清姫って実はヤンデレじゃないんじゃないか、とマスターは思った 作:眠りたい時だけ手が進む人
……後々公式からお出しされる解答とは異なっているでしょうが、それでも書きたくなったしまったので……
もう、居ない。
復讐の焔も、哀しみも。それらは全て置いてきた。決戦の地、カルデアへと向かう為に。それが在ることは許されない。その為の清算の旅、その為の呼び声。果たすべき責務だったから。
………でも、それでも。喪ったモノを数えてしまう。喪ったモノを思い出して、苦しくなる。胸の内の情熱は、焔は消えた筈なのに。其処にあった温かな残滓が、胸を焦がすように。
───後ろを振り向きたくなる気持ちを、抑えきれない。
人は忘れる生き物だ。だからこれも、何時かは忘れることが出来るのだろう。でも、それは"今"ではない。
彼等/彼女等を置いていった自分に、置いていくしかなかった私に、そんな権利はないだろうに。ただ楽になりたいだけでしかない。
私は、私は────
「ますたぁ。」
私は………
「……ますたぁ、お止めくださいまし。」
……
「……もう、イヤですわ?貴女の正妻が、貴女の清姫がこうして傍でお身体を温めてあげているというのに……人のことばかり。もしや、浮気ですか?浮気ですね、えぇ。」
……浮気、ではなっ
「浮気です。」
……浮気じゃなっ
「ますたぁ?」
はい。
「……ふふっ、それでいいのです。ささ、お腹が空いているでしょう?私、料理は余り得意ではないのですが……あの、新たな装いを身に纏った時から甘露、すいいつなら少し上手に作れるようになったのですよ!ほらコチラ、ぱふぇ、でしたか?お召し上がりくださいませ♡この緑色のそおだ、とやらを私だと思ってずずっと♡はい♡」
ごめん清姫、ちょっと空きっ腹にスイーツは
「──私の作った料理はお気に召さない、と?」
んなわけないでしょ清姫の作ったモノなら例え暗黒物質だろうと呑み込んで見せるし美味しいって笑顔でサムズアップまでしてあげるよほらそれ貸して今から一気飲みしてあげるからさそこで見ててよこんなもんところてんみたいに吸い尽くしてあげるからあっでもちゃんと味は堪能していくからね具体的には原稿用紙200枚以上に書き記して提出するようにするから期限は大体1日あれば済むよ私ってほら同人誌で文を書くこともあったからそれぐらいなら徹夜で済むしなんなら清姫にアシスタントをしてもらって
「わ、分かりましたからますたぁ!!怖いです色々と!目ですかね!?目が黒く!ぁあいけません!!私が余計な心配をしてしまったせいで!!……ぁあ、でもますたぁからの愛が感じられてこれはこれで……♡♡」
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落ち着いた。あとパフェは美味しかったよ、ありがとう。
「此方こそ、見事な完食っぷりに妻として感嘆を覚えざるを得ませんでした♡私のこともあれぐらい勢いよく食べてしまって、いいんですよ、ますたぁ?♡」
それはまた後で……
「…え、ほんとにしてくれるのですか?」
マスター、ウソツカナイ。
「……も、もうますたぁったら!…身体、洗って待っていますよ……♡」
………ありがとうね、清姫。
「……夫が苦しんでいる時は、どんなときであれ支えるのが妻の役割ですもの。感謝など要らないのです、安珍様。」
だとしても、私は本当に感謝してるよ。
「でしたら、言葉ではなく態度で示してくださいまし。」
態度?
「もう、抱え込むのは止めてください。安珍様。」
………
「つい先日から、皆気付いておりますよ。表面上は何があっても取繕うことが出来る……出来てしまう安珍様が、何かを誤魔化すようにシミュレーターに姿。決して勤勉になった、という変化ではないことぐらい、お見通しです。……何かをしていなければ、それを直視してしまうから。だから、でしょう?……見ていられませんでした。皆、そうです。皆がそう思って……心配しているのですよ。」
……
「本来ならば、踏み込むべきではないのでしょう。そういったことは、過去を生きる私達ではなく……現在を生きる方々のみで、解決すべきなのでしょう。ですが私は、妻なので。夫が苦しんでいるのならば、理由など関係無く進むのです。それが、妻の役目ですから。」
「ますたぁ。私の安珍様。私の旦那様。」
「焔が恋しいのでしたら、私の元へ。貴女の求める焔になれなくとも。貴女の暗闇を照らす、焔になら成ることが出来ます。成って、みせます。」
「消えてしまった焔が、もう元に戻ることはなくとも。その火を継ぐことは出来ます。焔とは風に吹かれて移ろぐモノですから。」
「ますたぁ、私の愛しいますたぁ。」
「泣いていいのです。辛いなら、苦しいなら、泣いていいのです。ですが、忘れないでほしいのです。独りではない、と。」
「……私は、貴女の隣に居続けますから。」