(完結)しょうもなおじさん、ダンジョンに行く   作:埴輪庭

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日常41(歳三他)

 ■

 

 まるでお通夜ね、とティアラは思う。

 マサ達旭真門下生は項垂れていた。薄々予想はしていたが、と言った所だろう。

 

 ──それにしても、やっぱり佐古のおじさんは色々ツテを持っているみたい。それも当然か。ダンジョンで見た彼の力はちょっとおかしかった。ダンジョンを破壊までしていた。あんなの、普通は出来る事じゃないのに

 

 歳三は乙級探索者だとティアラは聞いていたが、彼女自身はそれに対して懐疑的だ。

 

 ──乙級。DETV基準だとレベル61~80だけど…

 

 とてもじゃないが、ティアラの知る乙級らと歳三が同格であるようには思えなかった。そもそもだが秋葉原のダンジョンで歳三は防御態勢のまま刃物や銃撃を受けてはいなかっただろうか。それも生身で。

 

 ティアラは歳三の腕に当たった銃弾が火花を散らしながら弾き飛ばされていた事を思い出す。探索者だって刃物で斬りつけられれば傷つくし、銃で撃たれれば肉を穿たれるのだ。それはティアラも例外ではない。真正面から銃撃されれば銃口の向きや目線から避ける事は出来るが、直撃すれば傷を負う。

 

 DETVのダイバーなどはもっと酷い、とティアラは思う。きっと正面から銃撃されても躱す事など出来ないだろう。あるいはその辺の非力な小学生が包丁で腹部を刺してきたとしても、あっさり重要臓器を貫かれて死んでしまうかもしれない。ティアラならば文化包丁程度なら筋肉で留める自信があるが。

 

 歳三程の肉体強度があるならば、乙級に留まっているのは不自然ですらある。

 

 ──でもまぁ、戦闘力だけ異常に高くても、探索者として優れている…とは必ずしも言えないものだから、そういう理由で今の場所に留まっているってこと…なのかな?

 

 探索者の実力はピンキリで、各団体や組織は各々の基準で実力分けをしているが、それでも正確にはかる事が出来ているとは言えない。結局の所、探索者として優れている…という言葉の意味が広範に過ぎるからだ。

 

 探索者の本分はダンジョンの素材の回収にあり、"探索者の実力" とはつまるところ、その素材回収能力がどれだけあるかという事を意味する。

 

 モンスターとの戦闘はダンジョン素材を手に入れる為の手段の一つに過ぎず、極論だが素材さえ手に入るならば戦闘行為など全て避けてしまってもいいのだ。

 

 ゆえにごく少数だが、戦闘能力は低くても素材回収能力が高い者…例えば弱い力であっても広範囲まで念動力を及ぼせる者などが上級の探索者であったりする。

 

 ティアラが見た所、歳三は戦闘に特化していた。つまりそれは…

 

 ──戦闘以外がポンコツ…とか?

 

 ティアラの視線の先で、歳三は誤ってフォークを噛み千切ってしまった。食い千切った金属部分を口の中でころころと転がし、金属球を口から摘まみだす歳三。ついでに米粒が2、3粒ポロポロとこぼれる。

 

 そんな歳三に比呂が "時間はあるんだからゆっくり食べるといいですよ" などとやんわり注意している。

 

「す、すまねぇ…骨を、骨を食べてたらつい…」

 

 これでいて缶詰のホワイトアスパラ以外なら何でも食べてしまう歳三だ。Tボーンステーキの骨も美味しくかみ砕いて食べてしまう。フォークで大胆に肉を突き刺し、骨も肉も関係なくバリバリと食べる。その流れでフォークも齧ってしまったのだ。

 

「良いんですよ、歳三さん。カルシウムを取れば骨が強くなりますからね。僕も食べようかな、この前ダンジョンで落石があって、腕で頭をかばったらちょっと(ひび)が入っちゃった事があって」

 

 そんな事をいいながら比呂はムッ!とかウッ!とか言いながら骨をかみ砕いている。

 

「か、硬いぞ…凄く硬い」

 

 苦心してかみ砕き、飲み込んだ後、比呂は下顎を抑えながら愕然としてTボーンステーキを見つめた。

 

「そりゃあそうだろ…だって牛肉じゃねえもんよ。モンスターの肉だしなぁ。モンスター牛というか」

 

 ハマオが呆れた様に言う。ハマオが下っ端スタイルを取るのはティアラと歳三にだけである。

 

 ──もしかしたら協会探索者自体がポンコツって説もあるのかしら

 

 歳三と比呂を見ながらティアラはそんな事を思う。

 マサ達旭真の門下生は完全に忘れられており、何かフクザツそうな、何というか居心地が悪そうな様子で突っ立っていた。

 

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