TS転生お嬢様「家から追い出されたくないのでお兄様と子作りするぜ!」 作:赤々
「お、お兄様!?」
思わぬ人物の登場に思わず叫んだ瞬間、目の前の女性たちの視線が一斉に俺に向きハッとして慌てて口を塞いだ。が、時すでに遅し。俺の声に気づいたらしい兄貴はキャップのつばを少し上げて俺を見ると驚いたように目を見開いた。そして周りの女性たちの『ねえ、あの子さっきあの人のことお兄様って言ったよね…?』『もしかして兄妹?』『確かによく見るとどことなく似ている気が……』という声が囁かれ、俺は顔を引き攣らせる。
(や、やばい……これは確実にばれた!いやでももしかしたら100分の一の確率で俺が彩華だと完全にお兄様にバレたわけじゃ……)
「彩華!そんなところでなにをやっているんだ!?」
(ひっ!バレてる!)
しかし、俺の淡い希望は兄貴の怒気を孕んだ声により打ち砕かれた。そして普段の優しい兄貴から想像出来ない厳しい声音に俺は思わず身を竦ませるが、そんなのお構い無しに人混みを掻き分けて俺に近付いてきた兄貴は俺の腕を強く掴んだ。
「いっ……!」
「やっぱり彩華だ……!ダメじゃないか!お付きも付けずに一人でこんなところを彷徨いていたりしたら!」
「いや、これには理由が……」
「言い訳は聞かないよ。いいかい?彩華は嫁入り前の大事な時期なんだよ?何かあったらどうするつもりなんだ!ほら、早く帰るよ!」
「ちょっ、ちょっとお兄様!」
兄貴はそう言うと有無を言わさず嫌がる俺の腕を無理やり引っ張り、そのまま歩き始める。
「お、お兄様痛いです!手を離して下さい!」
「……」
「ねえ、お兄様ってば!」
「……」
俺は何度も兄貴に呼びかけるのが兄貴は何も答えずにずんずん進んでいく。そんな兄貴の態度に最初は戸惑っていたがだんだんその内に『クソッ…自分だって一人でこんなところにいる癖に…!』と無性に苛立ってきた俺は兄貴の手の力が緩んだ隙を見て兄貴の手を思いっきり振り払った。
「っ!?彩華!何を――……」
「う、五月蝿いですわお兄様!お兄様だってワタクシにあーだこーだ言う割には仕事を抜け出してこんなところで遊んでいるじゃないですか!それなのにワタクシには帰れだのなんだの……酷いですわ!」
「え?いや、待ってくれ。彩華、勘違いするのも無理はないけどこれは仕事で……」
「馬鹿にしないでください!どこに駄菓子を買ってくる仕事がありますの!?お兄様だけズルい!ワタクシだって一人で自由にお買い物したいのに……!お兄様の嘘つき!意地悪!冷血漢!」
「あ、彩華……」
兄貴にここまで強く反発したのは初めてで、兄貴は目を丸くして俺を見つめる。が、やがて諦めたようにハアと深く溜め息を付いた。