(完結)しょうもなおじさん、ダンジョンに行く   作:埴輪庭

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新宿歌舞伎町Mダンジョン⑧

 ■

 

 ──のこった

 

 蹴り足で床が爆砕し、歳三は颶風を纏いながら突進した。頭からの突撃…相撲で言う所のぶちかましである。

 

「ぎょぺッ!?」

 

 衝突と同時に赤黒い肉がはじけ飛び、広いリビングの各所がスプラッタな有様となる。

 

『ホカニ ヤリカタ ナイノ… ?』

 

 部屋のあちらこちらでビチチィ!と生肉が蠢いていた。

 歳三は突進の姿勢のままリビングの中央で固まっていた。

 残心の構えである。

 

 しかし肉体の大部分を吹き飛ばされながらも、暴食ヤクザモンスターは斃れなかった。それどころか生肉の一片一片がまるで意識を持つかのように暴食ヤクザモンスターへと集まってきている。再生の兆しであった。

 

「火で炙っても動き続けるし、潰しても余り意味はない。本当にタフな奴なんだ。男らしいっちゃ男らしいがよ、俺にはちょっと相性が悪い…スモー・スタイルなら一発でいけるとかとおもったが、まだ理解が足りてなかったみたいだな」

 

 辟易した様に言う歳三だが、これは正しい。

 彼が映画から感得した事は相撲術の基本的な技巧のみで、ぶちかましや頭突き、上っ面の四股といった事しか学んでいない。

 自分なりに "納得" すれば大体何でもできる歳三ではあるが、数時間で相撲を理解するなどというのは余りに傲慢な事であった。ただし、気に入った事を延々と擦り続ける事には余念がない歳三であるので、地道な努力を続けていればいずれは立派な力士となれるだろう。

 

『まだ生きているのですね。あれほどの衝撃を受けて…。これが乙級指定のモンスターですか。今の我々では少々荷が重いかもしれません。マスターの体重は協会が保管している探索者の個人情報による所では74kgです。さきほどのマスターの突撃の速度は約秒速1029m…つまりマッハ3程度となります。この運動エネルギーはE = 1/2 * m * v^2で求められますが、この公式にマスターの体重と推定突進速度を代入すると、E = 1/2 * 74kg * (1029m/s)^2…つまり、39MJ(メガジュール)程の運動エネルギーだという事になります。これは約0.0093トンのTNT爆発に相当し、手りゅう弾18個分のエネルギーを有しているという事になります。更に分かりやすく言えば、1500㎏の普通車両が時速828㎞で衝突した時とほぼ同等のエネルギーという事です。これを受けてなお生存しているとは恐るべき生物だと言わざるを得ないでしょう』

 

『ゼンゼン ワカリヤスクナイ ケド ソウジ ハ マカセテナ 、ヴィヴィヴィヴィ…"SKR-001 鉄騎" ニ タイシテ 戦術提案…』

 

 鉄騎と鉄衛の間で不可視の信号が交錯し、鉄騎はその戦術提案を受け入れた。

 

『素晴らしい提案です。マスター、当機の後ろまでお下がり下さい』

 

 鉄騎の言葉に歳三はウンと頷き、いそいそと下がる。

 

『当機には火炎放射機構がありますが、それをこの場で使用する事は適切と言えません。しかし本探索に備えて、桜花征機は当機に対して場所を選ばずに標的を攻撃する事が出来る兵装の装備を提案し、当機はそれを受け入れました。それがこの "ウェーブエミッター" です』

 

 鉄騎は胸をドンと突き出し、両手で手を掛け、胸部を開いた。

 

「なにっ」

 

 歳三は思わず声をあげる。

 それはかの有名なファイア・ブレストの構えだったからだ。

 ファイア・ブレストは随分と昔に一時は国民的アニメとまで言える程に有名だったロボットアニメ、『ライジンガーZ』に出てくる必殺技で、ライジンガーZが胸部放熱板から熱線を照射するというものだ。

 

 そんなもの火炎放射よりやべえじゃねえかと焦る歳三だが、鉄騎の胸部から破壊的熱線が放射される事はなかった。

 代わりに照射されたのは超高周波のマイクロウェーブである。

 これは照射範囲内の物体を急速に加熱する恐るべき兵器だ。

 

 この殺人兵器に照射された生物は、水分子を激しく振動させ、内部から高熱を発生させる。そしてこの高熱は、瞬時に生物体の細胞を破壊するだろう。

 

 ちなみにこのウェーブエミッターは生体に対してクリティカルな威力を有するが、無機物に対しては生体程の激しい熱化は発生しない。これは水分子の含有量が大きく影響している。

 

『素早く動く相手には余り効果がないのですが、今回は問題ないでしょう』

 

「レンジみたいなものかい?」

 

 歳三は尋ねた。

 根がズボラ体質である歳三は、しばしば生肉をレンチンして食する事がある。彼は全く調理ができないというわけではないが、どうせ腹にはいれば同じだろうという冒涜的な考えを持っているのだ。むしろ、ズボラな調理方法でサクッと食べてしまうほうが男らしいとまで思っている節もある。

 

『厳密にいえば違いますが、説明が必要ですか?』

 

 鉄騎が問い返すと歳三は首を横に振った。

 これでいて根がチャレンジ体質に出来ている歳三は、自身の可能性を信じて人力でプラズマを発生させるに至ったが、鉄騎の説明を理解できるとはこれっぽっちも思わなかった。

 

 ──俺は文系だからな

 

 そんな事を思いつつ、美味しそうな肉片を見つめる歳三なのであった。

 

 




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