとしたが、どこも空電が帰ってくるばかり。となれば、知らぬ間に日本にいる人類は『プレデター』によって駆逐されてしまったのだ、と考えるしかない。

 

 しかし、『プレデター』までもがまったくいないと言うのは不可解だった。現に放棄された東北地方には大量の『プレデター』が棲息していて、それの相手をするのがアルテミス女学園の役割だった。その『プレデター』の大群もアルテミス女学園のペガサスたちによって殲滅……できなかったからこそ、この惨状なのだろう。いや、本当にそうだろうか?

 

 自分とあの異形だけを残して、世界から突然人類と『プレデター』が消滅してしまったとしか思えない。

 

 いったいどういうことなのだろうかと考えてはみたものの、答えが出るわけもないので棚上げにすることにした。

 

 自身の拠点であるアルテミス女学園、東京地区、周辺地域とと誰もいないことを理解し、正気を取り戻してからミツミが手をつけたのは衣食住の確保であった。

 

 なにか特別な考えがあるわけではない。ただ、とにかく今は生きよう。そう決意した。

 

 一瞬、もう誰もいないのなら終わらせてしまおうとも考えたがすぐに振り払った。ここでそうなるのは、これまでに散っていった仲間たちへの裏切りに思えたからだ。

 

 まず衣服だが、これは学園の生活区画に大量に在庫がある――何しろ200人以上が暮らしていたのだから、1人だけが使うこと考えるとこれだけで当面は事足りるはずだ。

 

 続いて食料。衣服同様、生活区画に大量に残されているが、生鮮食品に関しては食べて大丈夫なのか判断迷うところだ。ミツミ自身は料理したことがないからその辺りのことがわからない。一応、消費期限が過ぎたものは食べない方が良い、と言うのは知っているのだが、ペガサスは内蔵機能も強化されているため、多少傷んでいても不調をきたすことはない、らしい。らしいと言うのは先輩のペガサスがそう言っていたからで、確認したわけではない。

 

 まあ、たぶん、大丈夫、だろう。とは思うがこれで異常が出た場合、医学知識がほとんどないミツミにとっては死活問題になりかねないため、下手に確認することはできない。料理を趣味としていた同級生にとりあえず火を通せばだいたいはいける、と聞いていたが、いやそもそも火を通す、と言う行為がどういったものなのかがいまいちわからない。アルテミス女学園における食事は給食として提供されるものは無人の調理器で作られるので先の同級生のように趣味でもない限り料理に関する知識など身につけようがない。いや、もちろん学園入学前にの小学校時代に家庭科の授業を真面目に受けなかったミツミにも問題はあるのだが。

 

 ペガサスは戦うための存在だからと、まったく勉強をしていなかったことがこんな形で災いするとは思いもしなかった。そんなわけでミツミは住環境の整備のために、それと平行して図書室で勉強しなくてはならなくなった。

 

 そして住居。これが1番の問題だった。

 

 アルテミス女学園は中等部区画・生活区画・高等部区画と3つの区画が並べられた形をしており、それを四角形の壁が覆っている。敷地面積に至っては200人が生活するにはあまりに広大で、ほぼ使われていない場所すらある。どう考えても1人で生活するには手に余る広さだ。

 

 ならば敷地のどこかに拠点を構えるのがいいのだが、ミツミがそれまで生活していた中等部区画は激しい戦闘があったのかその殆どが壊れてしまっていた。当然寝起きしていた中等部寮も全壊で、私物も瓦礫の山の下敷きだ。

 

 生活区画もかなりの被害を受けていて、食堂の食料庫や図書室が無事だったのは奇跡的と言える。購買の倉庫は半壊しているが、掘り起こせばなんとか使える。

 

 となると残るは高等部区画。こちらも当然使用不能に陥っている施設ばかりだが、幸いにも高等部寮の1つが無事だったのでそこを根城にすることにした。

 

 高等部寮は高等部校舎からしか入れないと言う面倒な構造をしているので1階の壁を壊して新しい入り口にしてしまった。そのような構造をしているのは理由があってのことなのだが、今となっては意味がないので問題はない。

 

 残された高等部寮は使用されていなかったらしく、備え付けの家具を除いて何もなかった。ミツミは僅かにほっとした。例えいなくなってしまっていても他人の持ち物に無許可で触れることには抵抗があったし、場合によっては片付けなければならないかもしれないからだった。まあ、必要なものを運び込まなくてはならないのだが。

 

 それから数日は生活に必要なものを寮内に運び込んだり、私物を運び出したりして、短期的な生活需要を取りそろえた。

 

 となると今度は長期的な視野での生活整備を考えなくてはならない。

 

 学園の設備は多くが破損しているものの、まだ生活インフラはまだ稼働しているものもある。だがそれだってメンテナンスをキチンと行うことで機能しているものであり、そのような知識を持ち合わせていないミツミには維持整備など不可能。つまり遅かれ早かれ使えなくなってしまう。つまり、自力でなんとかできるようにしないといけない。

 

 難問であった。先に述べた通り、ミツミはろくに勉強をしていないので何が必要なのかもわからない有様だ。もちろん、勉強をするにも図書室にある本だけは足りない。学園外の旧市街にある学校の図書室、市立図書館、それに本屋を探索してそれらしい本を集めなくてはならない。

 

 それに学園内に残っている物資に足りないものがあれば同様に市街地から調達しなければならない。

 

「やることが、やることが多い……!」

 

 思わずそう口に出してしまっても致し方ないことだろう。

 

 だがそれでよかったのかもしれない。忙しく何かをし続けていれば、余計なことを考えずに済むのだから。

 




鰐口(わにぐち) ミツミ
 
特徴金色 ボブカット
一人称わたし
誕生日8月2日
身長157cm
出身東京地区
魔眼監那(かんな)
ALIS械刃製第三世代・太刀

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