(完結)しょうもなおじさん、ダンジョンに行く   作:埴輪庭

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秋葉原電気街口エムタワーダンジョン⑧

 ■

 

『先程はド派手な技を見せてくれましたTHE・カラテ!恐らくは相当な高位探索者なのでしょう!ただ、探索者協会所属だとの事ですが、等級までは教えては貰えませんでした。しかしこのダンジョンは協会の分類ですと丁級ですが、それ程の高位探索者が訪れるとは思えません…なにか理由があるのでしょうか?このダンジョンはちょっとエチエチな為、それが理由だったりして?』

 

 THE・カラテに対してティアラからの弄りが入る。

 やはり先程の絵面は凄惨に過ぎたという事だ。

 引いてしまうリスナーもいるかもしれないと危惧したティアラが、ここでちょっと弄っておくことでTHE・カラテはそんなに危ない人じゃないですよ~とアピールしたという事だ。

 

 それに対してTHE・カラテは無言で背を向けた。

 気を悪くしたのかと内心焦るティアラだが、THE・カラテの低く渋い声がうっそりと響いた。

 

(おれ)がここに居る理由か。それは…闇を感じたからよ」

 

 ──や、闇!?

 

「ダンジョン…この異界の地に赴く者は何も探索者達だけじゃあない。ダンジョンから得られる力を求めて、不逞の輩が潜り込む事もある」

 

 どんどん大きくなっていく話に、ティアラの精神が汗を噴く。

 少し弄るかも、という話をしたものの、魔がいるだとかなんだとかは打ち合わせになかったのだ。

 

「恐らく…最上階に何かが…いるッ!淫祠邪教の徒か、或いは他国の鼠か。道無き道を征く、それが無道流。闇の果て先に何が待とうと、ただ進むのみ」

 

 歳三…いや、THE・カラテはそんな事をいって三階階段へ向けてずんずんと前へ進んでいった。

 

 その背をハマオ、ティアラ、鉄衛が見つめ、やがて三者三葉に顔を見合わせる。

 

『な、なんと!!THE・カラテはこのダンジョンに何か良くないものがいるといって先へ進んでいってしまいました!私も彼の後を追いたいと思いますッ!!DETVはまさに!今!何か、えっと…なにか…凄い事に直面しようとしているのかもしれません!』

 

 もはやどうにでもなれとばかりにパタパタと小走りでTHE・カラテの後を追っていくティアラ。カメラマンのハマオは鉄衛をちょっと顔を見合わせ、その後を追う。

 

 ちなみに歳三ことTHE・カラテは適当ぶっこいているだけである。謎めいたカラテヒーローというキャラ設定を忠実に守っているだけなのだ。謎めいたキャラクターが謎めいた事を言わなければならないというのはこれはもう至極尤もな話だし、ヒーローが邪悪と対峙しなければいけないというのも、これはもう至極尤もな事であるため。

 

 ■

 

 ところでダンジョンと言うのは、ティアラが言っていた様に他の探索者とのエンカウントがしづらい環境になっている。

 ダンジョン領域とはすなわち異界であり、その異界は入場者の数だけ生成される…という仮説もある。

 

 その仮説が本当かどうかはまだ分かっていないが、例えばとあるダンジョンに十分に間隔をあけた二組の探索者が入場した場合、先行したグループと後からきたグループが偶然遭遇する事はほぼないだろう。

 

 だが、勿論例外はいくつも存在する。

 

 例えば最初から先行グループの捜索目的だった場合

 例えば入場間隔が非常に短かった場合

 

 この辺りは周知されている事だ。

 

 例えば先行グループが "自己を固定化したモンスター" に捕らわれてしまっていた場合

 

 というのもあるが、これは一部の者しか知らない事実だ。

 勿論これだけではなく、細かい条件の様なものは他にもある。

 

 そんなダンジョンの性質は、その気になって悪用しようとおもえば色々と出来る。

 

 例えば殺人、違法な実験、違法な取引…モンスターを排除できる腕前があるならば、狭い日本国内でやるよりよほど発覚しづらいだろう。

 

 そして、仮にそんな事が行われるとすれば"人気がないダンジョン"だというのは言うまでもない。

 

 ■

 

「そういえばお二方は何でこのダンジョンに?俺がみたとこ、もっと難度が高いダンジョンでも行けるんじゃないかって思うんスけど…。いっちゃ悪いスけど、ここは旨くないっていうか…モンスターも気持ち悪いのばっかりじゃないっすか。それに稼げるってわけでもないし…」

 

 妙に下っ端めいた様子でハマオが鉄衛に尋ねた。

 

『ロボ ハナセマセン ロボ ハナセマセン』

 

 鉄衛は歳三の右腕が十全に動かない事を告げるわけにもいかず、かといってそれっぽい理由を考えるのも面倒くさいのですっとぼけた。

 

 

 

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