「「乾杯」」
ガラスが触れ合い、小さく音がなる。今日はクリスマス。一年に一度、年が明ける直前の日に行われる、イエス・キリストなる存在の誕生日・・・であるが、この世界では、親しい間柄の人間と互いの幸せを祈り合いながら、各家庭で食事会をする日ということになっている。ある意味当然ではあるが、世界が違うのでイエス・キリストさんは居ないのだ。
閑話休題
今僕の前には、トロポンにまとめてもらった髪型でおしゃれをしているアモールの姿がある。黒をベースにした服に、ところどころに見える白が落ち着きをもたせながらも可愛らしさを引き立たせている。互いに手に持ったシャンパングラスを傾けながら、どんなことを話そうかと思案する。
「・・・でも、良かったの?他の騎士様たちのお誘いを断って、私と二人きりなんて・・・?」
どこか不安そうに聞いてくるアモールに、思わず苦笑がこぼれる。言うまでもないが、僕はアモールと過ごしたいがために断ったのだ。
「気にしないでいいよ。僕は、今日という日を君と過ごしたかったから声をかけたんだ。他のみんなには申し訳ないけど、補填は後日する予定だしね」
そう言いながら、正面に置かれている料理に手を付ける。ディアン達の手で作られた料理は、食欲をそそる香りを出しながら存在を主張していた。ここ最近の、年末特有の忙しさに疲れていた体が、早く食べさせろと主張するように鳴り出す。アモールには聴こえてなかったようで、内心安心しながら、メインの鶏を口に含む。表面の皮がパリッと音を立て、優しい塩気が口の中に広がる。
「そうだ。食事が終わったら、君に渡したいものがあるんだ」
それを聞いたアモールは、驚いたように目を見開くが、すぐに薄っすらと笑みを浮かべ、頷いてくれる。それに加えるように、アモールも口を開く。
「私も、貴方に渡したいものがあるの。この日のために、頑張って準備したんだ・・・受け取って、くれるかな?」
下から見上げるようにそういう彼女の可愛らしさに萌えつつ、首肯する。アモールは顔を明るくすると、食べるのに専念し始めた。こころなしか、先程よりペースが速い。
それからしばらくして、デザートとして用意していたケーキまで食べたところで、二人して包を取り出す。互いに手作り感があふれる袋は、中身の存在をしっかりと隠していた。交換しあい、中身を確認すると、中身は手袋とマフラー。よく編み込まれたそれは、冬の寒さから体を守ってくれるだろう。取り出して柄を見ると、黒に近い蒼の中に、僕の持っている杖のような柄が編まれていることがわかった。同様に取り出していたアモールの方の柄は、紅をベースにして、茨の柄を散らしたデザインのものである。執務の空き時間で作ったものだが、それなりに納得の行く仕上がりの一品だ。
「ありがとうアモール。大切に使わせてもらうね」
「私も、ありがとう。領主様。大切に、大切に使うね」
今年もあと少しだ。来年も、互いにこんな幸せな時間が過ごせるように祈りながら、そう口にするのだった。