清姫って実はヤンデレじゃないんじゃないか、とマスターは思った 作:眠りたい時だけ手が進む人
「……なんだよー、わざわざ呼び付けといて話すのが惚気話ってよー……喧嘩売ってんのかこら。」
そんなことは無いしなんなら惚気たつもりはない、と貴女はなんやかんやで話を聞いてくれたサーヴァント──アルターエゴ、徐福に弁明する。
とはいえ確かに具体的に邪ンヌや清姫と一晩を共に同じ寝室で過ごしたり、それを気に次々と貴女の元にやって来ては押し倒そうとしたりさり気なく部屋に入ろうとしてくるサーヴァントが増えたという話はハーレムのそれであった。
ここは古来より伝わる、そこに至るまで起きたありとあらゆる罪をたった四文字で帳消しに出来る呪文を使わねばならないと判断した。
てへぺろ
「殴っていい?」
貴女はごめんなさいと素直に謝った。その目付きが「野郎ぶっころころしてやる」と見ただけで察せるほど鋭利なことになっていたからだ。怖い。
「っていうかこんな話をしたかったら私じゃなくマシュとかに言えばいいのに。こっちは暇だったから別にいいけどさー?」
確かに親愛なる後輩はこちらが望めば話に付き合ってくれるだろうが、それはそれとして彼女は自分とは違い単純な課題だけでなく、カルデアのスタッフとしての執務やサーヴァントとしての戦闘訓練、ダヴィンチちゃんを筆頭とした整備士組との装備の調整についての打ち合わせなど、仕事について枚挙に暇がない。
こんな与太話に付き合わせてはいけないのだ。
「いや、マスターもやるべきこと山ほどあったのでは?」
うるさい。
「老婆心で注意しとくけど、そういうのの納期はずらせばずらすほど後戻り出来なくなるぞー?具体的に言うと言い訳をしようとしても『あ、そう。いいよもう。』とか期待してないですよオーラをめっちゃ出されるの。ぐっ様にされてたら死んでたねあれは。」
確かに自分もその態度をダヴィンチちゃんや新所長にされては死んでしまう気がする、と賛同した。締め切りは守ろう。
「まぁでもその点からで言えば新所長さんはいい人だよね。なんだかんだ言っても絶対にそういうのを叱ってくれるし、繰り返されて呆れても愛想は尽かすことはしないだろうしさ。」
新所長は私達のお母さんなのだからそれは当たり前では?貴女は訝しんだ。
「うわ、とうとう男性にまで母性を求めるわけ?その次は何の種族に属性求めんの?幼女にバブ味とか?」
無生物とか機械のメイドさんっていいよね。
「ない。」
「というかさぁ。」
なんでせうか。
「私もヤンデレだとか思わないわけ?」
それはないだろう。徐福ちゃんには虞美人先輩というNo.1かつオンリー・ワンがいるでしょうに。
「鍵閉めてたの気付いた?」
えっ。
「あとさっきから飲んでるそれ、媚薬入りね。」
えっ?
「あとここ、私の部屋だから部屋の外への対策はバッチリなんだよね。」
あっ。
「『本来の私』にとってはぐっ様はNo.1だしオンリー・ワンだし、ここにいる『サーヴァントとしての私』にとってもNo.1だけど、サーヴァントとしての私の許容範囲はちょっと広いんだよね。」
ちょっとまっ
「はい、じゃあ先ず脱ぐところから始めよっか。」
「……よし眠った、ただでさえカルデア内だと色んな魔術とかの庇護でこっちの仙術は通用しねーし、隙間を通れたとして精神力イカれてるから中々人前で不用意に休もうとしないからなぁコイツめ。……ま、動揺してる最中なら付け入る隙はあるんだけど。」
嘘をついた。
ホントはNo.1かつオンリー・ワンなのは虞美人様だけである。今の私、サーヴァントとしての私にとっても。
彼女は、マスターは、別に本命でもないし命を進んで差し出すかと言ったらNOである。
でも。
それはそれとして、友人ではある。
この手で必ずと決めたあの方以外に始めて、私の心の奥底まで近付いて来ている、友人。
非力なくせに、そのちっさい背中で、無駄に大きい荷物背負って。精一杯歩く、友人。
「ゆっくり休むんだぞ。おネムは長生きのコツなんだから。」
不老不死には出来なくても、せめて。
一年、一ヶ月、一日、一分、一秒。
長生きしてほしいものなのだ。
「……さーて、私も眠ろ……」
「……今日はコイツを抱き枕にするか……」